レベル上げというクエスト
ジャンル別日間6位! ありがとうございます!
噴水の公園の前にワープする。一瞬で視界が切り替わる経験はβテストの時から何度もしているが、いまだに慣れない。多分慣れることもないな。
「さて、いまから冒険者ギルドに行くわけだけど……。さすがに人も増えてきたな」
MMORPG初日の最初の街の中ということで圧倒的に人が多い。都心には及ばないけど人口密度がやべぇ。この分だと、冒険者ギルドは並ぶかもな。
「悪い、ギルドへの報告遅くなるかも」
この分だと遅くなるだろうなぁ。時間がかかると暇になるからせっかく来てくれている視聴者に申し訳ない。
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『多分大丈夫だぞ。運営から出されている情報見る限り冒険者ギルドの中は一定以上人が入るとサーバー分けされるらしい』
「マジで……? シャープ・ソル社さん最高だわ」
D2の販売元の会社はシャープ・ソル株式会社。過去にも名作といわれたゲームを幾つも作成している会社だ。さすが大御所。用意の周到さが違う。
「じゃあ多分早めに何とかなるだろうから、とりあえず納品しにいくぞ」
ごった返す人込みを避けながら、俺は冒険者ギルドに向かう。あれだけ広場には人がいたが、大勢がウィンドウに夢中になっていたためか、それとも冒険者ギルドのサーバー分けが幸をそうしてか、冒険者ギルドの前には案外人が少なかった。
そういうわけで扉を押し開けて中に入る。中の受付にはあの金髪のかわいらしいNPCの受付嬢さんがいた。
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『あの人目当てでやろうかなこのゲーム』
「まぁかわいいもんなぁ」
現実のアイドル顔負けである。すごく近くまで行けるわけだしな。ということでインベントリから紙、ゴブリンの討伐証明を出して、受付に向かう。ちなみにこの討伐証明、チュートリアルの敵しかドロップしないため、ここで見るのが最後となる。
袋のアイテムなのだが、ゴブリンの討伐の場合は中身は確かゴブリンの耳だったはず。あまり見たいものではないからもちろん開けずにそのまま提出する。
「すいません、クエスト完了の報告をしたいのですが」
「承りました。クエストの紙と証明できるアイテムはお持ちですか?」
受付嬢さんにクエストの紙と袋を出す。これで完了かな?
「確かにいただきましたこれでクエストは完了です! 報酬をどうぞ」
ウィンドウに報酬が表示される。1000G。Gはまぁありていに言えばゴールドで通貨の単位だな。チュートリアルクエストらしく、正直言ってはした金なので、これからのレベル上げでしっかり金も稼がなければならない。
装備とかをプレイヤーメイドのオリジナルとかにしようと金が全然足りないからな。
「ありがとうございました」
「それでは良い冒険者ライフを!」
受付嬢さんに礼をして冒険者ギルドから出る。
「よし、皆。お待ちかねのレベル上げタイムとしゃれこもうか!」
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『そこは戦闘仕様に慣れようとかじゃないのかよ』
「正直最強になるならそんな悠長な事を言ってられないからなぁというわけで行くぞ!」
システムウィンドウのマップから、レベル上げにちょうどよさそうな場所を見ていく。主に推奨レベルが3~5辺りがちょうどいい。格上だとレベルが上がりやすい仕様があるからな。
「ここだな。ムシューの湿原」
この街の南に位置するその湿原には、レベル3~5程度の魔物が出現するようだ。ちょうどいいからそこへ向かおう。多くの人がセジュンの草原に行くだろうから、人の具合的にも効率がいい。
「よし、南の門から街の外に出るぞ!」
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『まじかよ対格上かぁ』
『頑張れ』
そういうわけで、コメントと雑談をしながら歩き、南口に到着する。
「しっかりとワープポイントに設定して、いざ行かん!」
そのまま南口を通り湿原に出る。北口から出た場所とはかなり環境が違っていて面白い。ところどころある水のたまり場で大き目な鹿のような魔物が水を飲んでいる姿が見える。
さて、魔物とエンカウントするまで少し歩こうか。昔一度だけ、釧路の湿原に行ったことがあるが、そこと少し似ているな。ここから別の街へ行くために整備されたであろう道もあるし、今回はその近くで狩りを行う。
「しかしさすがD2。いい景色だな」
観光目当てでこのゲームを始めるとSNSで言っている人もいたくらいだ。最初の街でこれだ。きっとこの先にはもっと美しい景色が待っているだろう。
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『CMに出てた幻想的な街にいつかたどりつきたい』
俺はCMは見ていないのだが、CMでできた街があまりにも幻想的すぎると話題になっていた。
「俺もいつか行けたら行ってみるよ。ついに湿原の魔物とエンカウントだ」
目の前の道にどでかいカエルの魔物が陣取っている。
「正直あまり人気のでなさそうな魔物だな。とりあえずやるとするか」
カエルもこちらに気が付いたようだ。
「ゲコッ!」
舌を鞭のようにして攻撃してくる。気色悪い攻撃方法だ。でもAGIが高い俺なら。
「当たらない」
舌で攻撃した硬直に剣術スキルのスラッシュを使用して攻撃する。
「ゲコォ!?」
STRが高いので大きなダメージになったはずだが、一撃で倒す事は出来ない。さすがにレベル差があるからな。
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『あんまりここの狩場は人気でなさそうだな』
一瞬目にしたコメントにそんな風に書き込まれていた。まぁそれはこんなカエルが居たら好みが別れるだろうしな。
「はいもう一回!」
口を開けて舌を伸ばす用意をしていたカエルにもう一度スラッシュを叩きこむ。
「ゲコォ……」
カエルはそのままポリゴンとなって消滅する。よし、狩りを継続できそうだな。
「好みが別れる戦場だろうけど、俺は別に気にしないからこのまま狩りを続けようと思うが、皆はこういうの大丈夫か?」
三桁に乗った同時接続数を見てさすがに配慮しないとなと思った俺は、視聴者にそう聞いた。
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『あまり好きではないけど問題ない』
『ちゃんと聞くの偉いな』
「まぁそれが配信者の心得だろうしな。じゃあここからはレベル上げ作業、やっていくぞ!」
それから何度もカエルの魔物、鹿の魔物、でかいスライムを倒し、1時間と少し経過するころにはレベルが5になっていた。
◆◆◆
ファクター
剣士:Lv.5
ステータス
HP 70/70
MP 35/35
STR 30 [+] <+10>
DEF 15 [+] <+10>
AGI 30 [+]
INT 10 [+]
VIT 15 [+]
DEX 10 [+]
ステータスポイント:20
スキル
<剣術Lv.2>
◆◆◆
レベルが1上がった時に上がるステータスポイントは5。20ポイントも稼ぐことができた。ついでに剣術スキルのレベルも上がった。覚えたのは【連続スラッシュ】。倍率はあとで確認するが、変わっていなければSTR125%×2だった気がする。
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『SNS見たとこ、レベル7に到達しているプレイヤーが居るらしいな』
「マジかよ、もっと頑張らないとな。昼はこれで一旦配信を終わる。夜も配信するから、是非見に来てくれよな!」
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『ちょうどいいタイミング』
『夜も見に来るわ』
配信はあまり長く続けてもダメだろうしな。とりあえず夜までにレベル上げをして夜の配信で皆を驚かせてやろう。さぁ、配信裏作業、頑張るぞ。