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7 毒あたり

 ぐーぐー鳴るお腹を抱えてお食事に来ましたならば、またしても180㎝男の歓迎を受けちゃってます。


「あ、お二人は今、シャワーに行ってます」


 どうやら彼は俺を待ち伏せしてたご様子。一緒に寝ましょってお誘いを受けました。嬉しくないわけじゃないんです。けどそのお誘い、女の子から欲っしい~なんて考えちゃって微妙な気分。


『素人が文豪気取りですか』

『綺麗事ばっかり書いてあってうんざり』

『下手くそな文章』

『夏なのに汗臭いもん読ませるな』


 なんだかそんな感想ばかりになってきたそうです。三人揃って鬱々してらっしゃる。一緒に鬱々する?それとも励ます?どちらが正解か、でも、どっちも性格的にできそうになくてですね。正解が分かったところで意味なし。


「正直、羨ましくて妬ましいです。こっちはこんな感想ばかりなのに、とね、つい思ってしまうんですよ」


 紳士が俺に言う。青年と180㎝男も同意している。毒当たりしてしまい、推敲もままならず感想欄を徘徊していて俺の作品に当たりをつけたそうです。カレーネタ山盛りで、すぐバレたみたい。ちょっと恥ずかちい。


 俺達が居るのは中ホール前回廊。凝った壁に絵画があったであろう絵画跡とでも言うのだろうか色がうっすら違うところがあったりして、その上消灯前だというのに薄暗い。遅くなった俺を待っていた為に、静かに込み入った話が出来る場所がここしかなかったのです。


「あー、書籍化作家がクリアした後、特にひどくなりましたよね」


 へ?


「気持ちは分かるんです。実力の差を見せつけられましたから。僕も名前を見た瞬間にわけの分からない、けれども止めようのない醜い感情が沸き上がって…」


「ちょ、ちょっと待って!書籍化作家?」


 驚いて声が大きくなってしまった。


「ふっ」


 青年が吹き出して、それはすぐに紳士にも180㎝男にも伝染した。ホント笑いって移るよね。でもそれどころじゃないんですけど!3人揃って笑いで震える声で教えてくれた。二番目のクリアは書籍化作家だったそうだ。異世界転生もので書籍化、ダンジョンもので書籍化と連載作品が立て続けに書籍化されたお方、そんな雲の上の存在が今、このドリームキャッスルにいらっしゃる。まさにドリームだね。思わず頬をつねる俺。


 読んだ感想聞いてもいいのかな。どうなんだろ。まだ黒い気持ち持て余していたらって考えると聞けないなあ。ま、明日読めばいいか。それにしても二番目にクリアしたのは天文部だとばかり思ってて、タイトルの確認とか忘れてたなあ。


「実は僕、あなたじゃないかと疑ってました。カレーコメントの感想見つけてホッとしたんですよ」


 青年の言葉に「はあ~?」とひっくり返った声を上げてしまい、いまだ半笑いだった3人さんはもう、お腹を抱えて苦しそうにのたうち回ってます。


 どうやっても素に戻れないまま、つまり笑いながら説明してくれる3人。朝、パワフル婆さんは書籍化なんて出版社が稼ぐためにやってることで、売れ残りを買い取らされて大変なだけだと、衝撃発言なさったそうで。全く聞いてませんでした。食うことしか考えてませんでした。その衝撃発言によって静かになって、パワフル婆さんの声が俺にも聞こえたみたいね。そんで取次の件で怒り爆発した俺。俺ってば何で怒ってるか言わなかったもんだから、つーか娘さんが撃退してくれて、あの場は終わってしまい、その後書籍化作家がここに!ってことで、もしかして?となったそうです。


「あーあ、なんか明日の朝が心配ですよ。どうにも嫌な空気になりそうで」


「そうですね。僕なんか初日の感想欲しさの参加という言葉まで、正体を隠すためのものじゃないかと疑ったくらい、とにかく悪く考え始めて止まりませんでしたから」


「私もそうでした」


 うんうんと頷き合う3人さん。って180㎝男、お前はクリアしてんじゃん。それにあの時居なかったよね?俺抜きの晩飯の時に聞いたの?あ、そう。え?三話目がたまたま当たっただけで、その後感想来てないの?そうかあ。ちょっと優しい気持ちになる俺。


 3人さんが俺を待ち伏せしてまでお誘いしてくれたのは、心配からだった。俺が昼飯後に更新したのを知ってるのは3人さんだけ。つまり他の方々は今もまだ俺の正体を疑ってるつーか、ほぼ書籍化作家だと思い込んでいるものと思われ、黒い気持ちに包まれたままの方々に囲まれたり絡まれたり、、、こっわーーー


 そして朝です。美しい朝です。本当に美しい。中ホール前の回廊の突き当たりにステンドグラスの窓があって、朝陽を透かして本当に美しいんです。よし!決めた!


 大ホールに入るなり注目される俺。うん。予想通り。


「特定できないから、この場を借りて謝らせて下さい。更新遅くなってすみませんでした。カレー食ってました」


 ガバッとジャージが風を切る勢いで頭を下げた。


「やっぱりか!そのあとの更新のタイミング見てて、そうじゃないかと思ってたわ!」


 茶髪のお兄さん?お姉さん?どっちでもいけそうな端正なお顔立ちの方で、思わずオッパイ確認。男ですね。元気に笑いながら答えてくれて、空気が変わりました。俺の正体ばらしちゃえ作戦は見事に成功しましたよ。なにせ更新最終組ですからね。冷ややかな視線どころか温かく、というより温くなりました。


 そして颯爽と登場する女神。パンパンと手を叩いて更に注目を集めて堂々と発言なさいます。


「書籍化作家もカレーマンも同じイベント参加者。何のための番号制イベントか思い出して。女性参加者も、もうタタン探しはお仕舞い。さあ、朝食は一日の活力源。食べましょ」


 町内会での活躍ぶりが見えるような雄姿です。女神カッコいい!おかげで多くの方に朝食の間に声をかけられました。正気を保つのに俺の感想ページが役立ってた様子。英雄?


 けどカレーマンはやめて。そしてタタンタタンタタンはこの大男です。

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