第6話 鷹司 太郎
そろそろ薔薇の季節だな。
得意先から依頼を受けたとき、ふとそんな思いが鷹司の頭をよぎる。
そういえば、日本では今、薔薇が真っ盛りだろう。レディヴィアンは大丈夫かな? まあ大丈夫に決まってるよな。なんせ世話してるのがあの……、
そこまで考えたとき、依頼主が玄関から顔を出して彼を呼んだ。
「これなんかどうだ?」
「OH! みずみずしい赤だね。うう~ん、けれどわたしが求めているのは、どちらかというと美しい白バラなんだ。気を悪くしないでおくれよ、タロー」
「気にしてないよ。色は聞いていなかったからな。OK、だったらこれはどうだ?」
「ああ、これは素晴らしい」
依頼主は鷹司が次に持ってきた白バラに、いたく感動している。
これを出してくる前に見せたのがレディヴィアンだ。依頼主は薔薇をご所望だったのだが、種類や色の希望も聞かずに無意識に出してしまっていた。
普段ならこんな事はないのにな、日本の事を考えていたからかな。と、ちょっと苦笑いした鷹司は、頭の中をリセットすると、この白バラが映える配置を考えるべく、庭を見渡していくのだった。
鷹司 太郎。
見た目はどう見ても西洋人、けれど生まれも育ちも日本人のこの男は、ひょんなことから『はるぶすと』の面々と関わりを持っている。
その日の仕事が終わると、久しぶりにシギから連絡が入る。
「もう仕事は終わったかい?」
「ああ、たった今な。それにしてもシギ、本当にたった今だぞ。お前どこかで見てるんじゃないか?」
「まさか」
可笑しそうに言うシギは、今日の夕飯に鷹司を誘いたかったらしい。
「美味しい食事を出す店を見つけたんだ。一緒にどう?」
「いいぜ」
シギはこうやって、たまに鷹司を誘ってくる。でないと、このジャパニーズはいっこうに連絡を取ってこないからだ。
「本当に、太郎はこっちから誘わないと、百年も放っておかれそうだからね」
「あーまったくだなーすまん」
反省した様子もなく棒読みで言う鷹司に、あきれつつも思わず笑ってしまうシギだった。
上手く空いていたテーブル席に陣取った2人は、美味いビールと料理にしばし舌鼓を打つ。
「そう言えば、シュウから連絡があってね」
「シュウ? ああ、鞍馬か」
「なんだかね、ホームページの写真をたくさん撮ってもらったから、更新してくれないかなって」
「へえ、更新もしてなかったのか、あいつんとこのホームページ。てか、そんなもんがあるのも知らなかったぜ」
出て来たポテトフライをつまんで「お、美味い」と嬉しそうな鷹司に、シギも手を伸ばす。
「どれどれ、……お、やっぱりここ、美味しかったね。……モグ、……うん、あまり目立ちたくないからって検索にも引っかからないようにしてあるしね」
「検索に引っかからないって、じゃあ何のためのホームページなんだよ。どうせ冬里のヤツだろう? そんなこと言い出したのは」
可笑しそうに言ってビールをあおる鷹司に、こちらも可笑しそうに答えるシギ。
「だと思うよねえ。けど、これが違うんだなあ」
「ん?」
「まあ、冬里も面白がって賛成したけど、最初に言い出したのは、なんと、シュウだったんだ」
「ほお?」
「もともとホームページを作ることにも難色を示してたんだよ。あんまり目立つことが好きじゃないからね、シュウは。けど、もう1人のオーナーがね」
「もう1人?」
「由利香だよ。彼女がどうしてもって」
「ああ、あのお嬢ちゃんか。ふうん」
鷹司はホームページにはあまり興味がなさそうだったが、シギはそんなことにはお構いなく、タブレットを取り出して操作を始める。
「これだよ」
ページを出して、鷹司の前に置く。
「どれどれ」
しばらく眺めていた鷹司が、「あ」と、何かに気が付いたようだ。
「これ、写真を更新したって言ってたな」
