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目覚め

眠気があ…

ーーーーーーーーーー


ここは、何処だ?


俺は、何をして…?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


























俺の名はルシウス。


俺の容姿は黒髪に赤目だ。この容姿は


「世界の大罪人」と呼ばれる鬼神を模したような


縁起の悪い容姿らしい。


その昔、大精霊しか存在していなかった世界で、


大精霊達に対し、反乱をしかけ、世界を滅ぼそうとした大罪人のことだ。


そして鬼神は大精霊達によって封印されており、

またいつか目覚めるという。


そんな神話の時代の伝説がある。


そしてそんな話を4歳の頃に、俺の名付け親でもあるシスターに


「もしかしたら鬼神の生まれ変わりなのかもしれませんね」


なんて笑われながら言われた。


彼女はエルフと呼ばれる種族だ。青緑色のロングヘアをポニーテールにして結んでいる。色白ですごい美人だ。


この前何歳なのか聞いたら耳を思いっきり引っ張られた。


実の話、俺は彼女に惚れている…。だから年を機にするのは仕方ないのだ。


子供が何をと言うが、俺は本気でシスターと共にありたいと思う。それを直に言うとシスターは少し頬を赤らめながら


「15歳になったときまた同じ気持ちなら考えておきましょう」


とそう言われた。正直嬉しかった。


俺は周りよりも精神が成熟している気がする。


それをよくシスターに言われる。


子供らしくないのだ、と。


本当に鬼神の生まれ変わりなのかもしれないな、なんてのは冗談だ。





彼女はその知識量も凄まじい。孤児院の子供に

料理掃除洗濯、読み書きに、魔法まで教えている。


なんでも超人だ。


そして俺を唯一差別しないで普通に接してくれる人だ。




俺は今7歳。


生まれた時から孤児院にいて今に至る。


何でも孤児院の前に捨てられていたらしい。


まあそれもこんな容姿なら納得がいく。


だが不思議と親を恨む気持ちにはなれない。


何故ならこの孤児院のシスターであるユリィに出会えたから。










ーーーーーーーーーーーーーーーー







そして今日孤児院に新しい子供が来た。


そいつの名前はアイリス。黒髪に黒目の可憐な少女だった。


アイリスはユリィが盗賊団のアジトからただ1人の生き残りとして保護した。

盗賊団はユリィと憲兵達が壊滅させたらしい。


俺の人生で初めて俺以外に黒髪を持つものを見たからだ。


初めてそいつを見たときは、


美しい。


ただそう思った。

その大きな垂れた瞳も、光沢のある輝きを放つ黒髪も、着用している薄汚れた服とは裏腹にきめ細やかな綺麗な白い肌。


そのどれもが俺にとって新鮮であった。


また、場違いであるかのような一種の存在感を放っていた。




気にはなるけど話しかけるのが憚られるような感じがした。


話しかけようとすると心が脈打つのだ。


そんなことは今までで初めてだった。


シスターのユリィと話してもこうはならない。


だが近くに来られると少し同じようになって思わず顔を背けてしまう。


それをよく彼女は弄ぶのだが…。





そんな日々の中俺はあることに巻き込まれることになる。







基本的にこの孤児院と街の関係は良好だ。


シスターであるユリィが凄腕の魔法使いであるのと、


孤児院の子供達は街に手伝いや働きに毎日出ている。


俺は忌み子なので大人しくユリィと2人で赤ちゃんの世話や、孤児院の諸々を手伝う。


お陰でユリィといれる時間が長くなるので嬉しい。


忌み子も悪くない。



そんな冗談はさて置き、


最近加わったこのアイリスとかいう少女もみんなが街に出ている間、孤児院の手伝いをするようになったのだが、何ともどう接していいのかわからない。


彼女は常に無感情なようで喋ったところをあまり見たこともない。


事務的なことはユリィと話したりしているが、

それ以外には聞いたことがなかった。







そして俺は今ユリィに頼まれて、物置小屋にいる。


資材をアイリスと一緒に運んできてほしいそうだ。


しかし、その肝心のアイリスがどこにもいない。


洗濯物をやっていると聞いていたが、物干し場にもいなかったので、



今外に出て探している。


もしかしたら洗濯物を外に干しているかもしれないからだ。


すると孤児院の外壁の曲がり角から声がする。




「お前らみたいな呪われたやつはこの街から出てけ!

