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わずか数分で陥落する国と、危機的状況の対処(後半:???視点)

 蹂躙劇と言うには些か甘いものがあるだろう。

 地獄絵図と言った方が差し支えない。

 死屍累々とした風景を王国や帝国の一般人が見れば卒倒するか、恐怖で壊れるかの二択となるだろう。


「手応えがねぇな!実にねぇぜ!」


 デュラハンのクビナシは先ほどまで持っていた剣を鞘に収め、棍棒で人間達を次々と吹き飛ばしてる。

 もちろん吹き飛ばされた人間は全員、おかしな方向に身体が曲がっていて、宙に吹っ飛んでから落ちて倒れる間に絶命している。

 そしてエンペラーリッチによる魔法が発動し、アンデッドとなり更に国民達を襲う。

 

「辞めろ!お前、こんなことして、バルベーコンさんが黙ってないぞ!」


「あぁ?誰だバルベーコンって?」


「貴様、バルベーコンさんを知らないなんて、なんで不敬------」


 クビナシに無謀にも反論しようとした男は、クビナシが軽く投げつけた棍棒で頭が吹っ飛ぶ。

 首だけになった身体は幸か不幸か、少しだけ丈夫だった為に少しだけ動いたが、すぐに倒れ込む。


「あぁよぇえ!弱すぎるぜ!弱者にはなんもねぇんだよ!ハッハッハッ!」


 クビナシは次々と国民を殺して回る。

 一方死神であるドラゾンもまたクビナシとやってることは同じだったが、ターゲット層が違った。

 若いカップルや新婚夫婦など、幸せ絶頂期の様な人物達を狙っていた。

 ドラゾンを側から見れば、幸せな人間の命をどうしてもこうも簡単に奪えるのかと言うだろう。

 しかし彼はそんなことは気にしない。

 何故なら------


「命を狩る事に、躊躇いはない!」


 それが彼の座右の銘である。

 命は狩る以上狩られる覚悟を持たなければならない。

 隙を見せて仕舞えば、自分が寝首をかかれる可能性があるのだ。


「この!よくも妻をぉぉ!」


「逃走を選択しなかった貴様の責任だ!」


 そう言って目の前の新婚の旦那の首を刈り取る。

 その首が転がった先には、既にアンデッドとなった妻の姿がある。

 その妻は旦那の身体を捕食した。

 アンデッドは魔力で生命活動を行う。

 しかしアンデッドは本能で人間を食そうとするのだ。

 そして捕食された人間はアンデッドになることはない。


「哀れだな」


 億分の確率ではあるが、アンデッドがリッチとして自我が芽生えて、再び夫婦として過ごせる可能性もあったのだ。

 しかしそれも自らの手でなくしてしまう。

 それがドラゾンに取ってはまさしく果実の様な甘美なものだった。


「全く、悪趣味ね」


「ピールこそ、主君の命令は死者を増やすことだぞ?」


「あんたらと違って食料が必要なのよ」


 ヴァンパイアのピールはそこまで人を殺してない。

 それには理由がある。

 ヴァンパイアは他のアンデッドと違って、生きた人間の血を飲まないといけなかった。

 それは血液を摂取しないと正気が保てなくなると言う、種族上の性質だった。

 だから国民を捕まえてある程度満腹になってから生捕にしている。

 縄で縛って引きずっていた。

 ピールが殺したのは最初に血を吸いすぎた人物と、生捕で引きずってる間にショック死した人間だけだった。


「ダ、ダズゲデ」


「あら、生意気にも口を聞けるのね。その邪魔な歯は要らないわね」


 何度も何度もハイヒールで口元を蹴りつけるピール。

 蹴り付けられた男の歯はほとんどがボロボロだ。

 しばらく痙攣したかと思うと、その男は生き絶えた。

 そしてアンデッドとして生まれ変わる。

 先ほどまでの歯の損傷は消えない。

 アンデッドになる前の傷は治らないのだ。

 その光景を見て、他の捕まってる者達は生きてるだけまだマシだと、ピールに逆らう気力すら無くしていた。


「悪趣味なやつだ」


「生きる為よ?どうせ人間を養殖しないといけないのだから別にいいでしょう?」


「確かに主君の恩恵に縋れないアンデッドも出てくる。必要経費ってところか」


「そういうこと」


 アンデッド達はエンペラーリッチの恩恵で食生活を免除されているが、本来はアンデッド達も食事を必要とする。

 人間と同じ様に。

 ただ捕食対象が魔物や動物では無く人間。

 それだけの話だった。


「しかしこれだけ弱いと歯応えがない」


「男って変なこと気にすんのよね。強さなんてどうでもいいわ。個人的には新入りがこの国の代表を殺す大役を得たのが羨ましいわ」


