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ドラゴンvs惑星

「待ちな!」


「ん?」


 後ろから俺達を引き止める声。

 ドラゴン族のサンドラだ。

 そういやいないなと思ったけど。


「あんたら、今からわたしの村を滅ぼした奴のところに行くんだろ?」


「お前もう連れてけってことか?いいぞ?」


「そうよ!あんたらが嫌だって言っても------え?」


 今は少しでも戦力が欲しい。

 正直ジノアの言う通り、雑魚処理できる奴は必要なんだ。

 その点、サンドラは適任だ。

 ドラゴンである以上それなりに戦えるだろうし。


「え、いや、でも!」


「ついてくるんだろ?早く乗れよ」


「あ、ありがと」


「それじゃジノア達、行ってくるな」


「うん!がんばってリアス!」


 俺はジノア達に手を振り、自動輪のアクセルを踏み抜く。

 みるみるうちにジノア達の人影は見えなくなった。


「ジノアとアルターニア見えなくなったね」


「安心するのは早いぜ。多分1時間も経たないうちに戦闘が始まるだろうからな」


 正直サンドラの実力自体はまだわかんないんだよな。

 自動輪の補助装備でほとんど決着ついたし。

 Sランクの魔物に対処できるほど自動輪も強くはない。

 あんなの初見の攻撃だ。

 もちろん人間なら即死してもおかしくない電撃ではあったが。


「まさかサンドラも来てくれるとは思わなかったよー、それならボクはリアスくん達とリサナリッチの相手をしても良いかな?」


 確かに足止めくらいならサンドラでもなんとかなるだろう。

 流石にドラゴンなんだ。

 リサナに戦力を割きたいから俺としても可能性を増やせるのは嬉しい。


「リサナリッチ?とはいったいなに?もしかしてわたしの村を襲ったリサナってアンデッドのこと!?」


 俺はミラ達にアンドレアさんとの話を共有した。

 その時サンドラも近くにいたから、彼女の村を襲ったアンデッドの名前がリサナって事はわかってたんだろう。

 一緒に連れてって欲しいって言ってきた時に大方予想はしていたけどこれは------


「わたしはリサナってアンデッドを倒す!村のみんなの仇を討ちたい!」


「やめとけよ。自動輪程度にやられるお前じゃ、屍が増えるのが目に見える」


 俺達だって例外じゃないんだ。

 100匹のドラゴンを倒した後のリサナと言うアンデッドは確かに自我がなかったらしい。

 赤桐の名前を呼ぶだけのアンデッドだったと、アンドレアさんは言っていた。

 ただでさえそんなアンデッドに知性が生まれたんだ。

 勝てる要素があるようには見えない。


「それでも、わたしはお父さん達の、みんなの仇を討ちたいのよ!」


「お前の親がそれを望むのか?まぁ俺はサンドラの親に会ったことないからわからんけど」


 正直こればかりは家の教育方針や種族性にもよるだろう。

 人間の価値観で言えば、親が子どもが無謀な敵討ちをしようとすることなんてほとんど望まない。

 まぁ例え望んでいたとしても、死人に口なしだ。

 自分が満足するならそれでいいと思うが、知り合った以上サンドラにも死んで欲しくはない。

 人に、ましてや知人に死んでほしいなんて本気で願うなんて、相当恨まれてなければ有り得んだろ。


「みんなはきっと、ドラゴン族の誇りを取り戻す為に仇を討つことを願ってるわ!」


「無様に負けて死ぬことに誇りは保てるのか?」


「リアス様!」


 イルミナが口を挟む。

 あー、これは俺が言い過ぎたな。

 こういう言い過ぎの時は毎回イルミナが注意してくる。

 俺とミラが口喧嘩してる時だって、諭してくるのはイルミナだ。

 俺とミラの価値観は結構イルミナによって形成されてるところも多いな。


「悪い、言い過ぎた」


「えぇそうね!だからわたしは絶対にリサナリッチを倒してみせるわ」


「それとこれとは話が違う。正直言うとサンドラ、お前では実力不足だ」


「なんですって!?」


 純粋な戦闘能力なら俺達にも勝るとも劣らないだろう。

 だがこいつには根本的に欠けてるものがある。