お前ら!やっちまえ!」




声のする方から石を壁に向かって投げつける音がする。


何だか胸騒ぎを感じて小走りになる。






そして曲がり角を曲がると数人の子供達が、1人の黒髪の女の子に向かって石を投げつけている様子がわかった。


アイリスだ。




アイリスは身を屈めて必死に何かを呟いている。




「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。何でもします。綺麗にしますから。殴らないでください。お願いします。」
























俺はその瞬間激しい憎悪とともに駆け出していた。




俺よりも大柄な男に石を思いっきりぶん投げてやった。




そして、その後続いて2人目を殴ると、何が起きているかわからないといった3人目の腹に蹴りを入れてから1人目が起き上がってきたので、もう一度今度は顔をぶん殴ってやった。4人目と5人目はガクガクと震えて地面に落ちる。


すると起き上がってきた2人目に後頭部を思いっきり意思で殴られた。

激痛が走る。

2人目の顔面をぶん殴るとそのままやつは気絶した。



「今度アイリスに手ェ出したらただじゃおかねえ!!

お前ら全員ぶっ殺してやる!」





そう言うと5人とも街の方へと駆け出していった。

気絶した2人目は抱えられていった。








暫くすると怒りが何とか収まったのでアイリスの方に向かっていった。


アイリスはひっ!と小さく悲鳴を上げたが、


俺に敵意はないと踏むとこちらを向いてくる。





「今度またあいつらになんかされたら俺に言え!

俺がまとめてぶっ飛ばしてやる!」



つい口をついて普段言わないようなことを、


でも何だか言わなきゃいけないようなことを言った。


前にもこんなことあったような…。まあいいか。



するとアイリスは俺を一瞥すると何も言わずに孤児院の方に駆け出していってしまった。



取り残された俺は少し呆然として、仕事を思い出して資材を運ぶことにした。






そしてその晩街の方からさっきのやつらとその親ともとれる人々がやってきて昼間のことを文句しだした。













ユリィは平謝りして俺に謝れと言ってくるが、

俺は謝る気にはなれなかった。


悪いことは何もしてないのだ。



しかし、とりあえず謝ると奴らはどっかへ消えた。





パチン!


瞬間頬を打たれた。


「あんなに他人を大怪我させてはいけません!

ルーシー、貴方は人よりも少しだけ強いのです。

それを自覚しなさい。

たとえ魔法が使えなくとも貴方には何かがあります。

だから、自分の力を見極めるまで他人を傷つけてはなりません。」


そう言われると俺は何だか悔しくなって



「だって!アイリスが虐められていたんだ!

俺はそれが許せなかった!どうして俺が怒られなきゃいけないんだ!」


何故だか涙が溢れてきた、


もしかしたら俺の人生初かもしれない。


するとユリィは



「でも女の子を守ったことはとっても偉いことです。

ごめんね。叩いたりして。これからは何かあった私に言いなさい。わかった?わかったならこっちに来なさい。」



そう言ってユリィは、泣いている俺を身を屈めて抱きながら慰めてくれた。





そらから幾らか泣いて疲れてしまった俺はそのままユリィの腕の中で寝てしまった。










そして起きると目の前にアイリスの顔があった。



「うわぁ!びっくりした!目の前にいるなよ!」


「ご、ごめんなさい。ただその気になって…私のせいでユリィさんに怒られてたから…。ごめんなさいって

言わなきゃって思って…。その、ごめんなさい…。」




「お、おう。まあいいけどさ、俺はアイリスが無事だったか凄く気になってたんだ。怪我は大丈夫なのか?」



「う、うん。大丈夫。でも手の甲にちょっと傷ができちゃって痛いな。でも大したことないから大丈夫だよ!その、ルシウスくんか来てくれたから…。でもその後、何も言わずに逃げちゃってごめんなさい。」



