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共闘、敵だった者と手を取り合う(ミライ視点)

 ボクはボクの出来ることをやろうと、リアスくんが現れた時に一緒に抱えてたパルバディとガーデルを守った。

 ボクとしては正直どうでもよかったけど、リアスくんが連れて来たと言うことは少なくとも死なせたくは無いと思った。

 だから身体が勝手に二人を守っていた。

 リアスくんはボクのことを捜したあと、ボクを見つけて親指を立ててたから間違ってないんだよね。


「くっ、ここは・・・」


「どうやらわたし達は全員何らかの影響で、魔力体が破損したのでしょうね。いつまで寝ているのですかグランベル」


「ぐへっ!てめぇ、こっちはお前の所為で身体が・・・ってあれ?なんで動けるんだ?」


「それは魔力体の点穴を付いたからですよ」


 金髪ロングの彼は、たしかグランベルだったかな?

 二人は闘ってたんだ。

 しかも点穴を突いたってことは、グランベルは敢えて落とさなかったんだ。

 よく考えてみたら臣下が落ちてしまっての敗北じゃ、アルバートはなんか言いそうだもんね。


「ここは一体どこだ?何かの爆発に巻き込まれたと思ったが、まさか落ちたのか?」


「だろうな。でもどういうわけか、控え室じゃない場所みたいだが・・」


「私も落とされたんだけど!?この場合決闘ってどうなるの?」


「引き分けだろ」


「そんなことはわかってるのよバカグレイ!」


「落ち着けってグレシア」


「当事者じゃないからそんなこと言えるのよ!決闘の当事者からしたら、溜まったもんじゃないわよ!?」


 グレシアの言うことも最もだね。

 アルバートも喚くと思ったけど、案外静か。


「みんなとりあえず落ち着こう。今はそれよりも重要なことがあるんだ」


「数分前までいちばん動揺してたくせによく言うわね」


「ハハハ・・・それは耳が痛い話だけどね。リアスくんと会えたら何もかも吹っ飛んじゃったよ」


 実際リアスくんの顔を見ただけであそこまで落ち着きを取り戻せるとは思わなかった。

 ふふっ♪


「なるほどね。上機嫌なのはいいけど、早く説明してミライ」


「わかってるよ。ボクも断片しか聞いてないし、そんな悠長に話してる時間もないみたいだから手短に話すよ」


 足音が聞こえてきたし、多分あれがニコラだ。

 リアスくん、どこが同じだよ!

 あれ普通にアンデッドって言われても疑問に思わないよ!?


「リアスくんも落ちてからアレと戦ってたらしいんだ。あれは騎士のニコラ。薬を使ってあの姿まで変貌したんだと・・・思う」


 そうか、どこを壊しても再生する身体だけど、完治するわけじゃないんだ。

 歪に修復されたからあの姿になったんだ。

 首や眉間には傷痕とも、血管が浮き上がってるとも言えない痕が残ってるし。

 今はのっそりこちらに歩いてきてるけど、いつ走り出すかわからないのは恐怖でしかないね。


「馬鹿言わないでよ!あれがニコラ!?私の知ってるニコラはあんなのじゃ・・・」


「そこはアルバート殿下が知ってるんじゃない?」


 全員がアルバートの方へと向く。

 アルバートは突然視線を向けられるが、おどおどした様子だね。


「お、俺は知らない!」


「はぁ、仮にも皇太子候補がそんなに挙動不審でどうするんですか!知らないなら知らないでもっと自信を持ちなさい!」


「ウガァァァァ!!」


 ニコラが唸り声を上げると共にこちらへと突進してくる。

 

「イルミナ!あれは殺しても死なないからね!手加減無用だよ!リアスくんがまともにやり合って殺せなかったみたいだからね」


「なるほど、それは強敵です!」


 ニコラは騎士だけど、最早騎士とも呼んでいいかもわからない太刀筋だね。

 ボクら的にはそれでもありがたいけど困った。

 逆に行動の範囲がわからない。


「ジャマヲスルナァァァ!!」


「本当にニコラなのか・・・声はたしかにニコラだが・・」


「受け入れ難いですが、その様ですね」


「くそっ!オレたちもイルミナの援護に行った方がいいんじゃないのか!?」


「グレイが言うことは最もだけど、下手に近接戦をしにいってもやられるのがオチだよ」


 太刀筋はともかく、その威力は本物。

 だってイルミナが避けたあと、振りかざした剣で地面を抉ってるんだから。

 せめてイルミナに及ばなくともそれに準ずる実力者がいれば------ってあれ!?


