お茶会デビュー
「やっぱりスカイブルーにして正解ね」
私を見て満足そうに微笑むお母様。
確かに、銀色のストレートヘアにアイスブルーの瞳、肌も白く全体的に色素の薄い私には、優しいパステルカラーが似合うようだ。
「今日は初めてのお茶会だもの。可愛くしなくっちゃ」
「行きたくないのに」
「ふふ、そんなこと言わないで、楽しみましょう。きっと美味しいお菓子がたくさん出るわよ」
「ふふふ、それだけは楽しみ」
そんな会話をしていると、コンコンとドアがノックされる。
「用意できた?」
「あら、ちょうど今終わった所よ」
「わあ、エリーすっごく可愛い」
「ありがとう。エルもとっても素敵」
エルこと、エルフィーは私の双子の兄。私と同じ銀色の髪にアメジストの瞳。10歳で既に超がつくほどのイケメンだ。濃紺のモーニングに、私のドレスと同じスカイブルーのアスコット・タイ姿が似合っている。
「エリー、いい?今日は絶対に僕から離れちゃダメだからね。エリーは可愛いから気を付けないと。変な男に好かれたら大変なんだからね」
「エルこそ、すぐに令嬢たちに囲まれちゃうんじゃない?」
「そうよねえ、私の天使たちはとっても可愛いからきっとモテモテになっちゃうわね。それじゃあ早速、確かめに行ってみましょう」
お母様の親バカな返しに笑いながら、三人で王城へ向かう。
王城に到着すると、案内されるまま中庭へと向かう。中庭にはたくさんのテーブルがセッティングされており、既にたくさんの令息・令嬢が集まっていた。
一斉に視線が私たちへと集まる。好意的な視線もあれば、好奇心を向ける視線もあるようで、少しだけ居心地が悪い。
予想はしていたので、視線を上げ続け笑顔を保つ。
「母様は王妃様のお席に行かないといけないから、あなた達はこちら側の席に座るのよ」
「はあい」
二人で手ごろな席を探そうとすると、奥の方から「エル」と呼ぶ声が聞こえた。
「ライリー」
返事をしながら呼ばれた席へと向かう。
向かった席には、ライリーと呼ばれた赤髪にブラウンの瞳を持つ少年と、黒髪に赤い瞳の少年の二人が座っていた。二人とも、ポカンとした顔で私を見ている。
「見ないでくれる?減るから」
エルは二人から私を隠すように立つ。
「もしかしなくてもエルの妹だよね」
エルの言葉を丸っと無視して、ライリーが話しかけてきた。
「初めまして。エルフィーの妹のエレノア・ラッセリアです。以後、お見知りおきを」
カーテシーで挨拶をする。
「はあ、エリーのカーテシーは綺麗だね。この二人に見せるなんてもったいないよ」
エルに抱きしめられながら言われる。
「ちょっと。シスコン爆発させてないで、僕らにも挨拶させてよ」
黒髪の少年が言う。
「初めまして。サミュエル・ハットルベルクです。エルから君の話をよく聞いていたから会うのを凄く楽しみにしていたんだ」
「そうそう。会えば8割は君の話だったよ。お陰で初めて会った感じが全然しない。あ、俺はライリー・グレイス。よろしくな、エレノア嬢」
「はい、よろしくお願いします」
「君たちが来ると思って、席を確保しておいたんだ。ここどうぞ」
サミュエル様にイスを引いてもらう。そのままサミュエル様は隣に座った。反対側の隣に座ろうとしていたライリー様は、エルに弾かれてしまった。
「ちょ、エル。君はいつも隣にいるんだからここは俺に譲ってくれるものでしょ」
「ダメだね。お前の隣なんて座らせたら、エリーが穢れてしまう」
「なんでだよ」
「フフ、ウフフ」
家にいる時とは違うエルに、男の子達の楽しそうなやり取りに思わず笑ってしまう。
三人とも固まってしまった。
「フフ、ごめんなさい、楽しそうだと思って」
「エリー、可愛いすぎる!!」
エルの叫びに二人もうんうんと頷いている。
「あ、ありがとう」
言いながら俯いてしまう。きっと今、私の顔は真っ赤になっているに違いない。
小さな頃から魔力が高く、しかもテイマーという特殊能力があったため、制御することが出来るまで外に出ることが出来なかった。
実はこのお茶会が初めての外出なのだ。社交術も机上での理解だったので実践では役に立っていないようだ。
私の考えていることがわかったのかエルが言う。
「いいんだよ、エリー。好きなように振舞って。この二人は気を遣うような奴らじゃないから」
「エル……ありがとう、大好きよ」
「いいなあ、俺も大好きって言われてみたい」
「エリーがライリー如きに言う事はこの先も一生ないから」
黒い笑顔で言うエル。怖いからやめてあげて。
「エレノア嬢、僕もエリーって呼んでもいい?僕の事はサムって呼んで」
「あ、こらっ。会って早々、愛称でなんて呼ばせてたまるか」
「なんで?いいじゃないか。エルの妹なんだから、僕らはもう友達でしょ」
私に向かって笑顔で言うサミュエル様。
「はい、喜んで」
「じゃあ、俺も!」
「ライリーはダメ」
「だからなんでだよ」
そんな楽しい会話をしていると、城側にある席の方が騒がしくなった。