「ほぅ。では失敗したら、その大役に名乗り出ても良いかもしれんな」


「馬鹿ね。皇帝の配下ならたとえ末端でもありえないわよ」


「クックック!逃げ帰ってきたならの話だ」


 ドラゾンはそう言うが、ピールの言う通りありえなかった。

 何故ならもうバルベーコンの周りには、リッチ以外誰も立ってはいなかったのだから。


「ジーン!貴様どういうことだ!?」


「ジーン?ヨクワカラナイ。アルジのメイレイ。オマエコロス」


「まさかアンデッドに!?ジーンまでもが毒牙に!」


 聖騎士であるジーンはこの国でも最強の存在。

 そんな人間ですらアンデッドになってしまった。

 その事実にバルベーコンは戦慄する。

 

「アァアァガァア!」


「殺された者たちがアンデッドになっている。まさか国民が死んだらアンデッドになると言うのか!?そんなまさか!?」


 バルベーコンは甘い見積もりをしていたと言わざる得ない。

 この国には人口が増えすぎていた。

 食糧難であり、間引く必要があったのだ。

 その為に多少の犠牲を払って勝利し、外交諸国に国民の団結力を示すつもりでいた。

 アンデッドを舐めていたのだ。

 これだけ無尽蔵に敵が増えていくのであれば勝ち目はない。

 バルベーコンは切り札を使って逃走しようとしていた。

 Sランクの魔物を殺すことの可能な魔道具を持っていたのだ。


「喰らえ!」


 その魔道具は衝撃を受けると起動するタイプの魔道具だった。

 作成者はヒャルハッハ王国のレアンドロで、その威力は最上級魔法にも匹敵するとされている。

 バルベーコンはその魔道具をアマゾネスのドゥーナから最初の担保としてそれを受け取っていた。

 だからこその強気であったのだ。

 誤算があるとすれば、その魔道具ですらリッチとなったジーンには関係なかったことだろう。

 激しい


「バカな!?まさか不良品をつかまされた!?」


 そんなことはなかった。

 確かにジーンの身体半身はなくなっているのだ。

 問題はそこでは無く、エンペラーリッチを殺さない限り、彼女の配下は死なないことだろう。

 バルベーコンは後ずさる。


「肉体が再生してる!?こ、この化け物!」


 それがバルベーコンの最後の言葉になる。


「シネ」


 剣が振り下ろされた。

 バルベーコンの首は宙をまう。

 少しだけ意識が残っている。

 最期にジーンを見つめる。

 彼のことは幼い頃から可愛がっていた。

 そんな彼がアンデッドになり自身にとどめを指す。

 これが悪いことをした末路だと、バルベーコンは思ったまま逝く。


「ニンムカンリョウ」


 バルベーコンの髪を引っ張りあげ、そのまま主人の元に向かう。

 道中、攻撃を仕掛けてきた国民がいた為、自衛で30人ほど殺害する。

 その時彼は、リッチからハイリッチへと進化した。


「進化シタ?コレデ皇帝ノ役ニ立テル」


 ハイリッチはエンペラーリッチの元に向かい名付けをしてもらうことで、新たに力を得る事になる。

 この時ジーンとしての記憶が頭の中に流れてきたが、ハイリッチはあまり深くは考えることはなかった。

 バグバッド共和国はリアス達の奮戦虚しく、僅か数分で地獄と化した。



 ボルカニックマグマ。

 最上級魔法で、火属性の魔力の塊のような魔法ダ。

 永遠の渇きが約束されたあれをどうにかしないといけない。

 それもこの身体だけでなく、周りのヒューマン全てを。

 しかし残念ながら自分の魔法知識では、この状態を対処するのは難しい。


「チッ!ざけんなよあのクソゾンビ!」


 これは肉体につられて叫ぶ。

 身体の所有権を奪うことができていない。

 出来ていればすぐにでも彼らを見捨てて離脱する。

 しかしそれだけの心の強さがあるからこそ、魂が発生したとも言える。

 

「チッ!どのみち俺はこの状況を、いつか追う事にはなりやがったんだろうな!」


 歴代で我に触れた者は何千と居た。

 そこには勇者もだ。

 にも関わらず我という魂が発生したのは、我のみだ。

 歴代で魂ができる魔力と、魂になりえる心を備え持つ者が居なかったのだ。

 

「こいつの心が壊れれば、俺の魂も砕けちまう!くそったれ!選択肢はこれしかないってわけか」


 我はうちなる心、即ち元の魂に一時的に肉体の主導権権を戻す。

 惑星魔法とやらは我には使えない。

 つまり魔法を打ち消すシーズプルートとやらが使えない。

 そして魔法が到達するまでもう時間もない。

 後10秒もしないうちに到達する!

