商人を救うというクエスト
馬車の中を見ると、ひとりの中年男性がうずくまっておびえていた。護衛はいないのだろうか。
こういうののテンプレだと普通は護衛が居る者だが……。まぁそれは置いておいてまずは狼だ。馬車を取り囲んでいるのは全部で5匹。少なくても今の俺よりも格上が5体居るわけだ。
少し厳しい闘いになるかもしれない。NPCの中年男性を守りながら戦う必要もあるわけだ。俺はすぐに一番近くに居た狼に攻撃を仕掛ける。周りにしっかり気を配りながら攻撃するのは少々骨が折れる。
「連続スラッシュ!」
二連続で直撃した狼の一体が消滅する。残り4匹。依然厳しい状況は変わらない。すると、2匹の狼が同時に攻撃を仕掛けてくる。前足でのひっかき攻撃。初心者用の武器であるため、武器で受けると耐久値が持っていかれる可能性がある。ここは躱すしかないな。
AGIを活かしたバックステップで躱すと、俺はスラッシュの発動の用意をする。
「スラッシュ!」
すぐさま前足を振るった後の2体にスラッシュを直撃させる。一度で2体に当てる事が出来たのは行幸だった。大体2体の体力を8割ほど削れたのではないだろうか。
このまましっかり立ち回れば問題ない。狼を全滅させることは可能だ。幸いにも狼全体のヘイトがすぐに俺に移り変わったからな。馬車の主と思われるNPCを守る事も可能だろう。
コメントを読んでいる暇はまぁ、なさそうだ。集中しろ、俺。一回でも攻撃をもらえばやられる可能性があるんだからな。
次の瞬間、傷を負っていない2体の狼が俺の両隣を位置取る。挟み撃ちか。うまく攻撃を避けないとやられるぞ。
2匹の狼が同時に俺に飛んでくる。タイミングは全く同時だ。しかしそれは悪手だぞ、お前たち。左右から飛んでくる狼たちに対して俺は自身の後方へ大きく跳躍する。そして、俺が元居た場所には2匹の狼が交差している。
「連続スラッシュ!」
その連続する剣筋は見事に2体の狼を同時にとらえる。これで残りは体力は欠けた2匹のみとなった。
「グルルル」
2匹は俺の事を警戒してか、威嚇の体勢から動かない。ここは俺から仕掛けなきゃ始まらないな。
俺は片方の狼に近付いて攻撃するように見せかける。攻撃されると思ったのかその狼は飛び退き、もう一方の狼が俺にとびかかってくる。
それを待っていたんだよな。カウンターのような仕留め方になるが、飛んできた狼の頭に剣を振り当てる。スキルは発動していない普通の攻撃だ。ダメージ補正等は乗っていない。しかし、かけた体力に、俺のSTRをもってすれば……。
「残り一匹」
後方に逃げ込んだ狼のすぐそばまで近寄る。速度においては俺と変わらないくらいはあるが、その速度を生かせなきゃ、意味ないよな。俺の後ろに回り込んで攻撃しようとした狼は会えなくカウンターのようにおいておいた一撃によって消滅した。
「終わったな」
コメント
『すげぇぇぇぇぇぇぇ!』
『やっば。立ち回り完璧すぎだろ』
ありがたい事に、コメント欄は賞賛の声であふれていた。ちなみにだが、同時接続数が200人を超えた上に、チャンネルの登録者数が1000人を超えた。まだ1日めでこれか。大変ありがたいな。
「ありがとう皆。とりあえずこのサブストーリー、進めてみる。っと待てよ? これは?」
次の瞬間、俺の前にシステムウィンドウが展開され、報酬受け取りの画面を開く。そこには、スキルを取得しましたと書かれていた。
『スキル<無敵の英雄>を取得しました。習得条件:一切ダメージを受けずに連続で魔物を100体以上討伐する』
なにやらすごいスキルが手に入ったようだ。能力について少し確認してみよう。
『効果:HPが100%の時、全ステータスが50%向上する』
なんだこれ。ちょっと強すぎやしないか?
いや、でも達成条件が俺以外のプレイだとかなり難しいな。妥当、なバランスなのか?
まぁいい。次の戦闘まで一旦これは置いておこう。
気を取り直して馬車の元に向かう。すると、うずくまっていた馬車の主らしきNPCが急に顔を上げて、こういった。
「お、狼たちが……。あなたが助けてくださったのですか?」
「狼たちなら、俺が全部片付けましたよ」
そういうと、NPCが反応する。サブストーリーのNPCだから多分固定台詞だな。
「おお! あなたのおかげで助かりました! 私はこの先にある街、ゲイツの街で商人をしているクロックスと申します。実は護衛が逃げ出してしまいまして、本当に危ないところだったのです。街に戻ってお礼がしたいので、ついてきていただけますでしょうか」
なるほど、護衛が逃げ出したと。それでか。
「わかりました」
◆◆◆
その後、動き始めた馬車を護衛するクエストが進行し始めたことがシステムウィンドウによって通知され、何度か狼の襲撃を受けたが、新しく手に入れたスキルのおかげか、無傷で討伐を終え、そのまま新しい街、ゲイツに入った。
「ここが私が拠点を持つ街、ゲイツです。私の店に案内しますので、こちらへ」
このクロックスさんは異次元収納系のアイテムを持っている設定のNPCなのか、馬車をどこか異次元にしまいこみ、街の中からは徒歩で店まで向かうことになった。
街の見た目は前の街と変わらないが、どうやらこの街には中央の広場に銅像があるようだ。マップによって判明した。
クロックスさんに案内されてついた店はこの街一番なんじゃないかというほどの大きさであった。
……重要なクエストだったっぽいなこれ?
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3月9日現在から、平日の投稿日を火、木とさせていただきます。ご迷惑をおかけしますが、ご容赦くださいませ。




