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乙女ゲーのガヤポジションに転生したからには、慎ましく平穏に暮らしたい  作者: 茶坊ピエロ
四章 魔物と奥の手の代償
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転生特典とか言うやつ

 俺は今なんとも言えない状態に陥っている。


「うへぇぇべぇえん!りぁずがわいぞゔぅぅ」


 目の前でリリィが、顔面びしょびしょにして泣いているからだ。

 花そそについて色々話してるうちに、前世についての話もし始めたところ、涙腺を刺激したらしく涙が止まらなくなっているそうだ。


「ミラだってここまで泣いたことないぞ?」


「まぁリアスくんの前世の環境は、この世界から見ても劣悪寄りだと思うよ」


「いやそれはまぁなぁ」


「リアス様、それよりもアルナ様がポカンと口を開けていますよ?」


 え?

 あ、待てよ?

 俺はアルナに前世の記憶話したことあったか?

 答えはすぐに出る。

 ないからな。


「兄貴、今の話一体どういうことなのよ!」


「前世の話よ!ワタクシ聞いてませんわよ!」


「久々にアルナの令嬢口調聞いたな」


「話を逸らさないでくださいましっ!!」


 そんなにムキになってたら血糖値あがんぞ。

 ただでさえ女性陣の授業では茶会って言うお菓子を貪る授業があるんだから。


「血圧上がるぞ?」


「誰の所為よ!」


「あーわかるわかる。オレ達もミライが雷神って話をジノアにしたあと、二人にそうやって問い詰めたもんなぁ」


「オレ達って私のこともカウントしてる?私は先にミライから聞いていたわよ?」


「は!?オレだけ除け者!?」


 あの時はグレイが俺とミラに詰め寄ってきてウザかった。

 特にミラの手を握って問い詰めたときは殺したくなったな。


「大体俺が前世の記憶を持っていようといないと、おまえの兄貴に変わりないんだからいいだろ?」


 確かに腹違いとはいえ、実の妹にその話をしなかったのは良くなかったな。

 もう少しそこは配慮するべきだったかも知れない。

 いや人を疑い過ぎてた俺には無理か。

 メルセデスを連れてきたのだって、学園の料理人が信用ならなかったからなわけだし。


「いや悪かったよ。俺はちょっと前世での死因の所為で家族だって信用出来なかったんだ。それにお前らはその・・・人として終わってただろ?」


 アルナの瞳からぶわっと涙が溢れ始める。

 これは言いたくなかったんだ。

 これを言い出すと酷いんだ。


「うぇぇぇええええん!昔の事持ってこないでよぉおおおお!兄貴のう゛ぁぁあああか!」


「あぁーもうめんどくせーな!ミラ、頼む」


「はいはい、よーしよーし。いいこいいこアルナはいいこー」


 アルナを抱きしめるミラが、頭をなで始める。

 必殺なでこなでこ攻撃だ。

 ミラのこれは強烈なんだ。

 気づけば心の靄が取り払われているんだから。


「ぐすん・・・すん・・・」


「悪かったよ。アルナには話した気になってたんだ。いつも一緒だからさ」


「そうですわよ・・・」


「リアスって女泣かせだな。この短時間で二人の女性を泣かせ・・・なんでもねぇわ」


 グレイってホント一言多いよな。

 俺が思いきりグレイを睨み付けたことで、言葉をそれ以上続けなかった。


『聖女と接触することで、教国の情報を聞けると思ったのですが、そう簡単にはいかなったみたいですね』


「仕方ないだろ。収穫が無かったわけじゃないしな。教国は俺達が思ってる以上にきな臭いってことはわかったさ」


「そういえば、リアスは精霊と話す能力を転生特典としてもらったの?」


 転生特典?

 なんだよそれ?

 いやでも、俺以外に精霊の声を聞ける人間はリリィとグレイとグレシアの三人。

 それも聖獣と精霊共鳴(レゾナント)したときのみだ。

 つまり生身で聞ける人間は俺だけとなるけど・・・


「よくわからんが、その転生特典とやらはリリィはあるのか?」


「あるよ。わたしの場合はこれ!わたしの目から目を離さないでねー」


 右目を閉じて左目でこっちをじーっと見つめてくる。

 こいつの目って髪の毛は桃色なのに、目は真っ黒なんだな。

 地毛じゃ無いのか?


