2出会い
「転移完了します。」
着地した瞬間に足元が柔らかに少し沈む、年輪の幅が広い巨大な木目が見える床の上にはカワイイぬいぐるみ達が並べられている、積み木のお城が小さく建って、お城の上には滑り台が付いていた。
ぽかぽかと暖かい光が照らす子供部屋、初期の転移座標、合わせて考えると自分のための部屋という結論に辿り着く。
という事は、あの高度な学習は子供用で生体代謝年齢は低年齢を誰も100パーセント選ぶという事だろうか、理由は分からないが今はこのままの姿でいいかな。
「転移完了したよぉ~~ん。」
明るく元気な心地よい女性の声が聞こえた。
いつのまにか目の前に少女が現れていた、黒髪茶目、髪はポーニーテールで日本人顔の顔に味のある美少女、身長は150cmくらいかな桜色のカバの形をした服を着ている。
後ろから見るとお尻のふくらみが短いパンツからはみ出していた、靴下はモフモフのカバの足、二の腕には可愛いカバの手が装着されて胸も下と上からふくらみが見える。
美少女はポーカンと青年を見上げ、青年はもしかして母さんかな母さんにしては若すぎませんか?服装のカバが可愛くなって、もはや新種のカバにしか見えないんですが、と興味深く美少女をジロジロ見ていた。
「空君?」
不思議そうに顔を傾けて聞かれた。
「それが俺の名前ですか?だとしたら俺の名前は空です、あなたは俺の母さんですか?」
「そうだよー空君の母のすみれ、だよー」
元気一杯笑顔で言われた。
「ねえねえ良く大人の姿に成れたね、すごいねー、それから顔すごい変わっていて良いよー」
すみれさんは背伸びしながら空の顔を撫でている。
母の愛情表現として子供に対しては微笑ましいが、見た目は青年と美少女である、まして空はまだ心情として母と思えていない、そんな情態で可愛い美少女が背伸びしながら下から顔を撫でているのである。
感触が気持ちいい、甘い良い匂いがする、自分の顔が自然とだらしなくなりながら聞き逃せない単語が聞こえた。
「すごい変わってるって自信作の顔ですよ。」
「んー?褒めてるよ、今までの子供はみーんな美形すぎて個性がなかったんだけど、空はすごい個性的な顔してる~。」
満面の笑みで抱きついてくる柔らかい、思わず抱きしめ返す。 『小さくて、可愛い。』
つまり俺の元の顔が美形で無いゆえに褒められている、微妙だ、だが人生は常に自分の手の中にある手札だけで勝負する以上これは最大級の褒め言葉に違いない、そう考えると気分は良い。
「普通は大人の姿になれないんですか?」
「魂の記憶が育ってないからねー、分体の成長で情報を蓄積して、はじめて大人になれるんだよー」
胸元でカバがモフモフ喋ってる、くすぐったい。
魂を素材として組み込んだ仕組みを構築済みなのか。
「すみれ母さん、そろそろカバさんが苦しそうですよ。」
カバの顔が変顔になっていた。
「あっはははは、ほんとだ~可愛くなってるぅ~~。」
ますます体を押し付けてカバの変顔モニモニして変顔を量産していた。
「あっはははは、ははは。」
すみれさんは、しばらく悶えた後に手を繋いで話かけて来た。
「さあ私の部屋に行きましょう、瞬間移動家鍵の情報と家の間取り地図送るから最初は私がつれってってあげるね。」
分体を通して本体が記憶したようだ、なるほど地図が必要な訳だ家広すぎてパッと見ても良く分からないな、母さんの部屋だけでも目的別に寝室複数、本部屋複数、ゲーム部屋複数、アニメ部屋複数、ドラマ部屋複数、模型部屋複数、模型配置部屋複数、人形部屋複数、展示部屋複数、衣装部屋複数、トイレ複数、風呂複数、プール複数、などなど名称だけでは解らない部屋も複数種類。
手を繋いだまま転移した。
「転移完了したよぉ~~ん。」
先ほどよりも、ゆるく声が響く。
床はへこんだり、もり上っがたりして、ソファーの形やテーブルの形が床と一体化していた、徐々に形が形成されていてソファーの所は緩やかな滑り台だ。
部屋の大きさは20畳くらいだろうか、三方向の窓からは庭園が見え更に先には高い山が見える。
すみれさんが床と一体の滑り台を滑りだす、それを見てオズオズと自分も真似をして滑る、初めは緩やかで徐々に角度が深くなっていく背もたれの角度が80度の所でお尻が止まった。
すみれさんが右手の人差し指をテーブルに向けると、イルカの背がお皿になっている群れが現れ、次々にお菓子がお皿に着地した。
手を伸ばすと一匹のイルカがテープルを泳いでくる、戸惑っているとイルカが指に頬ずりしてくる、見た目は鮮やかな水色の陶器のようなのに柔らかい感触にまた戸惑う。
「可愛いでしょ~遠慮なくお菓子食べてね」
笑顔でクマのコップに飲み物を指から出しながら勧めてくる。
遠慮どころか、さっそく食べようとしていた、アレ?お皿って動いたっけ?