「ああそうだよ」
「思い出した。どこかに載せる写真を撮ってくれって鞍馬に頼まれたんだ。で、けっこういっぱい撮ったんだぜ」
「ああ、それでか」
すると、シギが妙に納得したように言う。
「なんだ?」
「庭の写真ばっかりだったから、選ぶのにけっこう苦労したんだよ。そうか、太郎が撮ったからだったんだね」
「そりゃ悪かったな」
「でも、いい写真ばかりだったよ」
「あたりまえだ」
ふふん、と、また偉そうに笑う鷹司に、シギも思わず笑ってしまう。
そのあとも更新されたページを眺めていた鷹司が、〔庭の花たち〕と言うタイトルに目をとめた。クリックして飛んでみると、鷹司とはまた違った視点から撮られた美しい花々の写真が掲載されている。
どいつもよく手入れされてるなと感心して見ていた鷹司の目に、ふいに赤い色が飛び込んでくる。
それは、どの赤よりもみずみずしく初々しい。
「レディヴィアン……」
思わずつぶやく鷹司に、「?」と首を傾げてシギが彼を見ている。
「さすがは鞍馬、あの薔薇のことをよくわかってやがる。けど、こいつのことは写真じゃなくて、自分の目で確かめてみたいもんだ」
「なに?」
鷹司の言葉を聞いて不思議そうにするシギ。
鷹司はふと思いついた。
そうだ、『はるぶすと』へ行こう。
「太郎ならいつでも大歓迎だよ」
「で? いつ来るんすか? 鷹司さん」
テレビ電話の向こうでニッコリ微笑む冬里と、その後ろに相変わらず元気ハツラツの夏樹がいる。
「まあそう慌てなさんな。俺にだって仕事があるんだから」
「そうっすよね」
返事を返すと、途端にしょんぼり肩を落とす夏樹。そんな夏樹にはお構いなしの冬里が聞いてくる。
「そろそろロングバケーションの季節じゃないの? そっちは」
「うん、まあそうなんだが」
すると、画面の向こうで冬里が人差し指をクルクルと回し始める。あ、何か考えてやがるなこいつ、と、思った途端に冬里が言う。
「だったらさ、9月の初めに来なよ」
「9月? なんでだ?」
「あ! わかりました! 13代目が来るんすよね」
「そ」
「13代目?」
よくよく聞いてみると、9月の初めに、冬里が12代目を務めていた〈料亭紫水〉から若いのが研修に来るそうだ。13代目とやらもその時に一緒に来るらしい。
そこに至るまでのいきさつを、身振り手振りをまじえながら話ししてくれた夏樹のおかげで、大体のことは把握できた。
「太郎、日本料理には詳しそうだからね」
「詳しいって言ってもなあ。だがまあそう言うことなら、バケーションを少しずらして9月に取ることにするわ。庭の様子も見たいしな」
「太郎には、そっちが本命だろうけどね」
「ま、そういうことだ」
9月だと、残念ながらもうレディヴィアンの季節は終わっている。だが、他の花々のことや庭の造形についてアドバイスは出来るだろう。
久しぶりの帰国だ、他にもいくつか行きたいところを頭の中でピックアップする。
どうやら今年は、楽しいバケーションになりそうだ。
料亭『はるぶすと』? いつからここは料亭になったんだか。
だが、さすがは冬里が当主を務めただけのことはある。どの料理も日本の伝統を重んじつつ、新しい技法も取り入れつつ、ぶっちゃけ言えば、どれもとてつもなく美味い! と言う感想だった。
その昼食を終えた後、鷹司はいったん★市を後にする。
金沢の〈兼六園〉に行くためだ。
日本三名園はいつか訪れたいと思っていたのだが、今回の帰国で、まずは一つ目に選んだ兼六園へ行くことにした。造園を生業とする者として、洋の東西を問わず良いものを見ることはそれだけで勉強になる。
バケーション用の大荷物は『はるぶすと』に預けて、一泊ほどの身軽な荷物で行って来られるのも大きな魅力のひとつだ。
夏樹などは、
