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神話級の精霊の頂点

「誰だ!?」


 索敵魔法は使っていたのに、急に気配が現れた。

 転移の魔法?

 

「うふふ、鷲掴みの君主殿は警戒心たっぷりね。いいわ、ガーデルなんかよりすごく良い」


 なんだ?

 先程までただの少女にしか見えなかったのに、急にこのただならぬ雰囲気。

 人間としての本能が逃走しろと警告してる。


『エイン・・・』


「やっほー、久しぶりクレ」


『愛称を許した覚えはありませんよエイン』


 クレの知り合いか?

 だとしたらこいつは------


「リアス!僕達はどうすれば!?」


「ダメだ何もするな!全員絶対動くな!」


 少なくとも何かすれば殺される。

 そう言う雰囲気を出しているコイツに対して何かするのは危険だ。


『威圧を解きなさい。リアスも警戒しなくても大丈夫です。彼は天神です』


 彼?

 こいつ少女じゃないのか?

 いやそもそも精霊に性別があるのか?

 ミラはハーフだから性別があるわけで。


「そんなこと言っても人間に君の声は届かないでしょ?ってあれー?少しだけ警戒心が緩んだ?ハハハ!面白いなぁ」


「くそ、陛下の御前だぞ!クレ、どうすんだ!」


『エインに説明させます。貴方はやる事をやりなさい。エインが出てきたと言うことは、要望は必ず通りますよ』


「いやー、クレがここまで慕うなんて一体何があったんだ?」


『命を救われて、精霊と会話ができると言うことを気に入りました。それと愛称は許してませんよ?』


「つーれなーい」


「話が読めん!リアスどう言うことだ!?」


「申し訳ありません陛下。説明したいのは山々ですが------」


 バタンと扉をぶち破る者達が現れる。

 8人編成の剣士の部隊か。

 いや魔導士部隊って言ってたよな?

 全員帯刀してるんだが。

 魔剣士部隊の間違いじゃないか?

 この世界に杖を使って魔法を使う文化はない。

 だから剣を持っていても不思議ではないけれど。


「居たぞ!皇帝エルーザに第三皇子ジノアだ!皇帝エルーザは公開処刑を下すから殺すなよ!それ以外は許可を得てる!」


「了解!ライトニングスピア」


「「ライトニングスピア!」」


 ライトニングスピア!?

