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プロローグ

 瓦礫散らばる街。

 そこはつい数時間前は人でごった返していた。

 今もその光景に変わりは無い。

 違うとすればそれはただひとつ。


「こっちからもアンデッドが来たぞ!!」


「うぁあああああああ!く、来るなぁ!」


 死人の数が、生者の数を大きく上回っている事だろう。

 街の建物のほとんどは半壊している。

 そして何より国の人口の1/3がアンデッドへと変貌を遂げていた。


「子供はやめて!ねぇ、あなたぁあ!」


「おかーさ・・・」


「アガっ!」


 父親だったアンデッドは容赦なく子供の首筋に噛み付く。

 噛まれた瞬間は痛みで泣き喚いていたが、しばらく痙攣し、やがて動かなくなる。

 子供を失ったショックか、夫だった者に子供が殺されたことがショックで、妻は放心状態。

 その状態をアンデッドが見逃す訳もなく、飲み込まれる。

 阿鼻叫喚。

 まさにそれに相応しい光景だ。

 

「どうしてだ!アンナぁあ!」


「あガァアあァァアあ」


 アンデッドは次々と生者を殺していき、死者はアンデッドへと変わっていく。

 愛する者に殺される者。

 長年連れ添った友に殺される者。

 近所で遊んでいた子供に殺される者。

 大切な人、顔見知り、そんなの関係なしに次々と死者になっていく。

 死者のみの魔物大量発生(スタンピード)、そう言えば誰もが納得するだろう。

 本来であればこんなハイペースでアンデッドが増えることはない。

 しかしそれを可能にしている者がここにいた。


「ふふっ!面白いわぁ!老若男女誰彼構わず死者へと変わっていく♡」


 エンペラーリッチの少女。

 彼女の生前の名前は、リサナだった。

 しかしその彼女はもういない。

 彼女の記憶がある別人格のリッチだった。

 そして記憶情報を探り、死体をアンデッドはと変える死霊魔法を生み出した。


「くそぉおお!」


「またニック!危険だ!」


「あら、やっと私が操ってるってわかったのね。でも残念。デスストリーク」


 デスストリークは幻惑魔法の最上級魔法。

 相手の魂を破壊する魔法。

 これは生者を生きたまま殺すことが出来る魔法なのだ。

 この魔法は強力でシールド魔法が効かない。

 シールドはあくまで魔法の物理ダメージを防ぐもので、魂への干渉までは防ぐことができない。


「生きたまま殺せるのは便利よね。生きた魂のない器は、それはそれで面白いのよね」


「あぁぁ、ニック!」


「ここにハエの魂を入れたら・・・ふふっ!」


 ハエの魂が入れられた街の人間は、近くの死体に噛みついて漁る。

 ハエとしての行動をする人間を最早人間と呼べるのかはわからない。

 

「所詮雑魚の器には羽虫くらいがちょうどいいわ」


「くそぉぉぉぉ!ニックゥゥゥゥ!」


「アァアアアアア」


「うぁぁあ!?」


「良い悲鳴だわぁ」

 

