メリーさんの正しい撃退方法
以前似たようなのを書いたけど中身は全然違います(笑)
「もしもし、私メリーさん。今あなたの住む町に着いたわ」
アパートの自室に居る俺の携帯に知らない番号から電話が掛かってきた。
メリーと名乗る女の子からだ。
名前と居場所を言って一方的に切られた携帯を見詰めながら深い溜め息を吐く。
「5時か…」
携帯の時間を見て呟いた俺はトイレに行ってから用を済ませておく。
少しして再び携帯電話が鳴り出す。
「もしもし、私メリーさん。今あなたの住むアパートの前に居るの」
予想しているよりも早く来た電話に焦ること無く準備をしていく。
ベットの上に座り手の届く範囲にまだ読んでない漫画を積み上げ飲み物を用意する。
「うし、後はこれだな」
そう言って手の汚れないお菓子を夕飯代わりに多目に置いて準備は整った。
そして、携帯電話が鳴り出す。
「もしもし、私メリーさん。今あなたの部屋の前に居るの」
ベットに完全に上がり壁に背中を預けて入り口を向いた俺は横に積み上げた100冊を超えるあの漫画の1巻に手を伸ばした…
「本当、この頃の中川は無茶苦茶だよな~ハハッ」
漫画を読みながら笑う俺の横で携帯電話が鳴り出す。
漫画を読みながらお菓子を食べるのに手が空かないからスピーカーにして通話を開始した。
「もしもし、私メリーさん。今隣の部屋に居るの」
そう、俺は彼女の事を知っている…
徐々に近付いてきて最後は背後に現れて相手を殺す女の子の姿をした悪魔だ。
だがそのメリーさんのルールは『対象の背後に現れてその手で殺す』なのだ。
即ち、背中を壁にくっ付けておけば彼女が現れるのは俺の背後…
つまり隣の部屋なのだ。
「ねぇ…貴方少し移動しなさいよ」
「嫌だね、俺らこれからこの漫画を全巻読破しないと駄目なんだ。邪魔しないでくれ」
これが彼女のルール、一度始まれば徐々に近付いて最後は対象の背後に現れて殺す…
そうしなければ彼女自身が自らの能力によって積むこととなるのだ。
今の彼女に出来ること、それは俺の背後に現れて俺を殺そうとする事だけなのだ。
「その漫画ってどのくらいあるの?」
「ざっと100冊以上、今夜は寝かせないぜ」
「えっ…ま、まぁいいわ。貴方がそこから背中を離した時が貴方の死ぬ時よ!」
「へぇへぇ、頑張ってな」
そう言って俺は通話を繋げたまま漫画を読み進める…
静かな夜に聞こえるのは漫画を読む俺の出す音と後ろの壁を引っ掻く音だけだ。
「あっそうだ、今な5時半なんだがな?」
「それがなんなのよ?」
「隣のヤツもうすぐ帰ってくると思うんだよな~」
「…………」
今メリーさんのターゲットは俺だ。
なので彼女は俺以外には危害を加えれない、それはつまり…
「それとな、隣のヤツ…ロリコンの変態だから頑張れよ~」
「へっ?!」
俺は2巻に手を伸ばした時に部屋の前を足音が通り過ぎていった。
そして聞こえる声…
『ムホー!幼女タンが拙者の部屋にウェルカムでゴザルー!』
「いやぁぁ?!何コイツ?!」
『ムハームハー怖がらなくても良いでゴザルよ、まずはこれにお着替えしましょうかぁ~』
「なんでスクール水着なんか部屋に在るのよ?!」
『ムハハハハハ!今夜はハッスルするでぇゴザルヨー!!ヒーハー!!!」
服を引き裂かれる音とメリーさんの叫び声が悲鳴が薄いアパートの聞こえ、俺は用意いていたヘッドホンを装着するのであった…
「んっ…疲れたぁ~」
ヘッドホンを取ると通話の途切れてない携帯からは何も聞こえなくなっており通話をそのまま終了する。
先程まで感じていた肩に乗っかる様な感覚が無くなっていたので背中を壁から離して立ち上がった。
「よし、解決だな」
こうして俺に突然襲い掛かったメリーさんは撃退された。
一体隣で何があってどうなったのかは分からないが翌日から携帯が鳴ることは無かった…
翌月…
再び携帯電話が鳴り出す…
「ん?この番号は…」
落ち着いて背中を壁にくっ付けて電話に出る。
「もしもし、私メリーさん。今、愛しのダーリンの隣に居るの」
完