 考えてる暇もない。


「意識を失ってくれるなよ!」


 我は肉体の主導権を本人に返した。

 ふらついているが、意識を手放さなかったようだ。


「あれ?俺は・・・ってボルカニックマグマ!?」


『リアス、話は後です!シーズプルートを使ってください』


「クレ!?あぁ、わかった!」


 風神は我の意図がわかっていたか。

 だとすれば上手いことやってくれることだろう。


「忘れらし王、シーズプルートッ!?出力が!やべぇ!?暴発する!」


『リアスが魔力の暴発!?ならば地面にそれを叩きつけなさい!』


 魔力の暴発はかなり大規模な威力にはなる。

 しかも暴発させたのがリアスという世界の魔力が集中したような人間で、複合魔法ともなるとその威力は計り知れない。

 これが普通の人間で、魔力調整のしてない魔法なら腕が痛む程度。

 逆に魔力を調節して傘増ししてる今の状態なら、腕が吹っ飛んでもおかしくはない。

 だが命さえあればなんとかなるだろう。

 聖獣に裏切られたとはいえ、聖女がいる。

 今も聖女の魔力はまだ聖属性が使えるようになっている。

 リアス・フォン・アルゴノートの記憶は憑依した時にある程度覗けたが、聖獣と契約した人間の魔力が聖属性になるってのは、こいつの友の契約聖獣達が言っていたが、破棄した時に戻るとは言っていなかった。

 

「くっ、ぐぁ!」


 腕こそ爆ぜなかったが、腕の皮が所々剥けて出血している。

 それでもまだだいぶマシだろう。

 しかしボルカニックマグマの脅威は収まっていない。

 シーズプルートを発動できればなんとかなるだろうが、風神は何か考えがあるようだ。


『ナイスですリアス!腕が痛いでしょうが仕事をしてください!倒れてるむっさんとサンドラ、アマゾネスをこの穴に放り込んで!』


「っ!あぁ!」


 なるほど、深さ的にも蒸し焼きになる可能性もある。

 しかしこいつには惑星魔法の一つ〝ビローウラヌスゼロ〝がある。

 ビローウラヌスゼロは、天王星とやらをイメージしているらしい。

 周囲の気温を強制的に氷点下に変える魔法。

 単騎で使えば自分自身や仲間を凍傷に変えてしまう諸刃の剣で、エンペラーリッチには使用していなかった。

 例え摂氏1000度を超えるボルカニックマグマ周辺の気温が高熱でも、一気に氷点下に変えてしまうのだから恐ろしい。

 最上級魔法と言っても過言ではないような魔法だが、これも複合魔法の組み合わせで、氷属性と風属性合わせ技だった。

 この魔法でもボルカニックマグマ自体を防ぐことは敵わないが、ボルカニックマグマとビローウラヌスゼロが温度を保ってくれて蒸し焼き状態を避けることができる。


『全員入れましたね。穴を塞ぎます。そのあとはリアス、頼みます』


「わかってる!ビローウラヌスゼロ」


 リアスが意識を取り戻してから、この穴に全員が落ちて風神が穴を閉じるまで10秒。

 ボルカニックマグマが地面に到達するのが9秒ほどだから本来なら間に合わなかったが、幸か不幸か暴発して穴が空いた事により時間が伸びた。

 風神の冷静な対処がなければ助かってなかった可能性が高い。


「これで蒸し焼きになる心配はないか。しかし記憶が混濁してる。確か俺は」


『狂戦士の襟巻きをつけました。さっきまで正気を失っていたのですよ?』


「じゃあなんで俺は今意識があるんだ?」


『それは本人に聞いてみればわかります』


 風神は真っ直ぐ我の方を見ていた。

 宿主と話し合う時がきたと言うことなのだろう。

リアス「これでプロローグにあった展開に戻るってわけだ」

ミライ「反撃開始ってところかな?でもおかしいね。フリマリがいるのに、なんでボク達は------」

イルミナ「ネタバレはよろしくありません。次回予告をしましょう」

リアス「次回予告あんまり上手くないからネタバレしちまうよ」

ミライ「ネタバレはよくないね。だからこういうんだ!次回もお楽しみに〜」

クレ『それじゃあ〆ですよ』

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