第一話 『彼女が見たもの』
――ある人の両親は英雄だった……
――ねぇ…わ……のこ…と……あ…してる?……
突然、彼女の耳に声とも呼べないものが響いた。徐々に視界がはっきりとしてくる。この声の正体は見たところ私と同じぐらいの歳で性別は女だろう。 知らない服を着ており、首周りには赤く可愛らしいものがついている。そしてもう一人この女性の傍らに横たわっている。
――あた……りま……えだ……。
声の正体の主を見ても知らない服。そしてとても身長が高く、性別は男だ。この二人は見た感じ付き合っているのだろう。どちらも流血が激しく、女の子は黒く綺麗な長髪を赤黒い血で汚し、男の子額やすらりとした腹部を真っ赤に染めていた。しかし、顔は何かに塗られたように黒く私には見えなかった……。
――うれ……し……い
女の子は私から見てもとても重症なのだが男の子に向けて微笑んだ。しかし男の子は笑わなかった。この状況下の中で微笑みかけたのを歯痒く感じたのだろう。男の子は胸から悔しい気持ちが込み上げた。
――あぁ、こいつを守れないなんて……
そして涙を流しながら男の子の声が狭い道の中で反響した。
――『俺が必ず……! 助けてやる……っ!』
そう言い終わった後、二人は倒れた。出血量が多く『死』に近づいてきたのだろう。
この時二人のいる地面に、魔法陣が浮き出てきた。
――数秒後、世界が光った。
――『おま……力を…合…せるよ! 超…復!』
――何!超回復!?そんな……回復を使える人だけでも限られているのに!
私はこの世界の魔法に驚愕した。私の国とは全く異なる……と。
『大丈夫ですか?起きてください……。』
その声は教会のシスターらしき人物で髪は金色で幼い感じが可愛らしさを増していた。
『もう……! 起きてください!』
この声で二人はようやく目を覚ました。そして顔を上げる。私にはまだ二人の顔が黒くなっていて見えない。
『どこだ!? ここは……! それに俺たちは死んだはずだ!』
男の子の第一声がそれだった。無理もないだろう一方、女の子は恐怖のあまりか口をパクパク開け、喋らなかった。 『……ぁ』
――『よくぞ来た、勇者よ……』
その男性を見た瞬間、私は驚愕した。
それは私の国の今亡き王様だったのだ。今の王は全く違うとても優しい方だ。なぜあの方がお見えに?私は混乱した。
『何が勇者だ! 俺たちをこんな所にっ…急に連れてきて……一体なんのつもりだ!』
男の子が王に対して叫んだ。様子を見たところすごく激昴している。
『落ち着いて聞くのだ……まずそなた達の名を教えてくれんか?』
『まず読んだ理由を教えてくれ……そっちが連れてきたんだからな』
男の子は即答し、少しでも気に触れたら皆殺しにしそうな勢いだ。そして王の側近の方たちは礼儀のない……と蔑んでいた。
そして王は答えた、
『まず、この世界はそなたらの住んでいた世界とは違う。』
『どういうことだ?』
『最後まで話を聞くのが普通だろ?』
男の子は正論を言われ――ぐっ となり言い返せなかった。
『続けるぞ。 この世界には代々魔を払うため、異郷の地から人を転移させている。 その者は「召喚者」 と呼ばれ、特別な力を持っておる。その力は子にも受け継がれ、その召喚者一族は崇められていた。余はその一族の最後の一人なのだ。しかし、余も歳をとりもう戦えぬのだ。何としてでも魔を討ち滅ぼすため、そなたらを呼んだのだ。分かったか?』
――ぷしゅー……
男の子の頭から蒸気が出てきた。情報量が多かったのだろう。
『ぬ。どうした!?』
『何も……ないです……』
男の子は続けてくれと頼んだ。
『簡潔に言うぞ。 この世界のために魔を、魔王を討ち滅ぼしてくれ!頼むこのとおりだ……。』
王様は頭を地につけ、深々と体を縮めた。――いわゆる「土下座」だ。
これには男の子も反応し、
『何やってるんだ! 頭をあげてくれ!』
しかし、王様は頼むとまた土下座した。
『わかった、わかった! ……俺がそいつらを倒すよ。』
『まことか!』
王は跳ねるかの如く、頭をあげた。そしてありがとうと礼をした。
――突然、女の子の声がした。
『私も……協力します。』
しかし、男の子が反論した。
『お前は待ってろ。もうお前に死ぬような真似を俺はして欲しくない……』と少し前のことを思い出したのだろう。
――広間に破裂音が響いた
『私がどれだけあなたのことを思ってるか分かる!? 私はあなたを絶対に死なせない! 死ぬなら一緒よ! 』
女の子が泣きながら彼への想いを叫んだ。
彼は思い詰めたような顔をし、申し訳なさそうにごめんと言った。その後静寂な時間がうみでた。しかし、
『そなたら二人を勇者としてここに認定する!』
王の声が静寂な広間に響き、王の元へ二人は足を運んだ。
『行こう!どこまで一緒に!』 『あぁ』
こうして二人の物語が始まった。そして二人は勇者と認定された。それと同時に視界が真っ黒になって言ったのを私は感じた。
――なんだ……これ
その声と共にフィースは意識を失った。