「助太刀するぜ!汚名挽回のチャンスだからな!」


 グランベルがニコラの後ろに回り込み、右腕を切り落とした。

 彼の持ってる剣は石だ。

 どうやら転移の時に手放したみたいだけど、石で人間の腕を切り落とせるわけない!

 それになにより汚名挽回って、挽回してどうすんだ!


「グランベル殿!満足しないでください!相手は再生するんですよ!」


「実際事実かどうかを知りたかったんだ!任せとけ!はぁぁあ!!」


 すごい。

 彼は、セミール先生ほどの剣術はないと思ってた。

 たしかに剣術だけで言ったら大したことないのかもしれない。

 けど無意識のうちに石に魔力を纏わせてるし、危なっかしいけどニコラの動きにも対応できてる。


「グレイ、二人を援護するわよ!」


「わかってる!」


 グレイやグレシアだって、あの二人を援護するために身体強化や、たまに掠ってできる傷を治したりしてる。

 そうとなると、ボクも負けてられない。


『ミライ様、そこの皇子には何かやらせないのですか?』


「あ、忘れてたよ」


 ナスタリウムが言ってくれなかったら、そのまま放置してたろうなぁ。

 とにかく彼が協力するにしろ、しないにしろ、仮にも第一皇子の彼をここにただ置いとくわけにもいかない。

 ボクはそう思いながら、彼の前に立ち口を開いた。


「アルバート、君は端っこで何もしないでいて」


「何故だ!」


 協力めんどいじゃん。

 グランベルの介入はイルミナが文句を言わなかったら何も言わなかったけど、正直ガランと関わりの深い彼に背中を預ける勇気はないよねー

 怖いし。


「君の弟はニコラが服用した薬を持ってたからだよ。リリィに投与して、ニコラと同じ獣を作り出したんだ」


「ガランが・・・いったい何故?」


「さぁね。ともかく君に背中を預けるのは怖いから、遠くで見ててよ」


「俺はそれについて何の関与もしていない!」


「だからなに?関わってないとしても、証拠がない」


「言い分はある!」


「そっ!言い分を聞いてる余裕はないから言いたきゃ好きにいいなよ。聞く気もない。恨むなら今まで横暴に振る舞った自分を恨みなよ」


 いちいち聞いてる間に戦況は揺れ動いてる。

 ニコラは殺しても死なない。

 つまり、この一分一秒が敗北へと向かっていることになる。


「さっきから無礼だぞ!」


「じゃあ君は失礼だよね!グレシアのやってもいない浮気の証拠を確かめもせずに、婚約破棄騒動にまで持っていって!大体君こそリリィと浮気してるじゃん!いい加減そのおめでたい頭どうにかしなよ!」


 本来であれば婚約者がいながら浮気してた彼が、婚約破棄を告げられる側だと言うのに!

 そうは言ってももう起きてしまった事実は変わらないし、そんなことでボクが怒ってもしょうがない。

 なにより怒りたいのはグレシア本人だろうし。


「俺を馬鹿に------」


「この状況でも、怒れる胆力は大したもんだよ。でも状況が見えてないね!君は信用に値しないから、後ろは任せられない。かと言って前に出ても役に立つとは思えない。以上」


 それでもなんか喚いてるけど、もう知らない。

 ボクはちゃんと言うことは言ったんだ。

 彼の精霊は精霊契約の儀で手に入れたのか、虚な目をしてるしそんな奴にボクは遅れは取らないから、いつでも何とかできるし。


「ナスタリウム!熱地獄(ヘルテンプル)頼んだよ!」


「おまかせを!」


「二人とも!ニコラから離れて!」


 イルミナとグランベルはそう言われると同時に飛び上がって離脱した。

 すごい息がぴったり!


「クソォァァア!」


 ニコラはリリィと違って意識があるのかな?