「なぁサンドラ。お前は俺達と連携する気があるか?」


「連携?いいえ、あのアンデッドはわたしが倒す!確かにあなた達は強いわ。でもこれはわたしが一人で達成しないといけないの」


「やっぱりか」


 こいつには協調性が無いように見えた。

 いや、正確にはドラゴンは誇りを重視している種族だって本人が言っていたから一人で闘うだろうと予想してた。


「ジーン、少しだけ止まってもいいか?」


「急ぎたいのは山々だが、この状態でアンデッドの軍勢に近づくのも危険だな。わかった」


 俺は自動輪を一旦止める。

 正直時間は惜しい。

 けどこれはしこりになる。

 こうなることは予想してた上で乗せたんだ。

 予定通りではある。


「サンドラ。多分お前はあのアンデッドに手も足も出ない」


「そんなの、やってみないとわからないわ!」


「そうだな。確かにわからない。実際俺もそのアンデッドの実力を見たわけじゃ無いからな」


「だったら!」


「しかし情報通りならこの場にいる誰もが、あのアンデッドに単独で勝つことは出来ないだろうな」


 最悪の事態を考えてない。

 いや、待てよ?

 流石にそんな馬鹿か?

 もしかしたらこいつは------


「お前・・・」


「だったら、わたしがあなた達全員を倒せたら、単独で挑むことを許してよ!実力を見る為に止まったんでしょ!」


 いやそれはそうなんだが、ドラゴンは知性のある動物だ。

 更に加えてこいつだけは、あのリサナリッチの姿を見てる。

 それも近しい者たちが殺されるって言う認めたく無い現実を見ている。

 つまりこいつが一番敵の強さを理解してるはずなんだ。

 恐らく俺の考えが正しければ------


「確かに貴様は某と同じSランクの魔物。しかし思い上がりも甚だしいな。単独でこのメンツに勝とうなどと」


「でもそれが出来たら認めてくれるんでしょ!」


「貴様の伸びた鼻先をへし折るのも強者の務め!リアス、某がこの闘いは引き受けよう」


「落ち着けよむっさん。サンドラ、お前の考えはなんとなく読めた」


 サンドラの表情はあまり良く無い。

 つまり俺の予想は半ば的中したって事だよな。


「それを踏まえた上で、俺が一人で相手してやる」


「リアス!」


「むっさん」


 俺はむっさんの耳元でサンドラの考えを予測して伝えた。

 むっさんは怪訝そうな顔をしてサンドラを睨むが、それ以上は何も言わずに一歩後ろに下がった。


「貴方もチグハグした化け物。貴方だって放っておけばリサナリッチの様になる可能性はある。わたしとしても願ったりの相手よ」


「そうか?俺はSランクの魔物を相手させられて最悪の気分だ」


 正確にはサンドラ自身の考えが最悪な気分にさせている。


「覚悟はいい------な!?」


「はぁぁ!」


 いきなり伸びた爪でど突いてくるサンドラ。

 ドラゴンの爪に刺されたらしまいには死ぬぞ。

 まぁ先手必勝は悪くない手ではある。


「接近戦か!やるな、動きが追いつかん」


「そう言いながら全部避けやがってよく言うわ!貴方の魔法は拘束要素が強い!しかしそれは一定範囲と見てるわ!つまりこうして近づいていれば、少なくとも動きを制限する魔法は使えない」


「あぁ」


 ムカつくが対策を講じてる。

 こんな近距離じゃ範囲で指定してるイカロスマーキュリーはグラビティアースは使えない。

 さらに近接戦を選んだ事で、忘れられし王シーズプルートも封じられてるようなもんだ。

 いや逆にこれは近接戦のみに持ってくことに成功したとみよう。


「だったらあんたの近接戦闘は見ていた感じは大したことはない!わたしの勝ちよ!」


「そうやって皮肉を吐いて俺を怒らせようとしてる。お前の目的はやはり」


「喰らいなさい!龍帝空波!」


 拳からエネルギーが集約して------!?

 俺は咄嗟に避けたが、余波が頬をかすり火傷を負った。

 ビームに近いその攻撃の熱エネルギーは凄まじい。

 直撃はヤバかったな。

 シールドで防げる感じじゃなかった。

 魔法じゃないのか?

 

「二発っ目!」


 二発目!?

