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怪物の正体と襲撃者

 あれからフクロウのおっさんとの会話が続いてる。

 この話の中でわかったことといえば、フクロウのおっさんが元勇者って事と、これまでの闘いの経緯の裏にかつての赤桐の敵ポリ・ランドールが背後にいるってこと。

 そしてそいつは魔力を求めてクレを狙ってくるから迎え打たないといけないこと。

 この村には転生者がいて、そいつの転生特典が転生者の前世の名前がわかるのは俺としても聞きたいことがあるから会ってみたい。

 俺はクソ親父に死ぬ前に殴られた影響か自分の記憶が一部欠落してる。

 そしてそれは前世の名前と同様だ。


「一つ聞きたいが、あんたはどうして俺達に情報を分けてくれるんだ?赤桐を倒した礼だけとはとても思えない」


「それは思った。聞いてた話だとアンドレアさんの前世は魔王赤桐と敵対してたぽいし、まぁ敵を倒した礼と言われたらそれまでだけど、勇者アランに洗脳されていたことを憂いているように見えました」


 ジノアの言う通りおっさんは洗脳に思うところがあったように見える。

 まるで赤桐に同情してるような発言も見えた。

 だとすれば結果的に俺が赤桐を殺した事は、こいつにとってはいい事でないようにも思えた。


「流石は第三皇子。帝国で最も皇帝に相応しいとされる叡智を持つ男じゃな」


「御冗談を間違えてばかりだよ僕は」


「ふぉっふぉっふぉ!その歳で間違えない奴がいるなら見てみたい。まぁ主は皇帝になりたくないようだからこれ以上は言わんでおこう。そしてリアスの質問じゃが、本当に礼だ」


 フクロウのおっさんの言葉は、どこか哀しみが含まれてるような口調だ。

 やはり赤桐に対して同情しているんだろう。


「ワシは彼を救ってやれんかった。彼を救うにはもう殺すしかない。これ以上彼を苦しめたくなかった。今この世界には彼の最愛の人が変わり果てた姿で前世では考えられんことをしているからじゃ」


「変わり果てた姿?」


「サンドラの村を襲ったアンデッドはリサナじゃ。ワシが千里眼で確認したから間違いない」


 赤桐の最愛の人リサナ。

 ドラゴンの村を壊滅にした以上、それなりの人物がアンデッドになってるとは予想してたがまさかな。

 

「赤桐がもし主らに殺されてなかったら、おそらくリサナをもう一度その手で殺していただろう。奴は暴君だなんだと呼ばれても、根は優しい奴じゃ」


 根は優しいか。

 確かに赤桐が本気で俺達を害そうとしていたなら、もっとやれる方法はあっただろう。

 転生特典の所為で自殺も手加減も許されていないから、殺しにきてたのは事実だ。

 けれどあいつが死ぬ時の顔は清々しいくらいホッとしていた。

 アンドレアが言うような実力者なら、俺達は今ここに生きて立ってはいなかっただろう。


「赤桐の心情を考えたら多分殺すだろう。けれどそこには葛藤があるはずだ」


「アンデッドは死体から生まれる魔物だよ?それはもうリサナという人物じゃないのに?」


「ジノア、もしアルターニアが死んでアンデッドになっていたらどうだ?」


「それは・・・」


「アンデッドから人間に戻す方法を考える。しかしジノアの言った通りアンデッドは魔物で生前の人物ではない」


「つまり、殺すしかなくなる」


「人間は一度希望を見出すと縋りたくなる。それでも戻す方法がないなら殺すしかないのじゃ。一度自らの手で殺めた人間が動いていたら希望は生まれる」


 人間はそれほど感情を上手く制御できない。

 一度希望抱いてからリサナを殺せばおそらく赤桐の心は保たなかっただろう。


「やっぱりあんたは洗脳されていた事で赤桐が壮絶な人生を送ったことを後悔しているんだな」


「後悔する資格がワシにあると思うか?ワシが何故記憶を持っているか想像すればわかるじゃろ」


「・・・そうだな」


 おそらく勇者アランによって洗脳を受けていたのなら、記憶が存在しないはずだ。

 赤桐とリサナの最期の別れを考えればすぐに予想はつく。

 つまりフクロウのおっさんの前世である勇者千鶴は、自分の意思でアランについていたんだ。

 だとすれば後悔する事自体烏滸がましい。

 アランを止めていればよかったんだからな。


「話してくれたのは贖罪か?それとも今度は俺達にリサナの皮を被ったアンデッドを討伐してくれって言う条件か?」


「お主はワシの転生特典があっても疑り深いな。リサナのアンデッドはワシが責任を持って処理する。安心してくれ。じゃがまぁ主の言う通り情報を渡したのはこちらも打算はあった」