「おっけー!じゃあ行くよ。セイントシールド」


 セイントシールド?

 なんだこのシールド。

 というかなんでシールドを展開したんだ?


「ここにリアスの全力の魔法を撃ってみて」


「全力の魔法?撃って良いのか?死ぬぞ?」


「え、ちょっと待って・・・えっとあの、じゃあ幻想銃(ガンズミスト)を使ってみてよ」


 は?

 おいおいおいおい!?


『リアス、彼女の能力は貴方の精霊と話せる能力並みにヤバイです』


「お前の転生特典って、そういうことか!?」


「あー、さすがにわかっちゃうかー。そうだよ。わたしの転生特典ってなんかよくわかんないんだけど、左目でのみ視認した人が仕える最大火力の魔法を解析出来るの」


 そりゃわかる。

 なにせ幻想銃(ガンズミスト)は幼少期、まだ前世の記憶が色濃く残ってる時に作った魔法だ。

 けど、あまりにもじゃじゃ馬だったから使用禁止にした魔法だからな。

 じゃじゃ馬だけならまだしも、殺傷能力はライジングトルネードやライジングストームの比じゃないからなぁ。

 恐らく俺が使う魔法でまず間違いなく最強の魔法だ。


「いや、リアスくん。間違っても幻想銃(ガンズミスト)だけは撃っちゃダメだからね!?」


「わかってるよ。俺だってあの魔法の危険性はわかってる」


「なら良いけどね」


「おいおい、ミライが顔を青ざめてるって一体どんな魔法なんだ?」


 グレイが肩をグイグイ寄せてくるのがウザい。


「リリィ、お前が解析出来るのって魔法自体の能力なのか?それとも最大火力の魔法なのか?」


「あ、無視すんなよ」


「うるせぇ!どうなんだリリィ」


「痛い痛い。わたし一応病み上がりなんだけど!?」


 俺は気づいたらリリィの肩に掴み罹っていた。

 さすがに俺の気持ちを察してか、ミラも苦笑いしてくれている。


「もう。えっとねー、幻想銃(ガンズミスト)の威力は大体雷神、ミライの天雷と同じくらいの威力かしら?」


「やっぱりか。もしお前、俺が全力で魔法撃ってたら簡単にシールドは砕けたぞ」


「え!?」


 こいつは知らないんだ。

 魔法に込める魔力量によって魔法の威力が変わることに。

 天雷はもちろんすごい魔法だし防衛能力としては最強かもしれないが、ミラが本来の込める分だけの天雷を撃ったとしたら俺が全魔力を込めれば、なんとか天雷と拮抗できる。

 つまり天雷と互角って言った時点で、その解析能力は魔法の概要を見る能力と見て良いな。


「なるほど、だから天雷でシールドにヒビを入れた時あんなに驚いてたんだー」


「え、一体どういうことなの!?わたしにもわかるように説明して欲しいんだけど!?」


「あぁ、悪いな。つまり簡単に言うとこうだ。トーチで説明するか」


 下級魔法で最も威力が低い炎を灯すだけの魔法トーチ。

 正式名がトーチなだけで、誰もトーチを知ってる人間は居ないだろう。


「このトーチだけどな。ナスタ、トーチを使ってくれ」


『了解です』


 俺と同じくナスタにトーチを展開してもらう。 

 俺のトーチよりも炎の勢いがいい。

 それはナスタが炎の精霊だからだ。


「こうすると炎の精霊より、人間が使う魔法のが弱くなるのはわかるか?それもわからないなら説明するが」


「それならてぃっくんが魔法の使い方を教えてくれたから、グランベルもわたしも理解してるわよ」


 そりゃそうか。

 並列魔法を使ってるわけだし、それくらいはわかってるよな。


「なら話が早いな。だけど、魔力を込める量が変わるとこうなるんだ」


 俺がトーチに込める魔力量を調節して、ナスタの炎の大きさと同じにした。

 これをみてリリィとグランベルは驚いている。


「え!?どうなってるのこれ?」


「ナスタと同様になるように魔法に込める魔力を調節したんだ。更に言うと、全力で魔力を込めればこんな風にも出来る」


 俺は自信の魔力の半分くらいをトーチに込めた。

 さすがに結構疲れるけど、これくらいすればわかりやすいだろ。


「ブレイズ・・・ファイア。上級魔法!?」