「いやそれはいいんだけどさ。にしても、そうか、

傷が…。」


その時ふとまたあの時の憎悪が沸々と蘇るような気がしたが、アイリスの声で我に帰る。



「い、いや本当に大丈夫だから!ルシウスくんは気にしないで。どうせすぐ治るだろうし…。わたし昔っからぶたれてもすぐ治っちゃうんだ。何でかわからないけど…。あ、ごめんね。気味悪かったよね、こんな話。」


彼女は存外饒舌のようだ。何だか今はここに来た時のような虚ろな目をあまりしていなかった。


「そんな自分を卑下すんなよ…。こっちが反応に困るだろ。それと俺のことルーシーと呼んでくれ。いちいち君づけで言われると何だかくすぐったいんだ。」




「そ、そうだね。じゃあルシウ…ルーシーまた後でね。」



そう言うとたたたっと彼女は駆けて行った。



何だか久しぶりというか初めてユリィ以外の人とまともに話した気がする。

俺は生まれた時から忌子だったから、孤児院でも気味悪がって俺に話しかける人間はユリィ以外いなかった。


だからなのか、普段ならアイリスに話しかけようとしても緊張するのに、話しかけられたら殆ど緊張することなく喋ることができた。


まあ少し鼓動は早くなっていたのだが…。


「食堂に向かうか。」


いつものように食堂に向かう。


するとアイリスが待っていたかのようにいつの間にか食堂の扉の前で立っていた。


「い、一緒にた、食べよ?あ、嫌だったらもう全然そんなことしないでいいんだけど…。そうだよね。こんな気味悪い子となんて…。」


「わあ!待て待て。1人で勝手に突っ走るな!

俺で良ければ幾らでも一緒に食べてやるから、な?

それと自分をそんな簡単に卑下するな。お前はその、

び、美人で凄く可愛いと思うぞ?うん。だから自信持てよ!」


ちょっと余計なこと言ったか?なんて思っていると、


「び、美人!?か、可愛い!?か、からかってるなら止めてよ…。わたしそんなこと言われたことないもん…。」



「はあ?周りがどうか知らないけど、俺はお前のこと可愛いと思うから安心しろ!それにほらその証拠に俺ちょっと心臓早くなってるだろ?お前が可愛いから緊張してこうなってるんだ。」