 全員雷の精霊持ちかよ。

 だがまぁこの程度なら問題ないな。

 俺はライトニングスピアの隙間を通り、後方にハイドロバングルを放つ。

 中級魔法とはいえ、魔力を調節すれば上級魔法を消すには十分だ。

 同じ方向に放たれた魔法同士は、込められた魔力量が違うと複合魔法へと変化されずに霧散する。

 これを逆手に取ることで、後ろに魔法が行かないように後方に魔法を放ったんだ。

 魔力量を込めることで、ハイドロバングルをライトニングスピア全てを巻き込む程に変えた事により、威力の高い魔法を使わずに相殺できる。

 別に正面から力技をしても良かったが燃費が悪い。

 俺は魔力量は多いし魔力の回復速度も早いが、魔法効率が良いわけじゃないからな。

 魔法の撃ち合いになった時には部が悪くなる。


「サンダーウィップ!」


「下級魔法だと!?」


「舐めおって小僧が!」


 サンダーウィップは雷魔法だが殺傷能力がほとんどない。

 スタンガンの鞭バージョンと思ってくれればわかりやすいだろう。

 そして鞭は融通が効かない武器である為、好んで使う奴はいないし俺もできれば使いたくない。

 しかし一人一人昏倒させるのも、護る人間が後ろにいるのに強敵でもない奴にそんな配慮するのも面倒だ。

 鞭を横に振るうだけで全員気絶の簡単な作業。

 下級魔法だと侮るなかれ。

 下級中級上級の違いは威力に対しての魔力効率の良し悪しだけだ。


「へぇ、面白い戦い方をするねぇ」


『エイン、こっちはこっちで説明しますよ。リアス、敵の排除頼みますよ』


「わかってる。陛下、俺は城内に入ってきた()を排除いたします。褒賞の方を期待します」


「う、うむ・・・」


 取り囲んでるってことはそこまで敵は少ないはずだ。

 その予想は正しかったようだ。

 多分我慢出来なかった奴らがなだれ込んできたんだろう。

 さっさと全部片付けて戻ろう。

 背中を向けて来る人間に魔法を使うまでもなく簡単に制圧できた。


「しかしまぁ馬鹿もいたもんだ。これじゃあ大義名分をみすみす・・・与えることになる・・・のに?」


 待て、おかしいぞ。

 いくらこの国の貴族がクズの集まりだと言っても、無能だらけなはずがない。

 無能だらけならここまで貴族が強い影響を持つはずがないんだ。

 それが証拠に前世では貴族とは名ばかりで残ってる国もあるが、この国ほどの影響力がある国はなかった。


「陽動か?外にいる魔道士は張りぼて?くそっ、考えても仕方ないな。戻るか」


 ガーデルが帝都で暴れてるらしいが、さすがに警備騎士達がなんとかするだろう。

 俺は俺で、しなければいけないことをすればいい。

 

「戻っ、りました」


「あーおかえりー」


「リアス、お前は精霊と会話が出来たのだな・・・」


 陛下は悲しそうにそう言った。

 まぁこの中で俺が精霊と会話出来るのを知らなかったのは陛下だけだからな。

 信用されてなかったと思われてもおかしくない。

 いや、本気で信用してるかどうかと言えば難しいとしか言えないが。


「心配しないでよエルーザ。リアスくんは幼少期のトラウマで人が信用出来ないだけでしょ?」


 クレがそこまで言ったのか?

 だったら信用してもいいのだろうか?


『リアス、彼に貴方の過去を話しましたが信用はしないでくださいね。どうやら転生者の一人になってしまったようですので』


「て、転生者!?」


 は?

 精霊が転生者!?

 いやアンドレアさんの様に獣人に転生してる例もあるからあり得ない話でもないか。

 

「ククク、面白いでしょ?日本人の記憶が私にはあるわけよ。そしてその主人公の名前はブルーム・バンブリー」


「ブルーム・バンブリー。戦争中立委員会の狂犬のことか」


「さすが皇帝だねエルーザ。そして私は彼女と知己にある」


「ブルーム・バンブリーと。そもそもあんたは何者なんだ。それにさっきのヒャルハッハへの援助を許可するって」


「ブルームは少なくとも君には手を出さない自信がある。それは君に会って確信した。そしてデラちゃんは私が止めておくよ」


「デラちゃんって誰やねん」


「アハハハ!ごめんね。デラス・ベルモンの事さ。水神がそう呼んでたからついね」


「信用していいのかクレ?」


 俺は初対面で信用できるほどお人好しな性格じゃない。

 いくら警戒心を多少緩ませようとそこは変わらないな。


「少なくとも私は神話級の精霊全員を相手にしたって負けないからね」


『リアス、彼が本気で暴れ回ればリサナを装備した貴方と互角と言っていいです』


「は!?」


『驚くのも無理ありません。しかし彼は精霊の頂点ですからね』


 マジかよ。

 <狂戦士の襟巻き>の効力を使って互角ってことはとんでもないぞ!?

 要するに俺の最大限の切り札を使っても勝てるかどうかどっこいって。


「まぁね!でもひとつ勘違いしないで欲しいことがあるんだけど、今の神話級の精霊と契約してる人達はみんなそのレベルの実力を有してるからね?」


 この事はさすがのクレも驚きを隠せていなかった。

 そりゃそうだ。

 正直負ける奴なんかいないと思ってたのに、神話級の精霊契約者はそれだけ潜在能力が高いなんてな。

 こちとら魔力のアドバンテージくらいしか長所がない。

 