 さっき避けて耐性が崩れてる。

 こりゃ避け切れないか。


「美の女神プリンセスヴィーナス」


「え?」


 俺の顔面に来るはずだった龍帝空波とやらは、俺の目の前で逸れていく。

 そのあとは多分普通に元の方向にいっただろうな。

 プリンセスヴィーナスは光と氷属性の魔法の組み合わせ。

 あまり使われない属性の魔法だ。

 聖属性の存在するこの世界での光魔法は、目眩しくらいしか取り柄がないと思われがちだ。

 しかしそうじゃない。

 光属性は、全ての物質に光属性を組み合わせることができた。

 それを氷属性と組み合わせることにより、光の特徴の屈折が作用して俺の目の前から逸れたのだ。

 もちろん攻撃自体の威力が落ちるわけじゃないし、場合によっては光属性の特徴の速さが組み合わさって恐ろしい速度になる。

 まぁそれを味方の攻撃に付与すれば恐ろしい速度にもなるんだがな。


「なに今の?」


「解説してやる義務はない」


 この光にする魔法は肉体にも付与できる。

 だからこうやって俺自身に光属性に変えることも可能だ可能だ。

 もちろんこの世界にも作用反作用の法則があるから、光の速さで動いらその分の反動が来て肉体へのダメージもでかいが。

 まぁ俺は動く気はさらさら無い。

 

「だったら倒してから聞------く!?」


 俺に殴りかかったつもりだろうが、あいつの拳は止まっていた俺の目の前通り過ぎて空を切った。

 空振りだ。

 そしてその隙を見逃すわけもない。

 俺はサンドラを軽く距離を取る。

 殴るつもりでからぶった攻撃の時ほど、切り返しというのはすぐにはできないものだ。


「しまった!?」


 あっさりと距離を取られて慌てるサンドラだったがもう遅い。


「終わりだ。グラビティアース」


 エンドマにかけたものよりも更に強い重力をサンドラにかけた。

 何せドラゴンだからな。

 サンドラは地面に倒れ伏した。


「ぐっ、これが、グラビティアース!?」


「立ち上がれるか?立ち上がらなきゃ、お前の負けだ」


 今サンドラにかかってる重力は、大型トラックを抱えてるのと同じくらいだ。

 それでも身体が潰れないのはさすがドラゴンって感じだな。

 

「ぐぁぁぁ!まだ終わってないわ!」


「立ち上がんなよ。更に重力をかけないといけなくなるだろ」


 更に重力を上げる。

 それでもまだ立ち上がろうとするサンドラに、驚かされた。


「ウォォォォォ!!たぁぁ!」


「サンドラが抜け出した!」


「リアス!」


 ミラとむっさんが俺を心配そうに見るが、加減が難しいんだ。

 だから仕方ない。


「母なる星に最も近い存在。アナザーマーズ」


「知るかぁぁ!」


 アナザーマーズ、これは影と炎の組み合わせ。

 蜃気楼を作り出し、相手の分身を生み出す魔法。

 俺の足元から、サンドラと同じ姿の影分身が現れる。

 そしてサンドラの腹部を蹴り飛ばした。


「ガッ!なに、これ?」


「ナニ、コレ?」


 復唱してしまうのは、俺のイメージした魔法が完全なコピー体をイメージしちゃったからだ。

 あいつの影があいつに対して氾濫してる。

 そんなイメージなわけで。


「イカロスマーキュリー」


「ほわっ!?いやでも、これは!」


 重いので耐えられたなら逆に軽くすればいい。

 しかし相手は空を飛べる存在。

 寧ろ重力を減らすのはメリットでしかなく、動きが俊敏になった。


「わたし自身を生み出したみたいだけど、こんな紛い物!」


 アナザーマーズがサンドラの攻撃によって胴体が切り裂かれた。

 おいおい、それは流石に不用心過ぎるだろ。


「これで終わらせてあげる!」


「残念ながら終わってるんだ」


「は、え?あれ?身体が?」


 アナザーマーズの真骨頂は実は分身を生み出す事の先にある。

 分身に攻撃が当たった。

 自身の影が傷ついたのだ。

 影が傷ついてると言うことは当然本体にも傷がつく。

 