「兼六園? ううー良いっすねえ、俺も行きたかったです」
と、心底羨ましそうにしていたが、そのあと冬里に、
「今度レトロの日に行けば?」
と提案されて大はしゃぎする一幕もあった。
兼六園は金沢城と隣り合わせ、というかほとんど同じ敷地と言っても良いような場所にある。近くには有名な金沢21世紀美術館などもあり、観光客にとっては1日退屈せずにいられる場所だ。
日本の庭園は、西洋と違って、なんというか流れているような感じがする。
西洋人はその根底に征服するというどうにも逃れられないDNAがあるようだが、日本人は違う。自然とともに生きる、あたりまえに生活に自然を取り入れている。
なので、ビシッとシンメトリーだったり、刈り込んで型にはめ込んだりはせず、自然そのままという感じがする。だが、そこには緻密に計算された人の手が入っているのだ。人が造ったのに、自然に見える。そのあたりがなんとも言えず美しいのだ。
兼六園を堪能して、隣の金沢城は建物を堪能して、美術館の、? と思うような展示も堪能して、鷹司は大満足で★市に帰ってきた。
お土産は、金箔入りの日本酒等々。あのお嬢ちゃんには金箔入りのコスメを渡して、えらく恐縮されたりした。
そのあとはしばらく『はるぶすと』での滞在だ。
鷹司が朝の手入れに庭へ降りていくと、いつものようにすでにシュウがいる。
これもいつものように「よう」、と手を上げて玄関の階段上にたたずんで庭を見回すのが朝の恒例行事だ。その鷹司に、珍しくシュウが手を止めて聞いてくる。
「レデイヴィアンはどうですか? とは言っても今は花が咲いていませんね」
「うん、葉の状態はいい。けど」
こちらも珍しいことに、鷹司が何か言いよどんでいる。
「……」
シュウが首を傾げて先を促すと、鷹司はポリポリと頬を掻きながら言った。
「変な事を言うと思うだろうが、なんと言うのか、寂しそうだ。うん、そういう風に感じる」
今度はうん、と納得したように頷きながら言うと、シュウが少し嬉しそうに微笑んだ。
するとそこへ。
のっそりと、たまさんが花々の間から現れた。
「お、今日は早いじゃねえか。いつもおやつの時間に現れるのによ。腹が減ったのか?」
「にゃあお」
たまさんは、ちょっと怒ったように高く鳴く。
鷹司は「悪い悪い」と苦笑いしながら玄関の階段を降りて、レディヴィアンのそばへしゃがみ込んだ。
たまさんがその彼に近寄っていくのを見て、シュウが「では、私は店へ戻りますね」と言い残して店へと入って行く。
「なんだよ」
するとたまさんは、レディヴィアンを見上げて「にゃあおん」と鳴いた。
「お、お前にもわかるのか? そうなんだよな、なんでかなあ、寂しそうだよなあ」
そうやってしばし花のないそれを眺めていた鷹司が、ふと視線を感じて、たまさんに目をやると、たまさんはキュッと目を閉じる。
しばし空白のような時を経て、ポカンとした表情の鷹司が、
「ああ、そうか……」
妙に納得したような声で言うと、ハハハと笑いながら、なんとたまさんを抱き上げてステップを踏みだす。
「わかったぜえ♪」
おかしな節をつけて歌いながらくるくる踊り出す。
たまさんはどうやらとても嫌だったらしく、フガフガッと身体をひねってその手から抜け出すと、「なおん~」と、重低音で鳴いてから、ふん!とどこかへ行ってしまった。
「ハハハ、悪かったよ。けど、ありがとな。良い仕事してみせるぜ」
もう姿の見えないたまさんにそう言うと、鷹司はまた庭を眺め始めるのだった。
「レディヴィアンと対になるように、もう一株薔薇を持ってこようと思うんだが」
その日の夜、鷹司が2階リビングでシュウたちにそんな話を始めた。
「庭の改造計画っすか? 楽しそうっすね」
「改造って程でもないさ。うん、まあでもあの隣に植えるとなると、バランスを考えなくちゃならないな」