「ポリ・ランドールを確実に殺す、または封印する為か?」


「そうじゃ。ワシは魔族に生まれ変わって初めて、魔族はヒトと対して変わらないことを知った。アランの下に居た時も、その後転生した時も、魔族は悪だと思っていたんじゃ。日本で言うところの、庶民からみた政治家みたいなもんじゃよ」


 多分これはフクロウのおっさんに限った話じゃないよな。

 人間は知的生命体である以上、自分の世界の視野で物事を図る。

 立場が違えば捉え方も何もかも違うんだ。

 

「なるほど。たしかに人の正義ってのは別の人間からみたら悪になる」


「そうじゃ。そしてワシは望んで魔族を滅ぼすことに加担した」


「だからせめてもの免罪符で、ポリ・ランドールを止めるってことか?」


「ポリ・ランドールがやろうとしていることは、世界の乗っ取りじゃ。神話級の精霊の力をすべて手に入れようとしてるのはそういうことなのじゃ。主の言うとおり免罪符かもしれん。しかし奴は仮にも神話級の精霊を弱体化しているとはいえ二体も殺した。それは間違いない」


「どういうことだ。正直あんたが言ってることがちぐはぐすぎて訳がわからない。正体がわからないのに、ポリ・ランドールがやったことがなんでわかる?」


「顔は仮面を付けていたのじゃ。だから奴が何者なのかわからない。転移を使っているからワシの千里眼じゃどの国に行ったかまではわからぬ。しかし奴は確実に転生者だった。見たことのない技を使っておったからの」


「それがどうしてポリ・ランドールだとわかる」


「ポリ・ランドール以外の転生者の前世の名前が6人はわかっているからじゃ」


 月の数は9つ。

 つまり8人の転生者がいるはずだ。

 その中でポリ・ランドールを含めなければあと7人いる。


「じゃあわからないんじゃないか?ポリ・ランドールの他にももう一人わかってない奴がいるんだろ?」


「そうじゃ。それが主じゃよ。主の前世の名前が、主の口から語られたことがなかったからわからんかった。しかし主はポリ・ランドールにはどうしても見えなかった。主はポリ・ランドールにしてはあまりにも精神が出来上がっていない」


 俺の名前か!

 いや考えてみれば俺は転生前の名前を覚えていないんだ。

 そりゃわかるはずもないわけだ。

 俺は転生者とは言っていたが、前世の名前は一度も口にしていない。


「俺は前世の名前を覚えていないんだ。死因が原因だろうけどな」


「ふむ。そういうケースは初めてじゃ。理由はようわからん。しかし主が転生者で消去法で判明していない転生者がポリ・ランドールただひとりとなる。じゃから神話級の精霊を殺したのがポリ・ランドールだとわかったのじゃ」


 ポリ・ランドールの正体がわからない背景にはそういうことがあったんだな。

 だけど、ポリ・ランドールがやっていることがどこから王国の再建だというのが来たんだ?