クマがトコトコ歩いてくる、うん可愛い、まあいいか、そいう物なんだろう。
イルカを一撫でしてからポリポリお菓子を食べる、うっま~なんだ此れ、甘すぎない素材の魅力を引き出した極上の甘味だ。
クマに手を伸ばすと、クマが手に抱きついてくる、確かに可愛い、透明な薄い桜色をした見た目はガラスっ風で感触は柔らかく指が表面に軽く沈む、不思議に思ってフニフニと弄るとクマの腕が持っている俺の指を掴む、小さな力で指をギュとされる感触と可愛い姿に思わず顔が笑顔になる、ふふふっ。
クマを傾けて飲む、うん水だ美味しいな、クマを置くと腕を回したりお尻をクネクネ揺らして踊る、可愛いダンスを見ていると。
すみれさんが俺の横に来た、目が合う、ニコニコ見ていた恥ずかしい。
頭の中で考える、技術が高度だ魂の事でも隠す事は出来ないだろうし、いろいろ話を聞いてみようかな。
「すみれ母さんは何歳なんですか?」
「私?私は20万歳くらいだよ~~若いでしょ~」
「わ、若い?」
「そっ今の最高年齢は50億歳、宇宙暦がはじまった頃から生きているから、空君私達は不死なんだよ。」
ちょと想像できない長さだ、自分は過去を含めても三桁も届いていない。
「実は俺転生しまして過去の記憶はありますが三桁も生きていませんでした。」
「ん?転生って何?」
「死んでから、また生まれることですね。」
「おーそれは、はじめて聞くね~死んだって事は自然脈だったの?」
すみれさんは顔がいきいきしている。
「いえ宇宙暦にすら入っていませんでした。」
「凄い古代だー来たよ私の時代ぃぃぃ~~」
すみれさんは立ち上がりガッツポーズをしている。
興奮していたすみれさんが落ち着いてから話は再開した。
「つまりね本体と分体が優秀すぎたの、将棋をすれば2~4手で決着がつき、囲碁をすれば4~16手で決着がつく、本を読めば100冊を一瞬で記憶できる、そこには記憶はあっても感情は伴わないの、人類は長い人生を得たわ、それが味気ない情報の羅列ではつまらない、そこで本体の分体を古代の体を模倣して性能を限定する事によって情緒の揺らぎを作り感情を楽しむ事が出来るようになったの、でも歴史が古すぎて古代の体は模倣が限界だったわ、そう空君が生まれるまでは、空君の魂の記憶のDNA情報を使えば完璧な古代の体が作れるの、だから嬉しくてね。」
「なるほど本体の性能を限定しているんですか?」
「うん、そうだよ本体は私空間そのものが本体、その中に人の形を作ることで本体の性能を意図的に限定しているんだよ。」
「1日1点しか作れないのに3万点もあったんですが、点数多くないですか?」
「それはね私空間の大きさが大人になる条件だから、うん大人になちゃうか、点数1万点使って私空間広げてみて。」
頷いて思考する、点数1万点使って私空間の『空間拡張、決定。』1万点消費。
「そうしたら次は広げた私空間に点数1万点使って星系作ってみて。」
えっ星系?と思うと目の前に星系の種類が並べられる、思い浮かべる意識から太陽系に近い星系が自動で選択された、違いは地球軌道上に惑星が2つ、前後にも2つ、計20個の地球型惑星が配置されていた。
この星系もしかして自分の物なのと思いつつ実行する、点数1万点使って私空間に『星系創造、決定。』1万点消費。
「出来たかな?」
唖然としつつ答える。
「出来ちゃいました。」
「おめでとう~、これで1日1点が生成されるよ、私空間は1点で全部変更可能だから好きな大陸の形を数個設置して好きな住人を配置するといいよ、私のお勧めは、この本のくノ一だよ~。」
本の情報を記憶した、なるほど記憶した内容も理解できる、ただの情報だけだとまったく感情が動かされない、1回分体で読めばくノ一の良さが解るはずだ、というか未来凄いな。
そうだ忘れない内に自分のDNAを送っとこう『すみれさんに情報送信、決定。』1点消費。
「すみれ母さん情報送信に点数を消費するんですか?」
「高度な情報密度の場合は送るにも受け取るにも点数は必要だね、DNA情報受けっ取ったよ~~。」
良っかた点数は貴重だから、ただの情報のやりとりだけで消費しなくて。
「空君、私はDNA情報でする事あるから移動するね、ここが空君の部屋だから移動して好きに弄っていいからねー」
すみれさんが転移していった。
俺も移動しよう、自分の部屋に転移開始『決定。』