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剣聖子息の実力(グランベル視点)

「舐めるな!念動力は分かっていても防げないんだよ!」


「わかるぜ?そうやって自信の力を過信してる奴を俺は知ってる」


 決闘の時はリアスのそう言った隙を突いて落としたんだからな。

 まぁその後俺自身も天狗になってイルミナにあっさり落とされちまったが。

 奴は小石を浮かばせて、俺に放ってきてる。

 そして石に対処してる間に針を脇から刺してくるってところか?

 なんとなくの感覚だけど、あいつの意思というか気配を感じ取れる。

 これはおそらくツリムとの修行で身についた力だと思う。

 俺やイルミナは魔力が少ない分、魔法に頼った戦法が使えない。

 全くリリィに、リアスとミライが羨ましいな。

 全ての小石を打ち落としてから、針は指で挟んで受け止める。


「死角からの攻撃を何故!?」


「生憎礫の攻撃は、実体験済みなんでね。それにその程度で殺せると思ってたなら笑いもんだ!」


「ちぃっ!」


 これが空気摩擦による炎か。

 大したことないな。

 炎だから熱いには熱いし、自然発生によるものだからシールドも使えない。

 けれど真の剣士は魔法すらも斬るって親父が言ってた。

 じゃあそれがたとえ自然現象だとしても、変わりはないはずだ。

 俺は一本の剣を仕舞い、縦に両断する構えをして炎を切り裂いた。

 よしっ!


「は・・はぁ!?」


「呆けんな!てめぇは剣聖の息子と闘ってんだぞ!」


 自分の身分をひけらかすつもりはない。

 だが学びの場が他の誰よりもあった事実がある。

 だからこそ俺の負けは良くも悪くも親父の評判に影響を起こす。

 ならばそのことを誇りに思って闘うのも悪くはない。


「くっ!炎を斬れる剣士なんて聞いたことがない!くそがっ!」


「ならそれが事実なんだ、受け止めろ」


 懐に入りマントを斬りつけるが、流石に硬いな。

 撃ち落とすだけに留まった。

 こんな動きにくそうなマントを羽織ってるってことは、隠密以外の場合はまぁ防御力が極端に高いって理由だろうが。

 けど、それでも首から上がガラ空きだ。

 このままこいつに引導を渡そう。

 それがこいつのためでもある。


「精々向こうで楽しくな」


「その程度で殺せる訳ないだろう!」


 俺が剣を振り落とすが、手を前に掲げると俺の剣はピタリと動きが止まってしまった。

 もう片方の手は動くのでら閉まってあった剣を抜刀して横から凪ぐがそれもピタリと動きを止める。

 まるでこれは念動力が効いてるみたいだ。

 いや効いているのか!?


「甘い奴だ。ふんっ!」


 マントの中から棒を取り出す。

 次には棒が伸びて桃色な剣になった。

 変わった剣だな。

 それに左利きか。


「お前も剣が使えるのか。だが、太刀筋が甘------なにっ!?」


 奴の剣を剣で受け止めたら、俺の剣が簡単にへし折れてしまった。

 流石に驚いた。

 それだけの力をこいつが持っていた?

 それにしてはあまりにも腕への衝撃が低い。

 

「チッ!なんだよあれ!」


「わからないけど、あれはどうやらご主人様から貰ったものらしいよ。まさか剣が簡単に斬れるなんて思わなかったね」


「わかってたなら教えてくれよ」


「ボクだって何でもかんでもわかるわけじゃないよ!でも彼の剣は素人なはずだから、グランベルなら防げなくてもなんとかなるでしょ!」


 んな無茶な。

 おそらくミライは剣を学んでこなかったから知らないんだろう。

 他の国は知らないが、この国の剣は単体で持つものじゃなく盾を使用するものだということに。

 つまり受けることを前提としてる剣なんだ。

 