「うちは何年泊まってくれても大丈夫だから気にせずに。ゆっくり考えていいよ~」
「はあ? いや、なに言ってんだ冬里。そんなにいられるわけないだろ。俺は設計図書いて、薔薇の手配をするとこまでだ。あとはレディヴィアンの時に頼んだヤツに任せるさ」
「なあんだ、つまんないの」
少しもつまらなくなさそうに冬里が言うと、「こいつ」と、鷹司が楽しそうに笑う。
「それで、薔薇の種類はどうされますか?」
珍しく急かすようにシュウが聞くと、鷹司は自分のタブレットを持ってきて3人に写真を見せた。
「うわあ、すげえ綺麗な白バラっすね」
夏樹が素直に感心している。
「そうだろう。これは、たまさんと俺のインスピレーションが一致した薔薇だ」
「たまさん? またなんで」
今度は素直に疑問をぶつける夏樹。
「ふん、そのあたりはよくわからんが、この薔薇がぱあっと頭に浮かんだんだよあのとき。まあ、そんなことはいいとして。どうだ? この薔薇」
「ん~いいんじゃない?」
そう言う冬里が意味ありげにシュウを見ると。
「レディはとても喜ばれるだろうね」
と答えを返す。
「レディが喜ぶって……、ああ、店に来るお客さんか。そりゃあ白バラっつうか、薔薇は女性客には人気だな」
そんな鷹司の言葉に、少し苦笑しつつ頷いたシュウが魅力的な提案をした。
「それでは、今日は薔薇の紅茶をお入れしましょうか」
「さんせい~」
すぐさま手を上げて言う冬里。
「え? 薔薇の紅茶っすか? だったら入れ方もう一回教えて欲しいです!」
相変わらずの夏樹は、シュウのあとを追ってキッチンへと急ぐ。
「相変わらずカッコイイねえ、鞍馬は。じゃあうんと美味いのをお願いするぜ」
「かしこまりました」
その日の夜遅く。
少し灯りを落としたリビングに、シュウと冬里がくつろいでいる。
「レディ、じゃなくて、ヴィアンが喜ぶだろうね」
「え? ああ、さっきのこと?」
冬里が何気なく言った言葉に、シュウは苦笑する。
そう、鷹司が見せてくれたくだんの白バラ、それはまるで……、
「ジョシュアさまのような、純粋で高貴な薔薇だったね」
「うん。たまさんとの共同作業だけあって、その選択に間違いなし、だね」
「共同作業って……」
冬里のセリフにまた笑いながら、シュウは400年も昔に思いをはせる。
ジョシュアというのは、当時仕えていたお屋敷のお嬢様であるヴィアンの許嫁だ。2人はとてもお似合いだったし、最後まで幸せな結婚生活を営まれたのは風の便りで聞き知っている。
ヴィアンを彷彿とさせる薔薇が、ジョシュアを彷彿とさせる白い薔薇を呼び寄せたのだろうか。
どちらにしても、これでまた、〈レディヴィアン〉はより一層美しい花を咲かせる事だろう。
「でもさ、そのうちここも離れなきゃならないよね。その時あのふたつの薔薇はどうするつもり?」
そうなのだ、彼らもいつまでもここにいられるわけではない。外見の変わらない彼らが『はるぶすと』を去る日は案外近いのかもしれない。
とは言え、百年人にしてもいつかは死を迎え、この世界を離れなくてはならないのは同じだけれど。
「そうだね。種を採っておいてもいいけれど。出来れば苗木にして持って行ければ一番良いのだろうけど」
「そのあたりは大先生の太郎に相談してみれば? けど、今から店をたたむ心配するなって言われそうだけどね」
事情を知らない鷹司は、彼らがじいさんになって身体が動かなくなるまで、『はるぶすと』を続けると思っているだろうが、こればかりはどうにもならない。
シュウは、「全く心配性なヤツだな」などと言いながらも、丁寧に教えてくれるであろう鷹司を思って、なぜだか胸が温かく、そしてとても嬉しくなるのだった。
「一度聞いてみるよ」