 でも暑さで意識も朦朧としてる。

 これなら魔法を狙いやすい。


「ライトニングスピア!」


 ちょっと薄暗い空間だけど、リアスくんが開けた穴のおかげで見える!

 狙いは剣。

 武器をなくした方が有利になるはずだから。

 バキンとする音と共に、剣が真ん中から半分に折れてしまった。


「オレノケンガァァア!」


 剣を見た後蹲るニコラ。

 そんなに大事な剣だった?

 たしかに地面に叩きつけても、見た目がそこまで変わらなかったってことはそれなりの物だったのかな?

 あ、これは幻惑魔法だね。

 ボクの電磁パルスの魔法に反応しなかった。


「気をつけて!幻惑魔法だよ」


 全員警戒している。

 一応、ボクは位置を把握出来てるからそこまで脅威じゃない。

 多分リアスくんは苦戦してそうだなぁ。

 探知の魔法があるから魔法をレジストする魔法は覚えてなかっただろうし。


「イルミナ、右!」


 来る場所がわかってたらイルミナだったら簡単に対処できる。

 回し蹴りで上に打ち上げた。

 思ったより天井が狭いのか、天井に打ち付けられてから首を掴み、地面に叩きつけられる。

 そのまま点穴を突かれて終わりかな?


「おい、お前!それはカウンター狙いだ!よせ!」


 グランベルの声に反応して、すぐに攻撃をやめて宙返りしながら元いた場所に戻る。


「グランベルゥゥゥウ!ナゼジャマヲシタァァア!」


「それは俺がお前の敵だからだぜっ!」


 すごいなぁ。

 指差しながらウィンクって恥ずかしくてボクには出来ないよ。

 きっも!

 二人が再びニコラと近接を繰り広げ始めた。

 ボクも時折ライトニングスピアを使って援護する。

 本当は韋駄天や天雷を使いたいけど、こんな狭いところじゃ二人を巻き込むかもしれない。

 闘いが膠着し始めていたんだけど、しばらくすると、ニコラの動きが遅れてきた。


「ぐぅがあ!イタイイダイイタイダイ!」


 急に全身を掴んで震え始める。

 痛いって言ってるけど、何が起きてるんだろう?


「イダァァアイ!」


 魔力が膨れ上がった!?

 これはまずいかな?

 ボク達はこの魔力の膨れ具合に、リアスくんとボクの魔力が合わさって大爆発が起きた。

 その威力はここにいる6人の魔力体を消し去るレベルだった。


「魔力が膨れ上がってるぞ!おいおいおい」


「ミライ!シールドで何とか出来ないの?」


 そうか、二人は精霊共鳴(レゾナント)のおかげで魔力の量が感覚でわかるんだ!

 リアスくんやイルミナは殺気はわかるけど、魔力は何となくあるなくらいしか感じられない。

 

「シールドじゃ無理。おじさんとリアスくん、二人が離脱しないとまずいレベルの魔法を撃ってくる」


「その規模は?」


「ボク達の魔力体を破壊した魔法だよ」


 それを聞いて顔を青くした二人を見る。

 まぁ実際に肌で感じたからだよね。

 魔力体が破壊される。

 つまり殺されたと同義だからね。


「何か手はないのか!」


「どうかなー」


 悠長にしてる時間はあまりない。

 ボクは必死になって活路を探す。

 彼の身体から微かに精霊の魔力を感じる。

 そういえば彼は幻惑魔法を使っていた。

 もしかしたら薬には精霊の何かを使っていたのかも。

 その行いは許せないけど、もしそうだとしたらそれは今のボク達にとっては勝機に変わる!

 

「全員耳を塞いで!ナスタリウムはボクから離れて!」


『わかりました!()()をするんですね』


 ナスタリウムも感じ取ってるんだろうね。

 耳を塞ぎながらグレシアのポケットへと入っていく。

 見た感じ全員耳は防げてるみたいだね。

 アルバートもちゃんと塞いだ様だ。

 ボクも同様に耳を塞ぐ。

 ボクの予想が間違ってたら全員お陀仏だけど、大丈夫だよね!