「マジで無茶言うなよほんと。いや、寧ろこれが本来の闘いだよな」


 相手の前情報なんかない。

 殺し合いなんだ。

 相手の命を奪うことに簡単も難しいもない。

 いかに相手の虚をついてその命を奪うかそれだけだ。

 俺は人を殺したことがない。

 だから覚悟が足りてなかった。

 俺は両頬を叩いて気合を入れ直した。


「どうした?」


「お前を殺す算段を考えてたんだわ。喜べよ?将来の剣聖の初めての錆になれることを」


「なるほど、殺しを知らない青二才ね。舐められたもんだ」


 そう言うと男が俺の目の前に移動してきた。

 いやこれは実体じゃない。

 ミライは警戒することしか言わなかっただけで、相手の実力は未知数なんだ。

 切り替えてる。

 だからこれは見逃していい。

 そのまま相手をすり抜ける。

 何か対応してくると思ったんだろう。

 戸惑いの顔を隠せてない。

 だがそんな余裕を見せた時点で俺の勝ちだ。

 俺は片手で剣を振り下ろし、左手は後ろにやった。

 当然動きを止められてしまう。


「片方の頭身が折れた剣は邪魔だからレイピアの要領で攻めてきたんだろうが、甘かったな。俺の残像を見破ったのは褒めてやる。だが行動の手数が足りなかったな。所詮はまだガキという事」


「カッコつけてるとこわりぃけど、俺を倒したところでまだ他のやつがいる事を忘れてないか?」


「取るに足らん奴らのことなど知ったことか!」


 取るに足らんねぇ。

 ぶっちゃけこの中じゃ俺が一番実力は下だからなぁ。

 そんな俺と互角のこいつが勝てるとは思えないが、でもまぁ俺の知ったことじゃない。


「まずは貴様を血祭りに上げ、そして------」


 その言葉のあとは阿鼻叫喚が響き渡る。

 何故ならこいつの左腕は、上から降ってきた剣により完全に切断されてしまったからだ。

 俺はこいつに斬りかかったところで、リーチの短い折れた方の剣を利き腕の左に持って後ろに隠した。

 そして動きを止められることも考慮して上に投げた。

 あとはゴリューがコントロールしてくれることを信じて俺はそのまま突撃だ。

 こいつが勘違いしてくれたおかげでこうもあっさり決まったくれた。


「うっぐぁぁ!何故?何故だ!何故俺の腕がなくなっているぅぅ!」


「日頃の行いだろ?」


「ぐぅぉぉぉ!」


 驚いた。

 切れた腕の傷口を燃やしてる。

 これなら止血は可能だ。

 だけど、個人的にはこの剣が困ってたから問題ない。

 俺は奴が使っていた剣を拾い上げた。

 ん?

 どうやって使うんだこれ?

 頭身が出てこない。

 おそらく収納魔法でコンパクトにしてると思ってたが違うのか?


「はぁ、はぁ、それを返してもらおうか!」


「返せと言われたら、はいそうですかって返す訳ねぇだろ!」


 俺は剣を振るって、あいつの持っていた剣を切り刻んだ。

 軽すぎて簡単に切れちまったわ。


「な、な、なんてことを!!」


「返すぜ!ほらよ!」


 バラバラになった剣を投げつける。

 ついでに折れた剣も投げつけてやった。

 バラバラになった剣はピタリと止まったが、折れた剣だけは避けた。

 なんで止めなかったんだ?

 俺は土魔法:腕の壁(イノセントウォール)を使った。

 地面の土を操るくらいなら疲れないけど、無から有を生み出す空中でのこれは中級魔法なこともあって疲れるんだよな。

 サイズもあいつの体を包み込むくらいだ。

 だがこれで十分。

 

「潰れろよ!」


「その程度で舐めるな!」


 今度は動きが制限された。

 代わりにバラバラになった剣はあいつの懐にある。

 なるほど、念動力は念じてものを動かす能力だよな?

 ってことは、制限がある。

 ミライが言ったことなのに、俺が動きを止められて何も言わなかったのはそれが当然の結果だったからって訳だ。


「舐めてねぇよ!」


 俺は最初も行ったように跳弾を繰り返す攻撃に移る。

 流石に反応できないよな。

 そして俺を止めることもできていない。

 まずこいつは見えるものしか動きを制限できないと言うことはわかった。

 だが大きなダメージを与える為に動けば、どうしても遅くなる。

 そこで視認される可能性がある。

 

