幕間
暗闇の中で、遠くから人々の叫び声が聞こえる。
「魔女を殺せ!」
「滅びの魔女を殺さねば我らに未来はない!」
「あれが居るから魔王は一族を滅ぼそうとするのだ!」
「生きながらに腐りゆくこの世の地獄に生きるため神は我々を生み出したとでも言うのか!」
狂気に昂る民衆を、ひときわ大きな声が制する。
「馬鹿なことを言うな!あの子を欠けば王は、我ら悲願の覇王は生まれない!」
「我らは永劫にこの緑の監獄から抜け出すことが叶わなくなるのだぞ!」
男の威圧に押されて一瞬の静けさが戻り、……しかし。
「だ、だが、飢えに疫病、苦役に略奪、一族はもはや半分が失われたのだぞ!」
「そうだ!我等はいつまでこうやってこの生き地獄を味わねばならないのか!」
「本当に予言はなるのか!?」
「――やめろ!!」
ばん!と扉が開かれて、暗闇に光がさし込んだ。
光に相対する少年。その金の髪を、太陽がまぶしく輝かせる。
小さな体にそれと判るほど怒気を孕み、外にいる人間に怒鳴る声が聞こえた。
「彼女が一体何をした!?ただ強い力を持っているだけで、無能な魔王お抱えの占い師が好き勝手に破滅の魔女などとあたりもしない予言をしただけだ!恨むべきは僕らをここに送り込んだ魔王だ!それを間違える者は皆一族の滅びを望む帝国臣民と同類だ!」
逆光に浮かび上がる華奢なシルエット。その向こうに広がるむせ返るほどの緑の輝き。
――あんな植物の密集地帯、うちの近所にあったかしら?とジョゼは疑問を持った。