「健闘を祈ってる。……さ~て、僕もそろそろ休もうかな」
冬里が読んでいた本を閉じて、うーんと伸びをする。
「ああ、もうこんな時間だね。それではおやすみ、良い夢を」
微笑むシュウに、冬里がいたずらっぽい笑顔を向けてきた。
「? なにかな?」
「おやすみのKISSは?」
と、自分の頬を指さすので、シュウは珍しく本当にガックリと肩を落とした。
「そんなにお疲れのご様子ではありませんが」
言葉は丁寧だが、怒っているわけではなさそうだ。
「だよね、さすがシュウ」
「本当に疲れて倒れたりしたときは、本気を込めさせて頂きますので、ご心配なく」
自分のおでこを指して言うシュウに、
「ええ? シュウに本気をださせるようなへまはしないつもりだけど。けど、何が起こるかわからないのが未来だよねえ。じゃあそのときはよろしく~」
と冬里はあくびまじりで言いつつリビングを後にした。
まったく、と言う感じでため息を落としたシュウも、今日はもう休むようだ。
明かりを落としたリビング。
カーテンの隙間からは優しい月明かりが漏れている。まるで月がシュウにおやすみを言っているようだった。
鷹司はそのあと着々と庭の手入れと手配を済ませ、あとは白バラの到着を待つだけだ。
「後のことは前回任せたヤツに頼んであるから、大船に乗ったつもりで待ってりゃいいさ」
「はい、何から何まで、ありがとうございました」
またくそ真面目に頭を下げるシュウに、鷹司は笑って答える。
「いいってことよ」
そして。
「こっちの後のことは、総一郎に頼んであるから、大船に乗ったつもりで楽しんでよね」
「は? ああ、ありがとうな。〈料亭紫水〉、楽しみだぜえ」
この後、京都をはじめとした関西方面を旅して、そのあとは瀬戸内海の景勝地、尾道、鞆の浦、宮島などを巡り、時間があれば四国にも渡ってみようか、などと言う鷹司に、冬里が、京都へ行くなら、と〈料亭紫水〉でのひとときをプレゼントすることになったのだ。
出発の日の朝。
「日本を離れるときの見送りは出来ないと思うから、これでしばしのお別れだね」
「また絶対遊びに来て下さいよ!」
「薔薇の手入れも兼ねて、ですね」
京都へ向かう鷹司を、シュウの運転する車で駅まで送ってきた3人が口々に言う。
「ああ、いつになるかはわからないが。あ、そうだ、白バラが到着したら写真を送ってくれよ」
「はい」
シュウが返事を返すと鷹司は満足したように頷いて、「見送りはここでいいぜ」と、今日も颯爽と改札をくぐっていった。
「さて、バケーションも後半戦突入、だな。……お?」
ホームに入った鷹司は、また顔見知りの姿を見つける。
端の方で、邪魔にならないように、けれどもなかなかの存在感でちょこんと腰掛けているのはたまさんだ。
「また見送ってくれるのか?」
「にゃおん」
返事を聞いて鷹司は嬉しそうに自分もちょこんと隣に立つ。
電車は時間通りホームに滑り込んできた。日本の鉄道の正確さは、本当に世界に誇れるんだよな。こういうジャパニーズの良さは、ずっと続いて欲しいもんだ。
扉が開いて、電車の中に入った鷹司が、「じゃあな」と手を振る。
「にゃあおー♪ー♪ん」
今日は、「またな」ではなく、猫語での別れだった。
けれど、その歌うように節をつけた鳴き声は、たまさんが残りの旅の安全と祝福を約束してくれたように、鷹司には感じられたのだった。
白い薔薇を庭にお迎えする日まで、『はるぶすと』は通常通り営業しております。
もちろんお迎えした後も、通常通り、皆様のお越しをお待ちしております。
今回は、『はるぶすと』の凄腕庭師〈シャキーン!〉鷹司さんのお話です。前回の予告通りでしたね(笑)
『はるぶすと』のお庭もまた賑やかになりそうです。
お話はまだ続きますので、どうぞこのあともお楽しみに。