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王立学園

 翌年、いよいよ私たちも王立学園に入学。

私たちが入学する前、卒業式は大変だったらしい。

学園中のご令嬢方を虜にしていたルーク殿下が卒業するとあって、大号泣の嵐だったとか。卒業パーティーでは、ダンスをしようと令嬢方の大バトルがあったとか。血で血を洗う闘いが繰り広げられただとか……


まあ、とにかくすごい荒れようだった卒業式が終わって私たちが入学したのだが、これがまた大変な騒ぎになってしまった。

リアム殿下を筆頭に、サム、ライリー、エルとイケメンが揃って入学したからだ。

毎日、どこからともなく令嬢方が集まり、もみくちゃにされるという事が日常茶飯事になっていた。


見兼ねた学園長が一喝して、やっと事態が収まったのだ。


そうして学園にも慣れてきたある日、図書室へ行くために廊下を歩いていたら、予想もしていない人に遭遇してしまった。


ルーク殿下だ。ルーク殿下は卒業したはず。

なのに、何故かバッタリ会ってしまった。


「ルーク殿下……もしかして……」

「違うからね。エリーが想像したような事じゃないからね。大院まで行ける事になったからいるんだよ」

「わかりまひたろれ、はなひて」

両頬をつままれて、上手く喋れない。


先日、無事に立太子の儀式が済み王太子となった殿下だったが、陛下がまだまだ現役なので当分は公務を学びながら院生として、学園で学ぶ許可をもらったらしい。聖獣と魔法について研究するつもりなのだとか。


つままれた頬をさすっていると

「エリーの頬は柔らかくて可愛いね」

そう言いながらさすっていた私の手をどかし、私の頬を両手でフニフニと触る。


なんだかちょっと落ち着かない気持ちになっていると、殿下の後ろから物凄い勢いで駆けてきた令嬢が、思いっきり私にぶつかってきた。

「!!」

あまりの突然の事に声も出ず、ましてや避けるなんて事ができるわけもなくそのまま後ろに軽く飛ばされる。


でも、咄嗟に伸ばした手を殿下に握られ、背後は大型犬ほどの大きさのアステルに支えられ、なんの衝撃もなく助けられた。


「エリー、大丈夫?どこか痛めてない?」

ルーク殿下が焦ったような顔で、足やら腕やら調べまわる。

「大丈夫。びっくりはしたけれど、殿下とアステルに助けてもらったから。二人ともありがとう」


『それにしても一体なんだったんだ、あの小娘』

「さあ、何か余程急ぐことがあったんじゃないかしら」

「……」

ルーク殿下は、令嬢が去って行った方を険しい表情で見続けていた。


「追いかけなかったの?逃がすなんて甘いんじゃない?」

私の隣でプリプリ怒っているエルに、ケーキに乗っていたイチゴをアーンしてあげる。


「咄嗟のことだったからね。それに、エリーを放って追いかけるなんて出来ないよ」

「まあ、それはそうだけど」


放課後、皆で学園内にあるカフェでお茶をしながら、先程の出来事を話すとエルの怒りに触れた。リアム殿下もサムも怒ってくれる。


ライリーが少し考えたように

「実は、俺も今朝ぶつかられたんだよ。同じ令嬢かはわからないけど、後ろからドンって凄い衝撃だったよ。まあ、俺はそんなんじゃ倒れないけど」

「流石、脳筋」

「気配で避けろよ」

「筋肉バカ」


エル、リアム殿下、サムの順で言われたライリーは

「皆が酷い!」

とウィロウに泣きついた。よしよしと、慰めながらもウィロウは

「ぶつかったって、相手の令嬢はなんともなかったの?」


「うん、全然平気だった。それどころか危ないなあって言ったら「なんか反応違くない?」って言われた。そのままブツブツ言いながら去って行ったけど、ちょっと怖いから追わなかった」

「どんな令嬢だったかわかる?」

「そんなの、ウィロウとエリー以外は皆同じに見えるからわからないよ」


「はあああ」

ライリー以外が盛大な溜息をつく。相変わらずのシンクロ率。

「やっぱり流石、脳筋」

「その大きな目は何のためについてるんだ?」

「剣の稽古で打たれ過ぎて記憶する能力がなくなったんでしょ」


「皆が更に酷い!!」

ウィロウが笑いを堪えながら慰めていた。

「ウィロウはこんなライリーを見ても、愛想を尽かさないの?」

エルが失礼な質問をする。


「ふふ、愛想なんて尽かさないわよ。だって最高の言葉じゃない?私とエリー以外の令嬢はどうでもいいって事でしょ。これ以上ない程の口説き文句よ」

「そうよね。ライリーがどれだけウィロウを大切にしているか、誰が見てもわかるし。それって凄いことだもの。最近は剣術もおじ様程ではないけれど強くなっているし」


「はは、相変わらずエリーはオヤジの事好きなのな」

そうなのだ。ライリーのお父様は騎士団団長なのだが、模擬戦を見に行った時にその豪快な剣さばきにすっかり惚れ込んでしまったのだ。

おじ様もグレイス家に女の子が居ないからと、娘のように可愛がってくれる。

私が行けば、アステルがたまに稽古に参加したりするので、おじ様も楽しんでくれているらしい。


「まあ、とにかくだ。わざとぶつかったのか、偶然だったのかは分からないけど、次に何かあったときはそれなりの対処をしよう。エリーだけじゃなくて皆も気を付けるんだよ」

「分かった」


ルーク殿下のまとめるような言葉に、全員で返事をするのだった。


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