「速さだけが特技か!その程度で!」


「ミライ、こいつのことは殺して良いんだよな?」


「なんでそんなこと聞くの?怖気付いた?」


 不思議そうに聞くミライ。

 確かに俺は人殺しの経験もないし、実戦経験だって数はこなしてない。

 リアスも実戦経験が少ないって言ってたが、幼い頃からジャイアントベア相手にしていた奴が、俺やリリィより実戦経験が少ないって言うこと自体が異常だ。

 だが殺し自体に忌避感はない。

 それは多分そう言う教育を受けたからだ。

 リアスやリリィは前世の記憶という物心ついた記憶がある所為で殺しに躊躇があるんだろうが、この世界で生まれてこの世界で生きてる人間なら戦争と隣り合わせでいざとなれば相手を殺して生き残れと幼い頃から教育される。

 貴族に至っては実際にメイドや使用人に殺されかけるのは珍しくない。

 そして親父の教育は、母親が長くいなかったこともあって厳しく時に冷酷であれと教えられた。


「んな訳ねぇだろ?情報収集の為に生かさなくて良いのかと思ってさ」


「なっ、貴様はもう俺のことを殺せると------」


「問題ないよ。彼は思考に関しては優秀みたいだから抜き取れる情報は抜き取れたしね。メモもしてるあるしほら」


 そう言うとミライの横で自信満々の笑みを浮かべてるイルミナがいる。

 あいつのジェネレーションギャップが少し可愛いと思えるのが、あいつがモテる理由なんだろうなぁ。

 まぁ俺は興味ないが。


「んじゃ、そろそろ決着をつけるかぁ!」


「なにっ!?」


「なにじゃねぇよ?決着をつけるって言ったんだ!」


 俺は折れてない方の剣を投げつけ、跳弾で後ろに移動する。

 案の定見失ってるな。

 俺の唯一の武器を投げつけたことによる困惑で思考が追いついていないんだろう。

 最も思考を許してやるほど俺は甘くない。

 そのまま俺は男に飛びついて羽交締めを行う。


「つぅかまぇたぁ!」


「なんだ!?何故!?」


「良いのか?このままじゃ刺さるぜ?」


「剣を投げつけられた程度でビビる俺じゃねぇんだよ」


 剣の動きはあいつの目の前でピタリと止まり、そのまま落ちる。


「ミライ!この魔力の壁解除してくれ!」


「ふふっ、ボクに君の思考は読めないけどなにをするかは想像できたよ。がんばれ」


 指をパチンとすると共に、俺とこの男は自由落下で下に落ちていく。


「馬鹿な!?貴様なにを!?」


「俺と一緒に黄泉の旅の切符をプレゼントしてやるって言ってんだ」


「くそっ!この!話せっ!」


 失っていない右腕必死にもがくも俺が離れることはない。

 そして奴の能力もこうがっちり掴まれていては意味がない。

 剥がそうとしてるのはわかるが、この程度の力じゃ無理だ。

 こいつの念動力には制限がある。

 自分一人で浮いている間は、人間は浮かばせられず精々小石が席の山だ。

 だから魔力の壁に降り立った時、俺を浮かばせること、静止させることができたんだ。

 そして数にも制限があると見た。

 念動力は自身の集中力に比例して使えるんだろう。

 

「おまえは戦いにおいて敵に情報を与えすぎた。それが敗因だよ」


「馬鹿な!貴様も離さなければこのまま地面でお陀仏だ」


「どうかな?俺は案外運がいいんだぜ?」


 落下先を見ると、地面から棘のようなものが浮かび上がっている。

 下級の土魔法:剣山(ソードマウンテン)

 文字通り剣の様に地面を尖らせる魔法。

 本来は落とし穴に殺傷能力をつける為に使うが、この勢いなら落とし穴に落ちる時とさほど変わらない。


「くっ、このぉぉ!くそがぁぁあ!」


「じゃあな!悪いが黄泉への片道切符は一枚だ」


「なにっ!」


 俺はギリギリのところで羽交締めを辞めて跳び上がる。

 本来ならこの程度で威力は殺せない。

 だけど俺には最高の相棒がいるんだ。


腕の壁(イノセントウォール)