「なんでアンドレアさんはポリ・ランドールの目的がわかったのですか?」


 ジノアが俺の代わりに質問してくれた。

 実際に追うことが適わないのなら目的を判断するのは難しいだろう。


「すまん。それはワシの言い方が悪かったがあくまで予想じゃ」


「予想って事は、狙いはクレセントだけじゃない可能性もあるということか?」


「そうじゃのむっさん。お前さん達を発生させたことも考えると、ウーウィー王国の再建だけが目的じゃないかもしれぬ」


 おっさん予測で判断の物事を語るなよ。

 そうであると過程した話をするなら、過程にしたと付け足さないとダメだろ。


「しかし十中八九そうじゃろよ。奴の愛国心は転生者だというのに異常じゃ」


「もしウーウィー王国の崩壊による世界への報復とかだったらどうするんだ」


「そ、それは・・・」


 ため息しか吐かない。

 こいつの情報はたしかに正しいのかもしれない。

 でもこいつの言うことすべてが正しいかどうかは見直した方が良いのかも知れない。

 魔族についても死んで魔族に転生してやっとわかったことといい、思い込みの激しい性格の可能性が高いだろう。


「はぁ、めんどくせぇ」


「リアス。オブラートに包んで」


「ジノアだってそう思っただろ?顔に出てるぞ」


「某は奴から情報をもらったら、あとはこちらで情報をまとめた方が良いと思うぞ」


「むっさんにさんせー。てかなんでフクロウのおっさ------アンドレアさんは自分でポリ・ランドールを討とうとしないんだ?ドラゴン村を壊滅させたリサナをどうにかできるなら、ポリ・ランドールもどうにかできるだろ?」


 ポリ・ランドールのが百歩強いとしても、リサナすらどうこうできない俺達に頼むのは理解ができない。

 正直囮になってくれと言われた方が納得出来る。

 ていうかそう言うことを期待してる節がありそうだ。 

 いや、そんな頭はないか。


「リサナを止める方法はある。しかしそれを実行するだけでワシは恐らく無力化してしまう。だから主等にポリ・ランドールをどうにかしてもらうしかない」


「無力化してしまうってその止める方法が上手くいかなかった場合はどうすんだ!」


「それは主に託す」


 はぁ!?

 なんで俺がそんなことしないといけないんだよ!

 

「おい、あん------」


 抗議をアンドレアにぶつけようとしたところで、外から爆発音がしたことで俺は口を閉ざさるを得ない。


「なんだ?」


「外からじゃ!一体何事じゃ!?」


 俺達は急いで外に飛び出す。

 するとツリーハウスの至る所から火の手が上がっていた。

 これはどう見ても襲撃だ。

 魔物か?

 その俺の疑問はすぐに解決する。


「ハッハッハ!アンドレア!貴様が私よりもヒューマンを優先したことでこの村は滅ぶ!ハッハッハァ!」


「ゴーシュ・・・」


「長耳のおっさんの仕業か」


「リアス、どうする?」


「俺達の目的はアンドレアのおっさんの息子が作るワクチンだ。どうにかするべきだろ・・・」


 しかし俺は少しだけ言いよどんでしまった。

 俺は外に出た瞬間冷や汗がダラダラ出てきている。

 ジノアは気づいていないが、むっさんは目が鋭くある一点を見ていた。


『リアス。一人ヤバイのが居ます』


「わかってる!」


「ここからでもよくわかる。一人だけ威圧がここまで来ているのだからな」


「まさか・・・エンドマを投入したのか・・・ゴーシュ!!」


 精々数十人だと侮った。

 この世界はたった一人の戦力で戦局が覆る世界だという事を忘れていた。

 俺達はかつて無い相手と敵対しようとしていた。



 場所は変わり、街のど真ん中。

 リアス達が爆発音を聞く数分前の出来事だ。

 髪の毛が上に逆立ち、白髪に赤のメッシュが入った男が棍棒をくるくると回していた。

 その姿はまるで薄鬼の如く、鮮麗された肉体は闇夜の月明かりに照らされて際立っている。

 その顔は何処かで見たような顔をしていたのだ。


「はぁ、叔父とは言えオレっちをこき使うとは良い度胸してやがるよな」


「エンドマ様。ゴーシュ殿も本気でヒューマンに戦争を消しかける気なのです。ヒューマンは卑劣な一族です。我々魔族をこの森へと追いやったのですよ」


「あーあー、何度も聞いたよ。マジめんどくせぇよ。オレっちとしちゃあ強い奴と殺し合えればそれでいい。幸いこの村には今魔力量がヤバイ奴が一人いるぜ。あいつを殺せばオレっちにも泊が付くだろ」