そう言って無理矢理アイリスの手を取って自らの心臓にその小さな手を置く。


ドクン。ドクン。


何時もより早く鐘が鳴る。そしてアイリスの手を取っているのと並行してさらに早鐘を打つ。



「わわ!ごめん!いつの間にか手を握ってた…。ごめん。気持ち悪いよな。」


そう言って手を離すと


何故だかアイリスは俺の心臓から手をどけようとしなかった。

俺の声が聞こえていないようだ。

そして顔を赤らめながら心なしか段々こちらに近づいてくるような気がする。

そして、お互いの距離が額と額がくっつきそうになる程近づくと、



「はいはい邪魔ですよー。熱々になるのもいいけど、朝っぱらからは止めてよね。ただでさえ寝起きで気分悪いのに、暑いったらありゃしない。さっさと行った行った!」



振り向くと赤毛の女の子が立っていた。外っ側に跳ねたウェーブと青いくりっとした目は意志の強さを感じさせる。

将来とんでもな美人になりだろうことは予想できる。

しかし近づき難い印象だ。

けれどそんな印象とは裏腹に小さい子達にも優しく姉御肌で、俺のことを対等に扱ってくれる2人のうちの1人だ。


彼女の名はミリス。俺と同い年だ。俺は大分こいつに救われている。

もしミリスがいなかったら今頃捻くれて世の中を恨んでいただろう。


「な、なんだよ。ミリス。別にいちゃついてなんかねえよ…。それよかほら、食堂行って飯食うぞ。」



そう言って俺たち3人は食堂に消えて行った。



この日からアイリスはいつも俺の周りをうろちょろするようになった。

正直気が気ではなかった。

そして気のせいかもしれないが時折俺のことをじっと見つめてくることがあるような気がする。

振り返るとアイリスがあたふたとする。

そんな可愛い姿を見ながら日々が過ぎていく。



ある日の夜、俺は寝つきが悪いので少し外へでも行って空気を吸ってこようかと思い寝室を後にする。

この孤児院は基本的に礼拝堂と呼ばれる大精霊を祀った場所と男女で分かれての寝室、食堂がある。

それなりに広いのだが寝室から外へ出るには必ず礼拝堂を通らなければならない。

廊下に出て礼拝堂に入ろうとすると、誰かのすすり泣く声が聞こえた。


すすり泣く声の方へ行くと、アイリスが膝を抱えながら部屋の角で蹲っていた。


アイリスの方へと向かった。


「どうしたんだ?アイリス。こんな時間にここにいちゃ風邪を引くだろう。今から毛布を取ってきてあげるから少し待っててくれ。」


そう言って踵を返そうとすると、リリスが服の裾をつかんできた。


「行かないで。お願い。少しでいいから一緒にそばにいてくれる?」


上気した顔と上目遣いで言われたら是非もない。


「勿論だ。」


俺はアイリスの隣に座る。





暫くするとアイリスが話しかけてきた。


「ねえ、ルーシー。私ね、魔法が使えないんだ。

この黒髪のせいなのかわからないけど、どうしても魔法が使えないの。それだから私は昔から虐められていたの。」


俺はアイリスの言葉を待つ。


「私、昔からこの黒髪のせいで災いを起こすんだって、村の人たちに言われていたの。

鬼神が乗り移ってるって。

でも、お母さんとお父さんはそんな私を受け入れて山の奥で家を建てて3人でひっそりと暮らしてた。

だけど、ある日家に怖い人たちがやってきてあっという間にお母さんとお父さんはその人たちに殺されちゃったの。

逃げてと何度も言われたけれど足が竦んで何もできなかった。

そのまま捕まっちゃって奴隷として盗賊の一団に売られた。5歳の時だった。

それからの2年間は最悪だった。

何かヘマをすると直ぐにぶたれるし、ふだれて落ちた血を頑張って自分の服でゴシゴシ拭いてた。

汚いことは何でもやった。あ、でもいやらしいことはまだ私が小さいからなのかされなかった。

でも他の大きくなった少女たちは皆イヤラシイことをされて犯されていた。

私もいつかああなるんだろうなって思って、

だけどそんな中ユリィさんが来て、あっという間にそれも終わった。迫害されることからこき使われることになって、、、

けれどそれが終わっても私の絶望は終わらなかった。

孤児院に来ても虐められる。そう思った。

案の定虐められた。知らない子達に悪魔だって言われて。

だけどそんなときルーシーが私を守ってくれた。

自分が傷つきながらも、絶望から私を守った。

私はそんなこと初めてだったから戸惑った。

けど、ルーシーは今迄の人とは違う雰囲気がした。

この人といてもいいんだって安心させてくれるみたいな。

だからねルーシー。わたしはあのとき貴方に救われたの。」

そう言って俺の目を真っ直ぐ見つめる。


「俺は…ただ、何かに駆られて動いただけだよ。別にあの時アイリスを守りたかったんじゃない、と思う。