 ボクはお腹に思い切り空気を吸った。


「行くよ!キャァァァァァァァァア!!」


 ボクは叫び声を上げながら、その声の音を強化していく。

 幻惑魔法を使える精霊は多くない。

 そして使える精霊のほとんどは五感がかなり良い。

 逆に言えば良すぎるのが欠点にもなる。

 そこを突いた一つがこれ。

 音撃増幅魔法。

 これおじさんにたびたびやられて慣れたけど、まぁ脳が揺れて辛いんだよね。


「グッ、ァァアアア!ミミガァァア」


 耳を塞がないとこうなる。

 塞いでても、結構聴こえてくるけどね。

 でも声を発したあとに強化されてるからだいぶマシ。

 終わったのに普通なら顔がグチャグチャに涙やら鼻水やらで溢れてるのが、ふらふらしてるだけで済んでるのが怖いなぁ。


「でもまぁこれで魔法は使えない!いくら魔力が高くても、使えなきゃ意味ないんだ」


 イルミナに目配せをすると、疾風の如くその場から姿を消してニコラの点穴を突いた。

 ボクの意図をしっかり認識してくれてありがたいけど、これで終わってはくれなかった。

 ニコラはイルミナの腕を掴んだ。


「ツゥゥカマェタァ」


「馬鹿な!耳を塞いでないのに何故・・・」


 わからない。

 脳が揺れても、外傷はないから普通ならこんなこと起きない。

 でも事実起きた。


「イルミナ!!」


「馬鹿野郎!」


 グランベルが即座にニコラの腕を切り落とし、イルミナを抱えて離脱した。

 よかった。

 あのままじゃイルミナがまずかった。

 ニコラの様子を見るとやっぱりおかしい。

 腕がいつまで経っても再生していない。


「ド、ドウナッテイル!?ナゼウデガナオラナイ!」


 もしかして、再生限界があった!?

 それに動きが遅くなったのってまさか・・・


「血液内部の薬の濃度が薄まった?或いは別の何か?」


 どっちにしても今がチャンスに変わりない。

 ボクはそのまま天雷をニコラへと穿った。

 頭半分が吹き飛んでいき、出血こそ雷に焼かれてしなかったけど・・・・これで!


「バ、バカナ・・・ソンナコト・・・アルモノカ!」


 その言葉を最後にニコラは倒れた。

 魔力がどんどん漏れ出てくるけど、それでも。


「勝った・・・のか?」


「見ての通りですよグランベル殿。ミライ様がニコラを倒したのです」


「っしゃぁぁ!!!やったなグレシ------」


 グレイがグレシアに話しかけようとしたけど、グレシアの表情は暗い。

 そうだよね。

 点穴も効かないんじゃ、この殺せるチャンスで殺すしかなかったとは言え、小さい時から一緒にいた知り合いが死ぬ姿をみて、まともには居られないよね。

 グレシアの頬を伝って流れ落ちる涙がそっと地面へと落ちていく。

 そしてグレシアは袖で顔を拭くと振り返った。

 そこには笑顔があった。


「終わったのね。私達勝ったのよ」


 今度こそグレイは大騒ぎする。

 グランベルはアルバートの元に・・・ってリリィいるし。

 どうやら上でも戦いが終わったみたいだやっとひと段落つけるみたいだね。

 なんか二人降ってきたし。

 あ、一人はセミール先生。


「何だ?もう決着ついちまったのか?おじさん出る幕なくて残念だなぁ」


「良いことじゃないですか!君達、よくがんばりましたね」


 セミール先生達が来たことで、闘いが終わったと安堵する。

 あ、セミール先生にグランベルが吹っ飛ばされた。

 まぁ、あれくらい良い気味だよね!

 ざまぁ!

リアス「ついに決着かー」

ミライ「長い様で短かったよね」

イルミナ「時間的には短いですけどね。それに決闘は終わりましたが、色々と解決してないことが多すぎます」

リアス「いいんじゃねーのー?とりあえず目先のことを喜べない奴に幸せ来ないって」

ミライ「能天気」

リアス「え?」

ミライ「はーい、なんでもないでーす!次回幕間を挟んでからエピローグに入ります。そこから1週間休みをいただき作者は和数のストックを作るそうです」

イルミナ「毎日投稿が目標らしいので皆さんも応援してくださいね」

リアス「なぁ、俺のこと能天気って------」

ミライ「それではまた次回〜♪ばいばーい」

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