 生きた人間が人間をまるごと食べた時の致死率はほぼ100%

 つまりこのハエ人間も死亡が確定する。

 これだけむごたらしい事をしても、面白いとしか感じないエンペラーリッチには、もはや人の心は残ってないだろう。

 ここはバグバッド共和国。

 小さいながらも国民で支え合ってきた国・・・だった。

 今や国の人口は1/3も無くなり、更にその被害は続くことだろう。

 それでもまだこの国が陥落していなかったのは、他の国とは違い互いに庇いあいながら逃げていることだろう。

 もし我先にと逃げ出す者がいれば、もう陥落していてもおかしくない。


「んー、人って普通他人を蹴落としても生きようとするものと思ったけど、さっきの奴らといいそうでもないのね」


 エンペラーリッチはそれが不思議で不思議でならなかった。

 リサナの記憶を介しても、互いに手を取り合うのは極少数。

 それは魔族ですら味方同士で足を引っ張ることも多かったのだから当然だ。


「まぁ雑魚が集まったところで雑魚なのだけどね」


「そうですねご主人様」


 そんなエンペラーリッチの肩には、一匹の白い竜がいる。

 この白い竜は当然ドラゴン族ではない。

 聖獣だ。


「貴方も大概酷いわよね」


()が良いと言ってください」


「そうね。そういう事にしておくわ」


 聖獣を撫でながら皮肉げにそう言う。

 聖獣を撫でていると、エンペラーリッチの前に人影が現れる。


「皇帝、大統領ノ首ヲ獲ッテキマシタ・・・次ハ誰ヲ始末シマスカ?」


 フードで顔が少しだけ隠れているリッチだった。

 エンペラーリッチは彼に任務を与えていた。

 バグバッドのトップの頭を取ってこいと。


「あら、おかえりなさい」


 バグバッド共和国大統領、バルベーコンもまたエンペラーリッチの魔の手からは逃れることができず、彼女の部下のリッチによって亡骸とされてしまった。

 この国には現在4体のアンデッドの上位互換が暴れている。

 首のない魔物でSランクの魔物にも設定されているデュラハン。

 彼の生前はデザートオルキヌスで、デュラハンへと進化を遂げたことで人型になっている。

 馬に乗りながら武器の巨大な棍棒を振るう。


「はっ!手応えがねぇ!実にねぇぜ!」


 魂わかる鎌を持つ魔物で、同じくSランクの魔物に設定されている死神。

 彼の生前はドラゴンだった。

 肉体的に強いのに、更に進化した事により魂を切ることの出来る鎌を生成できる様になった為、その実力は折り紙付だ。


「命を刈り取ることに、躊躇いはない!」


 Aランクに設定されているが知能が高く、ヴァンパイアの種族が爪を隠していた為の設定で、他のSランクの魔物の様にスキルを手に入れているヴァンパイア。

 彼女の生前はバグバッド共和国の国民。

 その為にヴァンパイアの特徴である白い肌ではなく、褐色の肌をしている。


「生きた血液は極上なの。他の奴らが狩り過ぎてないといいのだけれど・・・」


 そして目の前のリッチ。

 他の三匹と違い、リッチにだけ名前はなかった。

 エンペラーリッチの様に生前の記憶情報が残っていない為、実力共に最弱なので名付けを放置されていた。


「哀れなものね。守るべき者が守られるべき者に殺されるなんて」


「・・・?」


 その声は誰に向かって言ったのかわからない。

 しかしそれはリッチには何故か皮肉めいて聞こえた。


「さっきの男女グループも強かったから、臣下にしたかったのだけどね。消し炭になってしまったから仕方ないわ。デスストリークを弾くなんて思わなかったわね。最初に殺していたあなただけが、私の手駒になったわね」


「ハッ、アリガタキ幸セニゴザイマス」


「ふふっ」


 バグバッド共和国に攻め込む前、アンデッドの侵攻を止めようと飛び出してくるこの国の者じゃない人間達。

 彼らはエンペラーリッチの実力がわかっていながらも立ち向かい善戦した。

 ボロボロになりながらもエンペラーリッチに噛みついた者達がいた。

 エンペラーリッチと彼らの戦いは三日三晩続いた。

 その三日三晩の戦闘もこの国が陥落してない要因の一つだ。

 しかし彼らとアンデッドであるエンペラーリッチでは体力の差がある。

 それこそ死んで魔力だけで動いてるエンペラーリッチは死ぬまで体力切れを起こさない。

 その為、一瞬だけ隙を作ってしまう。

 いやそれは必然的にできた隙だろう。

 一人の命が散り、残りの人間達も一度崩れた戦況を戻す力もなく、彼女の最上級魔法ボルカニックマグマによって飲み込まれてしまった。

 ボルカニックマグマに人の身で呑まれてしまえば、生き残ることはないだろう。

 目の前のリッチとなった彼は、最上級魔法を使う前にエンペラーリッチの足が目の前にいる彼の生前の身体を貫き殺した。

 その為、リッチの胸はぽっかりと穴が空いている。


「大統領も死んだし、他の官僚もみんなアンデッドになった。あとは国民すべてを殺せば、晴れてアンデッドの王国の完成ね」


「仰ルトオリニゴザイマス」


「ふふふ。そうだわ、貴方に名前をつけましょう。そうねー」


 リサナの記憶を探り、赤桐渉が現代について話したのを思い出す


「貴方はアラジン。アラジンでどうかしら?」


「皇帝カラ名前ヲ頂ケルナンテ光栄ノ極ミ」


 名付けに満足したエンペラーリッチは、ニコニコと歩みを進めていく。

 そしてエンペラーリッチとアラジンは、大統領の間へと訪れる。

 そこに大きな玉座を魔法で作成し、席に着いて肘を突く。

 