「う、あ?一体なにを?」


「アナザーマーズは消費魔力が多いから気持ち悪くなるんだ。使ってやったことを喜んどけ」


 サンドラはその場に胸を押さえ込んで倒れた。

 押さえ込んでいる部位は、サンドラが分身を切り裂いた部位。

 まぁ痛みがあるだけで、実際に傷はついてないけどな。


「サンドラ、お前の負けだ」


「わたしはまだ、負けてない!」


「負けだよ。なぁ、サンドラ。お前さ、敵討ちなんてどうでもいいだろ?」


 サンドラの表情は驚いた様子で、そして青い顔をして俯いた。

 逆に俺達側に驚いてる様子のやつはいない。

 そらは側から見てもこいつが敵討ちなんかじゃない一つの目的が見えていたからだ。


「お前は敵討ちがしたいんじゃなく、死にたいんだろ?」


「なんで、わかった?」


 やっぱりそうか。

 サンドラはそこまで馬鹿じゃない。

 一人で勝てないことが分かっているのに一人で挑むのは自殺行為。

 つまり自殺したかったんだ。


「理由はなんだ?村の人間が全員死んだからか?」


「うるさい!」


「贖罪か?一人だけ逃げたもんな」


「うるさい!」


「闘って誇りを取り戻したいとかか?そうなら虚しいもんだ。絶対に取り戻せないからな」


「うるさあああああああい!」


 サンドラは動けない身体を無理矢理動かして胸を叩く。

 サンドラの瞳からは涙があふれ出てきた。


「何故泣く。泣けばなんとかなると思ってるのか?」


「わたしには、帰る場所がない!もう、村はないの!故郷はなくなったのよ!」


 正直死にたい理由なんてそんなことだろうと思った。

 よっぽどじゃなければ死にたいなんて思わないからだ。

 でも実際死にたい人間は、本当は心のどこかで生きることを望んでる。 

 つらい気持ちに向き合うのは苦しい事だからな。

 死んだ方が楽だろうさ。


「子離れする時期が少し早かった、親たちが死ぬのが少し早まった。そう思え」


「簡単に言うな!」


「ここにいるのは、親を亡くしたり元からいなかったり恵まれなかったりした奴らばかりだぜ?でも死にに行こうとはしていない」


 それほど今の生活が苦しいわけじゃないからな。

 少なくとも死の怖さよりは、今の生活の苦しさは上回ったりはしない。


「なぁ、帰るところがないなら、俺達と来い。帝国の俺の屋敷に連れてってやる」


「え?」


「Sランクの魔物がむっさん以外にも何人もいるんだ。それにお前は昔の家族を思い出す暇なんて与えない」


 俺とミラは慎ましく平穏に暮らし、他の奴らに面倒ごとを押しつけてやる腹づもりだ。

 だからサンドラもこき使ってやる。


「なんか最後閉まらない言葉を言ったねリアスくん」


「リアス様は基本的に酷いお人ですから。まぁそれでもいい人なんですけどね」


「そうだね。でもリアスくんの意見には賛成だよ。もし帰るところがないならボク達と行こう。もちろん君の家族の仇はボク達で獲るから安心して」


 酷い言われようだ。

 けど、サンドラはどうやら納得してくれたみたいだ。

 顔を見ればわかる。


「ふふっ、ははは!そうか、わたしは死にたかったんじゃなくて、居場所がほしかったんだな」


「独りは誰だって寂しいもんだ。お前の実力じゃリサナリッチには恐らく勝てない。だから俺達と連携してくれ」


「そうね。それが勝利へと繋がるのなら、わたしとしても是非はないわ。改めて協力させてくれチグハグくん」


「チグハグ?」


「未だに君は悍ましいほどチグハグしてるけど、君の人柄は気に入った。だからわたしは君に、リアスに協力する。家族の仇をここにいるみんなで討とう。そして勝とう。生きてみんなで戻れるように」


「はっ、もちろんだ」


 俺とサンドラはがっしりと手を握りしめ合った。

 この時の俺達は知らない。

 生きてみんなで戻る。

 それが適わない願いだと言うことに。

リアス「不穏な最後だったぞ!?」

ミライ「ネタバレになるから余計なことは口走らないでね」

イルミナ「それにしても、リアス様の惑星魔法は素晴らしいものがありましたね」

リアス「あぁ、だろ!他にもまだ惑星魔法はあってだな!」

クレ『はいはい。それは次回以降のお楽しみにとっておきましょうねー』

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