「上級魔法に近いくらいの火力を下級魔法で出せるんだ。まぁ魔力消費量を考えたら非効率だけどな」


 ブレイズファイアなら大体一割くらいで普通に放てるからな。

 最も一瞬で相手を燃やし尽くしたいなら、もっと魔力が必要になるけど。

 複合魔法の方が効率的な魔力消費量で相手を消し去れるから、コスパ的にはそっちのがいいな。

 効率よく魔物を殺すなら一番良いのは真空波だけど。

 解析してそれに合わせたシールドを作ってるなら無意識に魔力調整は出来てるんだろうな。


「だから天雷を防ぐことが出来なかったのね」


「そういうことだ。まぁつまり、解析した魔法に対して展開するこのシールドは砕かれる可能性を持ってるんだ・・・ってこれ物理的なシールドにもなんのか!?」


 驚いた。

 こんこんってやったら普通に触れる事が出来るんだからすごいな。


「すごいでしょ。土魔法とシールド組み合わせたら、物理的なシールドにもなるかなって試してみたのよ。魔法って組み合わせてなんぼみたいなところあるじゃない?」


「それはたしかにあるな。この世界ではあまりそういう思考にならない。というか、複合魔法自体出来ない奴のが多いんだ」


「そうね。たしかにグランベルに魔法を教えても、組み合わせる魔法は使えなかったし」


「それはお前が以上なんだよ。それも転生特典じゃねぇのか?」


 たしかに魔力調節を知らないのに無意識で出来るのは転生特典の可能性はあるかもな。


「俺も魔力量が神話級の精霊と同じくらいだから、もしかしたらリリィの繊細な魔力調節も才能かもな。鍛えたらヤバそうだ」


 俺は六年の歳月をかけてそれを身につけたのに、それをいとも簡単にできてしまう人間がいる。

 才能は鍛えて仕舞えば凡人より確実に上になるんだ。

 俺も魔力量と言う才能があるから羨ましくなんかない。

 ないったらない。


「並列魔法だって俺には使えないしな。魔力を調節出来るだけじゃ難しい」


「並列魔法はすごいでしょー!これグランベルの家に本があって、その理論を読んで再現してみたんだー」


『理論を読んだだけであれをできる!?才能とは怖いですね。リアスといいリリィといい、転生者は恐ろしい・・・』


 たしかに本を読んだだけで出来るって、学生で言う勉強なんて教科書見れば余裕だろって言って遊んでる奴が満点を取る感じだろう。

 才能とは恐ろしい。


「すげぇよなー。ゴリューが魔法使ってくれたらいいんだけどなぁ。なんでか魔法使ってくれないんだよ。てぃっくんに聞いても、嫌われてるんじゃないかの一点張りだし」


 そう言って懐から精霊を取り出した。

 すげぇ、蛇の精霊か。

 コブラみたいな見た目なのに白い。

 でもアルビノじゃないなこれ。

 目が黄色い。

 そういう種類の精霊か。


「実際嫌われてんだ!だって話しかけても返事しないんだから彼!」


 話しかけても返事しないって、多分精霊契約の儀で無理矢理契約させたからじゃないか?

 そこら辺はやっぱり当事者に聞かないと聖獣でもわからないか。


「グランベル、そいつと契約解除してみろよ」


「は!?契約解除したらもう二度と精霊と契約出来ないだろ!精霊と契約出来ないって事は魔法が使えないんだぞ?」


「いや、それ関係ねぇから。精霊いなくても魔法使えるから。それよりも、その精霊のためにもお前のためにも一度契約を解除した方がいい」


 グランベルの様に自身で魔法が使えたとしても、精霊と契約することで魔法を使えると信じている人間だとしたらそう言った勘違いが起こるのかも知れない。

 勘違いしたままなら、いくら方法を説いても魔法使いとして死ぬって言われてるにも等しいからな。

 やっぱり精霊契約の儀はどうにかした方がいいかもしれない。


「大丈夫だ。俺はクレとの出会いは精霊契約の儀で出会った訳じゃないし、人間は魔力が回復するから寧ろ人間と契約しないと魔力が使えなくなるのは精霊なんだ」


 精霊は魔力が回復しない。

 だから契約をして人間から魔力を補充するしか無いんだ。

 そういう理由があるから、ある程度魔力効率が良くなっているのかね?


