三匹目
魔力を放出したことで身体の力が抜け、立っていられずルークへともたれかかる。
「エリー、よく頑張ったね」
ルークは私を抱えて、ソファへと座らせてくれた。
「皆は?」
言うが早いか、すごい勢いで皆が集まった。
「エリー無事?」
エルがあちこち確認するように触る。
「ちょっと、いくら兄妹でもそれはセクハラだと思うよ」
サムがエルを諫める。
「大儀だったぞ」
「あはは、何それ。リアム殿下偉そう」
「うるさい!どう言えばいいのかわからなかったんだ」
ライリーがリアム殿下にはたかれた。
「ふふ、あははは」
皆がいつも通り過ぎて、なんだか気が抜けておかしくなってしまった。
良かった、何も失うことなく終わってくれた。皆が変わらないでいてくれたことで安堵する。
すると、小さな声で
「エレノア、ごめんね。ありがとう」
と、あの悪魔の声がした。
声の方を見ると、真っ黒い小さなカラスがいた。
「もしかして?」
「うん。人の形が保てなくて、こんなになっちゃった。でも、命は助かったみたい。エレノアのおかげだよ、ありがとう」
「可愛い。とても艶やかな羽ね。触ってもいい?」
そう聞くと、カラスはちょこちょこと寄って来て、私の手にすり寄ってくれた。
「うわあ、なんて気持ちいいの。まるでベルベットのよう」
カラスは嬉しそうに私にされるがままになっている。
「あなたはこれからどうするの?」
羽を撫でながら聞く。
「どうするも何も、このままカラスの魔物として生きていくだけだよ」
「大丈夫なの?」
「わかんない。でもまあしょうがないし、命があっただけでラッキーだったし」
「じゃあ、うちに来る?」
「え?」
「うちで良かったら一緒に来ない?」
「……いいの?」
「勿論。一緒に帰ろ」
「……なら、ボクに名前をつけてくれる?」
「名前?」
「そう、名前」
それは契約するという事じゃないだろうか。
「私でいいの?」
「うん、エレノアがいいんだ」
「そっか。そしたらね、うーんと……」
少し考える。
「ネロ、ネロはどう?黒という意味よ。濡羽色が艶やかでとても綺麗だから」
「ネロ、ネロ……いいね、気に入った」
そう言うと、ネロの額に魔方陣が浮いて光ったかと思ったら消えた。
勿論、私の左胸も少し熱くなった。
『また仲間が増えたか』
『そうみたい』
戻ってきたアステルとテーレがネロを見ながら言う。
「ネロだよ。さっきはごめん。そしてこれからよろしく」
『まあ、いいだろう』
『うんうん。仲間増えるの楽しい』
「よかった」
なんのわだかまりもなく、受け入れてくれたアステルとテーレに感謝だ。
「またなの?一体どんだけ契約するのさ。またエリーの肌に傷がついた。もう、ちょっと見せて」
そう言って私の胸元に手をかけようとしたエルの手を、ルークがガシッと掴む。
「エリーはもう私のだから。いくらエルでもそんな場所見ようとしないでくれる?私だってまだ見てないのに」
とっても黒い微笑みで言うルーク。
「何言ってるの?僕たちは兄妹なんだからいいだろ。それに婚約者ってだけでまだルーク殿下のものじゃないから」
「ハハハ、エルこそ何言ってるの?兄妹だからってやっていい事と悪いことがあるでしょ。うら若き乙女の身体を見ようだなんてゲスだね」
「はあ?別に裸を見ようってわけじゃないでしょ。契約紋を見ようとしてるだけじゃないか。イヤだ、ルーク殿下はそれ以上の妄想が働いちゃったの?うわあ、やらしい」
「どれどれ。ああ、綺麗に横並びに入ってるわね。皆微妙に柄が違うのねえ」
『それはそうだろう。紋というのは個体で違うものだからな』
『綺麗ね、エリー』
「ホント、ボクのもちゃんと入ってる。嬉しいな」
「私も嬉しいわ」
「……」
「……」
「二人とも、何ポカンとしてるの?ちゃんと私が見てあげたから。傷だなんて表現は失礼なくらい綺麗よ」
ウィロウがバカにしたように二人に言った。
「なんでウィロウが見ちゃってるわけ?」
「やあねえ、当たり前じゃない。こういうのは女同士って決まってるでしょ。そんなこともわからないなんて……色ボケどもが」
「あはははは、色ボケどもだって。笑えるね」
ライリーがボコボコにされたのは言うまでもない。