「一つ聞きたい。エイン様、貴方は我々の味方なのか?それとも------」


 陛下のその問いは最もだ。

 ここで神話級の精霊と争うなんて、しかも<狂戦士の襟巻き>をつけて互角と言う事は、護りながら闘う事になれば負ける。


「どうかしらね。少なくともクレが気に入ってる彼には興味があるから、今は彼の味方よ。私は転生者に分類されるけど、天神としての記憶のが長い。人格自体はエインとしての私が勝るもの。それにリアスの作る魔道具も面白そうね」


「そうか。それは良かった」


「でもこの国の為に尽くすつもりはないわ。彼の味方であってこの国に対しては敵ではないくらいでみていて欲しい」


『貴方はまたそう脅して。天神と聞いても物応じてないエルーザやジノアを気に入ってるのでしょう?』


「えぇ、それに私達と敵対することも辞さないと言うその根性は歓待に値する」


「まぁそう言う事なら陛下の許可も得たし、領地に戻って出陣の準備でもするかな」


「まだ私は許可を出してないぞ?大体お前の口から精霊と話せることや転生についてを聞きたいんだ!」


 えぇ、ここでそう言うこと言います?

 今いい感じにまとまったと思ったのに。

 そういえばアデルさんこれだけの騒ぎがあったのに遅いな。


「おい!リアス聞いている------」


『ヤバい、ヤバいにゃリアス!』


「どうしたクロウ?」


 クロウがアルターニアの膝で大人しく寝てると思ったら急に暴れ始めた。


『ご主人様が、ご主人様の魔力がほぼ尽きかけてるにゃ!』


「アデルさんの!?」


「どうした?アデルがどうかしたのか?クロウの奴が暴れてると言う事は何かを伝えてるのか!教えてくれリアス!」


 そう陛下が言った瞬間、天井が落ちてくる。

 マジかよ。

 ここで増援?

 そこから降ってきた人物は思いもよらない二人だった。


「ハハッ!アデル宰相の次は皇帝エルーザ、付いてんなぁ!」


「ふふっ、それに忌々しい鷲掴みの君主とやらも居ますわね」


 現れたのはアルバートの乳兄弟であるガーデルと、入学式の日にアルザーノ魔術学園を退学にされたエルニカと言う女生徒だ。


「ガラン殿下は救出したんだ、あとは俺達の好きにしていいって事だ!」


「神話級の精霊はわたくしが貰い受けますわぁ!」


「コイツら・・・」


 しかし腑に落ちない事がある。

 コイツらの言動が正しければ、コイツらはアデルさんを倒したことになる。

 アデルさんの実力は正直よくわからないが精霊との絆は確かなものだ。

 自由意志が奪われてないんだからな。

 だとしたら何故?

 拳銃を使ってガーデルが暴れてると言う報告を騎士がしていた。

 とはいえ拳銃でアデルさんがどうにかできても、精霊は黙ってないだろう。

 しかしその答えはすぐにわかることになる。



 ガーデル達がリアス達のところに着いた頃、血だらけになって横たわる人の男の姿があった。

 帝国の知将と謳われる宰相アデルだ。

 彼はガーデルの奇襲を受け、文字通り何をすることもできずに横たわっていた。

 その横で彼と一時契約を結んでいる幽霊タイプの風の下級精霊のウィンがいる。

 アデルは幼い頃に神童と呼ばれ、どんな魔法で使うことができた。

 それは彼が精霊の愛子で、どんな精霊も彼を気に入り、一時的に契約を結ぶことができたからだった。

 

