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魔王降臨

「何ハッピーエンド感出しちゃってんのよ」

アニー・ベアリングだ。すっかり忘れていた。


「はあぁ、まだ何かあるのかい?」

ルークが言う。

「アタシはあなたの妃になるの!」

「無理」

「は?」

「だって、君の事少しも好きじゃない。というか、嫌いだなあ」

爽やかな笑顔で言い切ったルーク。


「……やっぱ、その女が邪魔なんだわ。じゃなきゃ、ルークが私にそんな事言うはずがない」

「アニー・ベアリング。おまえ相当頭が悪いんだな。おまえみたいな女、少なくともここに居る男はみんな嫌ってるぞ。口も悪いし、性格も最悪だ。兄上どころか誰からも求婚なんてされないだろう」


「うるさいわね。あんたなんて一番最初に攻略出来るほどの単細胞の人殺しじゃない。最後なんてあの女への想いが拗れて最悪な殺し方したくせに」

「なんの話だ?」


「君、転生者って言ってたよね」

ルークが話に割って入る。

「そうよ。あなたと結ばれるためにこの世界に来たのよ」

「可哀想に。きっと前の世界の記憶と今とを混同してしまっているんだね。以前にも転生者は何人かいたんだよ。でもね、あまりに前の世界の記憶が残り過ぎていると、今の世界との区別がつかなくなってパニックになる事が多々あったって。きっと君もそういう状態になってしまっているんだね。

ならば、北にある専用の施設に入れるように手配してあげよう。ここに居ては皆に迷惑がかかってしまうからね」


「なっ!?アタシはルークのためにこの世界に来たのよ。隠れキャラだって知ったから。アタシが本来の婚約者なのよ」

「本当に気の毒だ」

そう言って話を終わらせようとしたその時

「そもそもその女がいつまでもルークにくっついてるからいけないのよ!」

そう言うと大きな黒い炎を作り出した。


「アタシがこの手で断罪してやるわ」

そう言って真っ直ぐ私に向かってその炎を放った。


けれど、炎は私に届くことはなかった。

アステルとテーレ、ネロが私の前に立ちはだかる。更にその前にルークが立ち、いとも簡単に黒い炎を消し去ったのだ。


「よくもエリーに攻撃しようとしたな」

地の底から響いたかのような低い声で、アニー・ベアリングに凄む。

初めて聞いたその声に、流石の彼女もたじろいだ。

「未来の王妃に対する殺人未遂だ。犯罪者として捕らえる。大人しく北の施設に入ると言っていれば命まではとらなかったものを」


そう言うと、いつの間に呼んでいたのか騎士が数名やって来て、アニー・ベアリングを拘束して連れて行った。


「エリー、大丈夫だった?」

「ええ……ありがとう。大丈夫よ」

先程の声は幻だったのかしら?と思えるほど優しい声色に戻ったルーク。


「俺、久々聞いた。ルーク殿下の魔王ボイス」

ちょっと震えながらライリーが言った。

「僕も。やっぱ本物の魔王だよね、ルーク殿下って」

サムも自分自身を抱きしめながら言う。


「ん?何か言ったかい?」

超がつく笑顔で二人に詰め寄りながら言うルーク。

二人は首が取れんばかりにフルフルしながら

「いえ、何も」

見事にシンクロしていた。


「転生者って皆あんな感じなの?」

落ち着きを取り戻した食堂に再び座り、ウィロウがルークに聞いた。

「皆がそうではないよ。だけど、たまにいるらしい。向こうとこちらの情報が上手く処理しきれず頭がパンクするんだって」


「エリーは……その、もう大丈夫か?」

リアム殿下が少し切なげに聞く。きっと先程の私の態度のせいだろう。

正直、私の中でもあれが何だったのかはわからない。わからないけれど、今の私は元気だしリアム殿下は大好きな友達だ。


そっとリアム殿下のテーブルに置かれていた手に私の手を重ねる。

「うん、大丈夫。さっきはごめんなさい。パニックになってしまって」

「いいんだ。エリーが大丈夫なら」

そう言ってリアム殿下が手を反転させて私の手を握る。

「エリー、大好きだ」

「ふふ、私も」


「はい、そこまで」

私たちの間に座っていたルークがベリッと繋がれた手をはがす。

「はあ、自分の弟にまで嫉妬。心が狭い魔王だな」

「うるさいよ、エル」

あ、魔王ボイス。

「カッコイイ」

「え?」

皆が声の主に注目する。ネロだ。


「本物の魔王様みたいだ。魔王様がいるのか知らないけど」

「ネロは魔王様見たことないの?」

「うん、でもきっとこんな感じのような気がする』

「ルーク殿下凄いな、悪魔に尊敬されるなんて。やっぱり間違いなく魔王―」

言い終わらないうちに、ライリーがうっと呻いておでこを押さえた。


「どうしたの?」

ウィロウが心配そうに聞くと、おでこが真っ赤になっている。

「デコピンされた」

どうやら目にもとまらぬ速さでルークがデコピンしたらしい。

「全然見えなかった」

リアム殿下が言うと

「やっぱりカッコイイ」

ネロがうっとりと呟いた。


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