「ほどほどにどうぞ。ゴーシュ様からは多少粗っぽくはするが、同士であるため人を殺めてはいけないと言われております」


「へぇ、そりゃ残念だ。まぁ向こうがオレっちを殺しに来たなら話はちげぇーだろ?」


 エンドマはエルフ族の中でも屈指の戦闘狂であり、同族であるエルフからも畏れられている男だった。


「その場合はエンドマ様の匙加減に任せるそうです」


「さすが叔父さんだなぁ。オレっちはそんな叔父さんが大好きだ」


 棍棒をガンガンと地面に叩き付け、今か今かと戦闘が始まるのを待っている。

 最早彼に目的など無く、闘えること自体に喜びを抱いている。


「ドラゴンを殺したとか言うアンデッド。あいつとも殺し合いてぇなぁ」


「ご冗談を。貴方様を失うわけにはいきません」


「オレっちが負けるとでも?」


「勝ち負けではありません。そんなことで消耗するのは勿体ないと言ったのです。ヒューマンには爆炎のレアンドロが居ますから」


「あぁ、オレっちもあいつと殺し合うのは楽しみだ」


 レアンドロに対抗出来る戦力とされるエンドマは、エルフの村でも重宝されている。

 そんなエンドマがクリムゾンボロウニアまで来ていると言うことは、ゴーシュ率いるエルフの本気度が窺えた。

 レアンドロに対抗出来る戦力があるというのに、クリムゾンボロウニアにこだわる理由がある。

 ヒューマンに喧嘩を売るにはエンドマだけでは足りないのだ。

 そこでヒューマンをよく思って居ないドラゴンを味方に付けようとしていたゴーシュだったが、そんな矢先でドラゴン達が滅ぼされてしまった。

 つまり魔族の最強戦力はもうここにいるエンドマを覗くと、クリムゾンボロウニアの村長アンドレアくらいしかいないのだ。


「アンドレアと殺し合うのも楽しみにしてたのになぁ」


「ドラゴンが滅んだ以上、貴重な戦力です。そこは我慢していただく他ありません」


「わかってんよ。まぁオレっちに手を出してきたら殺し合うけどな」


「彼の御方がそのような愚行に走るとは思えません」


 エンドマとアンドレアの実力はエンドマの方が勝っている。

 つまり闘えばエンドマにアンドレアは勝てないのだ。

 そのことをエルフ達も知っている為、クリムゾンボロウニアへと攻撃を仕掛ける準備をしていた。


「エンドマ様。ゴーシュ様から攻撃を仕掛けるように指示がありました」


「やっとか!ぶっぱなしていいんだよな!」


「手加減はしてください」


「しゃらくせぇ!ファイアマグナム!」


 両手を開くと、小さな炎の弾が発生する。

 ファイアマグナムはエンドマの固有魔法で、小さな炎を飛ばす魔法。

 そしてその炎が物体にぶつかると爆発が起きる。

 至る所に炎が飛んだため、ツリーハウスのあちこちから火の手が巻き起こった。


「何事だ!?」


「エルフだ!エルフが攻めてきた!」


「非戦闘員は避難だ!男共は反撃するぞぉ!」


 ぞろぞろと武器を持って出てくる獣人達。

 彼らは家族を守るために、その手に武器を持った。

 しかし想いだけでは、力には適わない。


「こいつら、殺して良いんだよな?」


「構いません。礎になっていただきましょう」


「っしゃぁあ!オラァあ!」


 エンドマが棍棒を振り回し、獣人の一人の顔面を思いきり吹き飛ばした。

 吹き飛ばされた男は痙攣しながら地面に叩き付けられる。

 顔面からはドバドバと血が流れている。


「いいねこの感触。オレっちは人をぶっ飛ばすのも大好きなんだ」


「あれはエルフの狂犬エンドマ!」


「エンドマだ!エンドマが出たぞ!できる限りに遠くに逃げろぉ!」


「逃げる奴らに手は出さねぇって。まぁてめぇらは別だがな!」


 そして次々とエンドマは敵を吹き飛ばしていく。

 気がつけば辺り一面血飛沫が飛んでいる。

 幸いと言うべきか、不幸と言うべきか、顔面を砕かれた獣人の男達は全員生きていた。


「これは一体・・・」


「ミライ様、アルターニア様お下がりください」


 そしてエンドマとミライ達が会合を果たしてしまう。

 しかしミライは驚いていた。

 その顔に見覚えがあったからだ。


「リアス・・・くん?」


 エンドマの顔は、リアスにそっくりだったのだ。

リアス「おい、誰だあんな危ない奴投入したの」

ミライ「馬鹿な人でしょ。でもあの顔・・・」

イルミナ「リアス様に関係ある何かでしょうね」

クレ『誰であろうと関係ありません。ミライ、懲らしめてやりなさい』

リアス「どっかのおっさんだな。イルミナさんやっておしまい!」

イルミナ「なんですかそれ・・・」

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