「わかった。えっとどうすればいいんだ?」


「精霊の名前を言った後に契約を破棄するって、言うだけでいい」


「ゴリュー、契約を破棄する」


 そう言うとグランベルの手の甲に付いていた契約紋が消え去り、ゴリューが光り出した。


『は、え!?しゃ、喋れんと!?それに自由に動けるばい!すごいけん!おわー!』


 広島弁・・・

 特徴的なしゃべり方をする精霊だし、なんかイメージとかけ離れていて驚いた。


「やぁゴリュー」


『なんばいあんさん!喧嘩うっとるか?わしゃはかうで!?』


 すごんでくる彼からは、蛇特有の威嚇音が聞こえる。

 これ普通に怖いからやめて欲しいんだけど。

 コブラの見た目をしてるのもあって、噛まれたら死にそうで怖い。


「売ってない売ってない。お前に自由意志を取り戻す手助けをしたのは俺なのによ」


「リアス、ゴリューは何て言ってるんだ?」


『あ、ご主人!ご主人はいい人じゃけぇ!てめぇら、この前ご主人と喧嘩してた的じゃろ!とっとと出てけ!ご主人はお嬢の事が大好きなんじゃボケェ!ここに居すわるのがどれだけ場違いかわかっとんのかボケェ!』


「あー、グランベルはリリィのこtふがふがふが------」


「なーに言い出す気だてめぇ!」


 グランベルはリリィの事が好きって言おうとしただけなのに。

 どうせ勇気が無くて言い出せなかったんだろうよ。

 そもそもこいつが勇気出してたら、アルバートとの決闘はもっと簡単に済んだはずなんだ。

 昨日はボコボコに出来たんだからな。

 結局俺達は決闘で、この二人に苦しめられただけな訳だし。


「いやいやー。ところでゴリュー。今はグランベルは君のご主人じゃ無いんだ。もう一回精霊契約を行わないと関係は取り戻せない訳なんだけど」


『おう!任せとき!ご主人の血を舐めりゃいいんじゃろ?』


「それはそうなんだけど、一つ聞きたいんだけど、精霊って魔力効率が悪くても魔法使えるよな?グランベルは土魔法を使えていたわけだし、魔力が足りないって訳でも無さそうだけど、なんでお前はグランベルに対して魔法を使わなかったんだ?」


 こいつがグランベルを慕っているのはたしかだし、そうなると魔法を使わなかった理由がわからない。

 そもそも自由意志がないから、よっぽどな理由でもない限り魔法が使えるはずなんだけどな。


『あ?そんなん、わしが土魔法を覚えておらんからじゃボケェ!何でもかんでも精霊が魔法を知ってると思うなよボケェ!』


「え、そんな事ってありえんのか?」


 クレの方を向いたが、今の言葉を聞いて自分の世界に入ってしまっている。

 一体どうなってるんだ。

 この際ナスタで良いか。

 

「ナスタは火の魔法以外も使えるよな?」


『使えますけど、多分彼ってまだ生まれて間もない精霊なのではないでしょうか?僕も十年ほどみっちり母から指導を受けまして、魔法を使えるようになりましたから』


 精霊にも母親っているんだな。

 じゃあ生まれたばかりだから魔法を全く使えないってことか!?


「グランベル、どうやらゴリューは魔法が使えないらしい。しっかりと教えてやれ。通訳はリリィしてやれ」


「え!なんでわたしが!?」


「異論は認めませーん」


 この二人の仲が深まれば、アルバートに関してはもう後ろ盾もないし問題ないと思ってる。

 さっさとくっつけよとも思うな。

 その後、ゴリューとグランベルの再契約を手助けして俺達は保健室をあとにして、寮へと戻った。

リアス「俺がクレと喋れるのって、転生特典だったんだな」

ミライ「逆に言えばリリィほど強力な能力でもないよねー」

リアス「だよなー。戦力的差は否めないぜ」

イルミナ「戦闘面でしか役に立たないリリィの能力よりもリアス様の能力のが融通が効きますよ」

クレ『おかげで我々も出会えましたしね』

ミライ「優しいリアスくんにはむしろそっちのがいいかもねー」

リアス「くーっ、お前らありがとよ」

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