プロローグ
百年前。
この世界は二人の人間によって、大きく揺れていた。
海と無数の陸地に分かれた世界。
一つの陸地で、彼らは戦っていた。
一人は、異形の姿をした〈モンスター〉を率いて、自分が暮らしやすい、自身のための世界を作ろうとした。
自分のためならば、人の命が消えようとも、その歩みを止めずに惨殺を繰り返す彼は〈魔王〉と恐れられた。
彼の過去は屍の道だった。
もう一人は、その男の蛮行を止めようと立ち上がり、戦うにつれて成長をしていく、未来を求める勇敢な少年だった。
か弱き少年が、頼もしい屈強な青年に成長し、いつしか彼は〈騎士〉と崇められた。
彼の後ろには支える人々で溢れていた。
初めは、〈魔王〉もか弱き少年を相手にしていなかったが、人々の希望として、いくども立ちはだかり、邪魔をされたことで、最大の障害と思うようになった。
互いが互いを倒すべき相手と認識した彼らは、遂に勝負をつけようとする。
その戦いは長きに渡り繰り広げられた。
時に山を削り、時に川を作り、時に大陸を作った。
世界の三割をも創り替えた戦いは――互いの命を奪うことで幕が落ちた。
いや。
正確には落とせなかった。
〈騎士〉と〈魔王〉。
二人の戦いは――今も、戦いは続いているのだから。