別の何かに駆られて俺は咄嗟に動いていたんだ。

俺は別にアイリスを守ってなんか、ないよ…。」

力なくそう答える。


「あの時ルーシーが私を守ろうとして動いたんじゃないってわかってる。何かに突き動かされたようにルーシーはなってたもの。


でも、それでも。私はルーシーに救われた。

あの光のない盗賊団のアジトで何もしないまま犯されて死んでいく運命だった。そしてアジトは終わった。

けれど環境が変わっても私の絶望はなにも変わらなかった。

でも貴方が私を見つけてくれた。ただ、それだけで嬉しかった。

私がこの世界で生きてるんだって、そう思えたから。


でもね、それでも私はこの世界で生きていていいんだろうかって思っちゃうの。


私が居なければお父さんとお母さんは幸せに村で暮らせたのに。

私が居なければお父さんとお母さんは死なずに済んだろうに。

私が居なければ盗賊団の人たちは生きられたかもしれないのに

私が居なければルーシーがこの前みたいに傷つかないだろうにって。


凄く不安になるの。

また私がいるせいで周りの誰かをどんどん不幸にしてるんじゃないかって…。

ユリィさんもミリスちゃんもルーシーも。

いつか私のせいで居なくなっちゃうんじゃないかって…。」

そう言ってアイリスはまた泣き始める。



「いいか、アイリス。お前のせいで誰かが不幸になるなんていうのはあり得ない。

そんなものお前の自惚れだ。

お前にそんな力があるわけ無いだろう!


だから…そんな悲しいことを言うのは、やめろ。


お前を守って死んだ両親も奴隷仲間もそれじゃあ浮かばれない。

お前は彼らの命を背負って今ここにいるんだ。

それはお前のせいなんかじゃない。

彼らの意思でお前に命をかけたんだ。

お前には未来があるって、そう信じて。

ならお前はそれに応えなくちゃならない。

精一杯生きてその命が燃え尽きるまで生きなくちゃならない。

それが彼らに対しての精一杯の恩返しだ。

それだけで彼らも喜んで逝ける。

少なくとも俺はそう思う。

自己満足でもいい、

そしてもしお前に周りを不幸にするなんて力があったとしてもだ、

俺は、俺だけは何があってもお前のそばにいる。

どれだけ不幸になろうと、どれだけ死に目に遭おうと、俺の命が尽きようと、

俺はお前のそばにいる。

だから俺は死んでも不幸になんかならない。

だってそれが俺の『幸せ』だからだ!」


「う、ぐぅ、ぐす。そ、それじゃあ私は、い、生きていてもいいの?精一杯生きてもいいの?

皆を置いてしまっても、生きていていいの?」


「ああ、生きていいんだ。生きることは誰かに邪魔されていいことじゃない。

もしお前の生きることを邪魔する奴がいるなら、

俺がこの手で1人残らず排除してやる。


だから、お前は俺を守れ。

俺がアイリスを守る。アイリスが俺を守る。

生きる意味がわからないなら、生きていていいという確証が持てないなら、

俺がお前に生きる意味を与える。



ーーーーーーーー俺を守れ。ーーーーーー」






「ぅ、ゔぁあああん。えええええんえんえん。

ゔぃええええん。ぐす、ぐす、…





アイリスはダムが決壊したみたいにその後思いっきり泣いた。




そして泣き止むと

「うん。私がルーシーを守る。それが私の生きる意味。私の全てはルーシー。」


「ああそうだ。俺はお前の全てになる。だから精一杯生きろ。

あとさ、実は俺も魔法が使えないんだ。

72柱の大精霊のどれとも適性が出てこないから、多分このまま一生魔法を使えないままなんだなって思うよ。

だか同じ黒髪同士呪われもの同士だな。

あ、後少し待ってろ。すぐ戻ってくるから。」



俺はそう言うと早足で寝室に行く。

そう俺は魔法が使えないのだ。

だけど昔から身体能力は人よりもずば抜けている自信がある。

これが呪いなのか何なのかはわからない。

そしてさらに俺は魔法を打ち消す力があるようだ。

以前適性を調べるときに色々行ったがその全てが打ち消されていった。

俺はそんなことを思い出しながら直ぐにアイリスのところに戻る。


「アイリス。これが俺たちの生きる意味で証だ。」


手には2つの赤いピアスがあった。


「これさ、俺が孤児院の前に捨てられてた時に俺が手に握っていたらしいんだ。それでなんだか俺のお守りみたいになっててさ。

だからさ、これやるよ。お前に。

俺とお前の生きる証だ。」


そう言って俺はアイリスに手渡す。


「ねえ、ルーシー。このお守りのことって他に誰か知ってる人いる?」


「ユリィとお前だけだよ、ミリスに知られるとどうせからかわれるし、恥ずかしいだけだ。それにユリィも俺が未だにこれを持ってることを知らないんじゃないか?