「ナイスゴリュー!」


 俺を包み込むように腕の壁が地面から生えてキャッチしてくれた。

 柔らかい土粘土だけで構成されてる。

 優しさを感じるな。

 次にはぐしゃりと言う音が聞こえた。

 そして絶叫が響き渡る。

 流石にあの塔、高さがあったからなぁ。

 しかしまぁ自分で剣を突き刺すよりは、殺したって感覚が少なくてよかったわ。

 そっと地面を見てみると、そこには血溜まりが広がっている。


「うわー、これはグロい」


 直接的な表現は避けるが、あいつだった肉体は剣山に刺さり無惨な姿をしている。

 それでもマントが破れていないあたり、あいつのマントの素材はいい奴が使われてたんだろうなぁ。


「あれだけ回収しておくか」


 俺は死体を漁ってマントと、割れてしまってるが薬品のようなものを取り出して、この長い塔を登り始めた。



 フォルテがグランベルによってやられたところを見ていたものがいた。

 それは、彼ら六人の実験体の主人から直々に命令をもらい経過観察をしに来たフィニアだった。


「嘘にゃ嘘にゃ!まずいまずいにゃ!」


 ファウスト、セコン、ライアンはともかく、フォルテが神話級の精霊の契約者のリアスどころか、グランベルに負けるとは夢にも思っていなかったフィニア。

 何故ならフォルテの暗器攻撃は知らなければ防ぐことができない故だ。

 針を体内突き刺して操作して心臓を突き破ると言う地味な攻撃ではあるが単純に強力で、更に地味であるから露呈もしにくい。

 

「フォルテの様子はここから見えたにゃが、あの女ヤバいにゃ」


 暗器の存在をバラし、思考できると言う声を()()()から聞き取れたフィニアは敗色が濃厚だったフォルテの様子を見て少しでも情報を取ろうと考えていた。

 故に少しだけ判断も遅れてしまった。


「おいおい、こんなところでなにしてるんだ?」


「馬鹿ね。見たらわかるじゃない。密偵よ。今この領地で、シェルターに居ない者は敵と見做してその素性に関わらず命の保証はないってちゃんと宣言して避難誘導したの忘れたの?」


 フィニアの後ろから話し声が聞こえてくる。

 振り返らずともわかるその余裕な口調と、塔の下に居ながら上の声をはっきりと聞き取れるほどの耳を持ちながら、今まで気づかなかったことで背中から冷たい汗が流れるフィニア。

 恐る恐る後ろを振り返ると青年と少女が、こちらを見て笑っている。

 グレイとグレシアの聖人聖女両名だ。

 しかしそんなことはどうでもよかった。

 後ろに浮かんでいる二体の龍が浮かんでいることの方が、フィニアにとって重要なことだからだ。


「聖獣・・・しかも二体!?」


「へぇ、聖獣を一目でわかるなんてすごいわね。クロとメシアは一言も喋ってないんだし、魔物と勘違いしたっておかしくないしそれが普通なのにね」


「簡単な話だろ?聖獣について詳しい人間。要するに教国の関係者だ」


「わかってるわ。言ってみただけ------あら?逃げるのね」

 

 グレイが言葉を言い終えた瞬間、フィニアは逃走を選択して背を向けて走り出した。


(まずいにゃ、まずいにゃ!)


 聖人聖女を相手するにはフィニアでは力不足なのは自覚があった。

 敵の層も厚く、長期戦は命取りであり逃走の選択以外を取る他なかったのだ。

 余りにも過剰な戦力の為、フィニアはアルテリシアを罵りたくなった。

 そしてファウスト、セコン、ライアンとどうにか連絡を取り離脱を図ろうと考えていた。

 しかしフィニアは無情にも、配置された戦力の中で最も危険な相手に見つかってしまったことに気づいていない。

 それに気づくのもそう遅くはなかった。

リアス「これあれだよな。この章で俺達の活躍期待できなくね?」

ミライ「俺達の括りがボクやリアスくん、イルミナのことならそうかもねー。でもリアスくんは戦いが始まってるじゃん」

イルミナ「リアス様は大人がないですから、どうせジノアに譲ってないのでしょう」

リアス「それはこの章を最後までみたらわかんだろ!それより------」

クレ『お腹が空きましたね。何か食べたいです』

リアス「話遮るなよ。メルセデスに頼みに行くかぁ」

クレ『助かります。私はお腹が空いたので今日はここまでです。次回もお楽しみに〜』

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