「さて、聖女も優秀な戦士も官僚も消えたこの国は、一体いつまで保つのかしら?」


「時間ノ問題カト」


「わかってるわよ。あんたもがんばりなさいな。私と同じ系統のリッチなのだからね。リッチナイトになって私を守るのよ」


「仰セノ通リニ」


 英雄も聖女も救世主も何もかも失ったバグバッド共和国。

 今、ひとつの国が地図から消えようとしていた。


「新しい死者の国の名前は何がいいかしら?」


「皇帝ノ考エタモノナラ、民タチハ従イマス」


「そうね。死者の国だし、オブディランドってのはどうかしら?」


 Of the land、死者の国の英語名であるオブザランドを変換した国名だけの名前だったが、アラジンは黙って頷いた。


「ふふっ、決まり------ンゴっ!」


「趣味の悪い名前だな」


 次の瞬間、エンペラーリッチは玉座から吹き飛んでいく。

 壁に叩きつけられたエンペラーリッチはまるで、何も効いていないぞと不敵に笑う。


「うふふ、生き残ってたのね。まさか最上級魔法を回避するなんて」


「爪が甘いんだよ」


「それにしては服がはだけてるし、出血もすごいみたいだけど?」


「擦り傷だこの程度!ぺっ!」


 口から血溜まりを吐きながらを去勢を張るその男はリアス・フォン・アルゴノート。

 先程まで三日三晩の戦闘を繰り返し、善戦したが敗北した少年。

 最上級魔法すら物ともしないその実力は、エンペラーリッチをして驚きを隠さなかった。

 しかしその身体はボロボロで最早満身創痍とも言えた。

 それでもリアスは倒れない。

 今までのリアスとは、その姿を見れば違うことが一目瞭然だからだ。


「ふふっ、そう。そんな貴方に残念なお知らせよ。私達はリッチに進化した段階である程度物理攻撃に耐性ができるの。けど私はある程度じゃなかったわ」


「あぁ、わかってる。けど俺達ならそれくらい乗り越えられんだよ」


「だね。一度くらいボク達を負かしたからって、調子に乗るなよババァ」


「ですね。年増はどうにも若輩に対してマウントを取りたがります」


 そしてリアスの後ろから服のはだけてる二人の女性が姿を表す。

 ミライとイルミナだった。

 二人の言葉を聞いて、もう血流は通ってないと言うのに、額には青筋が浮き立っている。

 ババァや年増という言葉にキレているのだ。


「面白いわ。アラジン、彼等も同胞にするわよ。手伝いなさい」


「カシコマリマシタ」


 リッチは深々と頭を下げると、腰に据えてある剣を抜刀した。


「お前もさっさと解放してやる。短い付き合いだが、お前は悪い奴じゃないだろうからな」


「ホザクナニンゲン」


 そしてこの二組が激突し、決着がつく頃にはバグバッド共和国の行く末も決まる。

 バグバッドの行く末に、一部バグバッド関係者じゃない者が絡んだ事で後に色々なきっかけを生む事になる。

リアス「新章入って最初がこれ!?きちぃわ!」

ミライ「ボクもこの光景が最初に入った時吐きかけた。考えて欲しい」

イルミナ「本当にイカれた人は酷い事をします」

リアス「道徳って授業がどれだけ大切かよくわかるな」

ミライ「さて、新章に入ったので、ボクのあんなシーンやこんなシーンも期待して欲しいね!」

クレ『結構需要少ないかと』

ミライ「ひどーい!そんな事ないよねリアスくん?」

リアス「あぁそうだぞ!でも俺が嫌だからやめような?」

ミライ「むっ、リアスくんがそういうなら」

クレ『うまく誤魔化しましたね』

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