だからまあ実質俺とお前だけの秘密みたいなもんだ。」


「ふふ。嬉しい。2人だけの秘密…。

なんだかドキドキするね。」

「へ、変なこと言うなよ。」

俺は心臓がばくばくいっていった。


「このピアス着けてくれる?折角お揃いだし、ルーシーの手でつけて欲しいんだ。」


「ああわかった。」


ピアスをアイリスの左耳に着けてやる。


「ルーシーには私がつけてあげる。」


「あ、ありがとう…。」


俺は右耳にピアスをつける。


「えへへ。これでお揃いだね。」


「お、おう。あんまり言うなよ。恥ずかしいから…」


「うふふ。ねえ、前に食堂にいくときみたいに心臓に手当てていい?あと握ってもらえると、う、嬉しい…。」


「えぇ!?ああ、まあ別にいいけど。なんでそんなことしたいんだ?」


「前にこうした時、私とルーシーの音が1つになった気がしたの。それで最初不思議に思ったんだけど、

暫くするとやっぱり私とルーシーの音が重なって聞こえてきて、何だか凄く体が熱くなるのを感じて…。

その、凄く気持ち良かったっていうか…心地よかったっていうか、もう一度したいなあ、なんて。」


凄くドキドキすること言うなあ!アイリスは…


俺の内心のことなんて気にしてない風に言いやがって。

そんなこと言われたら普通勘違いしちゃうだろ…。

そんな心の動きを隠しながら俺は答える。


「へえ。そそそそそんなことあったのか、へえ。」


やばい。動揺しすぎだろ。なに?運命なのか?俺とアイリスって。まあ確かに黒髪だし、なんか気があうし、ミリスとはなんか違う感じだしな。

ミリスとも話して楽しいし温かいけどなんか違う。

どっちかっていうとユリィにからかわれてるときみたいに動悸が激しくなる。

もももももももしかして、俺はアイリスに恋をしてるのか!?ま、まさか!俺にはユリィというものがありながら。まあでも、悪い気はしないな。



「あ、それとさアイリス。このマフラーお前にやるよ。そろそろ冬だろう。だから寒いからこれやるよ。」

マフラーをぐるぐる巻きにしてやると、アイリスはまた泣きそうになって笑顔でこういった。


「2人でくるまればより温かくなるよ」


2人で1つのマフラーを使う。

何だかとても照れくさい。



「じゃ、じゃあ、アイリス手を握るぞ」


アイリスは可愛くこくっと頷く。


そして、

俺はアイリスの手を取って、恐る恐る自分の心臓に手を置く。

そしてアイリスも俺の手を取り自分の心臓部に俺の手を置く。



ドクン。ドクン。ドクン。


ほんとだ。重なる。俺たちの音が重なっている。


ドクン、ドクン、ドクン。


ああなんだか心地良い。眠りそうだ。


そうして俺たちは深い眠についた。









ーーーーーーーーそして月日は経つ




俺たちは今12歳だ。あと3年で成人か。








その日、朝食を食べ終えた俺たちはいつもの如く午前の魔法や読み書きの勉強を終え、午後は街に働きに出ていた。



ミリスは街へ行っているが、俺とアイリスは2人だけ孤児院に残ってユリィの手伝いをしている。


俺とアイリスは少し山の近くまで行って薪を割に行った。








そしてなんとか一息ついて帰ってみると、何だか

揉め事のようだ。


甲冑を被った兵隊たちが4人ほどユリィと何事かを話している。

遠目からでもユリィが困惑しているのがわかる。

そして何だか兵隊どもはユリィをそのまま孤児院の中に無理矢理押し込めて行った。

少し胸騒ぎを感じつつ早足で向かった。アイリスもそれを察したのか



何だか凄く嫌な予感がする。




ーーーーーーーーーーーーーーーー…


次回。ミリスの思い。ユリィの思い。其々書きます。

まずはキャラを立ててから続きを書きたいと思います。

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