「しかし・・・あの小僧、あれはヒャルハッハのアマゾネスの武器・・・何故あい・・ガハッ」


 脳天にこそ撃たれなかったものの、彼は最早虫の息も同然にまで疲弊している。

 それは胸に3発の弾丸を植え付けられ、両肺が破裂していると言うものだった。

 不幸中の幸いは心臓に当たらなかった事だろう。

 心臓に当たれば2分と待たず死に至るのだ。

 しかしこのまま治療を受けなければ、どのみち死に至るのも時間の問題だった。


『大丈夫か!?大丈夫かぁ!?』


 涙を浮かべながらアデルの事を励ますウィン。

 彼のその姿にいよいよ自身の死を直感する。

 ガーデルがアデルの前に現れたのは今から数分前の事。


「久しいなぁ!宰相アドゥエル!」


「おかしいですね。私は貴方と最後に会ったのがそれほど昔ではないはずなのに、貴方はかつてのガーデルにはとても見えませんね」


 乳兄弟と宰相。

 幼い頃から彼の姿を見てきたアデルにとって、これ程の変貌は予想外だった。

 それは口調もそうだが、顔面左半分に先帝ゼラルの様な刺青を入れていた。

 さらに髪の色も白に変わり、言われなければガーデルだと気付かないほど目つきが変わっていたのだ。

 悪い方向に。


「俺は生まれ変わった!良いだろ、これ?俺はテメェら殺す為に生まれ変わった!」


「やめておきなさい。貴方は本来牢屋にいなければいけない身。拘束させてもらいますよ?ウィン!」


 クロウ以外の契約精霊はその日限りの契約であり、クロウを使いに出した今の契約する精霊がウィンだった。

 下級精霊であってもその魔法は強力であり、ウィンドカッターを前方へと解き放つ。

 ガーデルも即座にシールドを展開したが、ウィンドカッターは大きく軌道を変えて、ガーデルの横を過ぎ去った。


「どこを狙ってる?」


「気づかないから君は、乳兄弟にも関わらず処罰されたのだ!」


 次の瞬間宮殿を支える柱が倒れ込んだ。

 そして同時に柱が支えていた天井が降り注ぐ。

 アデルの思い描いていた理想の拘束手段。

 最悪死亡しても問題ないとやったのだ。

 しかしそれはアデルにとって最悪の結末に変わる。


「いってぇなぁ!」


「馬鹿な!?」


 ガーデルは頭から降り注いだ天井に直撃したにも関わらず無傷だった。

 出血すらしていないのはありえないはずだった。

 しかしそんなこと考えてる余裕もなく、ガーデルは拳銃をアデルに向けている。


「てめぇはパルバディの死に様を見せてやろうと思ったが、俺を怒らせやがった!俺に痛い思いをさせて良いのはゼラル陛下だけなんだよぉ!」


 その瞬間拳銃が発砲される。

 アデルもシールドを展開する。

 しかしシールドが展開されたにも関わらずに貫通する威力を持つこの魔道具にはなんの意味もなさなかった。

 胸から激しい熱が発すると共に、口から血が流れる。


「目にも止まらぬ速度、黒光りする飛び道具。なるほど、それは拳銃か」


「へぇ、流石は宰相、詳しいな!」


「これでも、伊達に知将とは、呼ばれてはいませんよ?」


 アデルは魔法を行使しようとするが、ウィンがその場で腹を抱えて蹲っていることに気付く。

 銃弾が当たってしまった可能性があった。

 そしてガーデルがもう一度発砲すれば、また当たってしまう可能性があると悟る。


「まぁそれも今日で最後だ。死んどけ」


 発砲音は計9発。

 胸部に3発、2発は外れ、4発は足に直撃した。


「ガラン様は救出しましたわ。あら?生かして捉えるのではなかったのでしたの?」


「いや?気に障ったから殺した」


「まぁいいですわ。陛下は、皇帝エルーザさえ生かしておけばあとは好きにして良いと言っていましたもの」


「最後に頭を打ち抜くか?いや、必要もねぇか」


 溢れる血液が、彼の生命活動の終わりを意味し、ガーデルは満足してその場を後にし、そして今に至る。


「はぁ、はぁ、拳銃がこれほどとは。何故、ガーデルが?」


 アデルは薄れゆく意識の中で、一つの過程を生み出し、出血のショックで意識を手放した。

リアス「物語が動いたな。しかし濃密な夏休みだった」

イルミナ「まぁそれがリアス様らしいじゃないですか?」

ミライ「リアス君はトラブルメーカーだしね」

リアス「失礼すぎんだろ!ムードメーカーの間違いだ」

クレ『それと間違える人が婚約者になる人だと言う事を忘れていませんかね?』

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