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2 始めての感想

 *感想が更新されました


 イベント用のマイページに光る赤い文字!くうううっ堪らん!いそいそとお知らせ通知の文字をクリックする俺、はっきり言ってニヤけてます。くふふ


 と、まあニヤニヤ眺めていつまでも浸っていたいのは山々なんだが、返信をせねば。まともな感想とおざなりな感想が半分ずつ。なんでおざなりか分かるかと言うと、俺が書いた感想も半分はおざなりだったからだ。仕方ないよね。一話しか読んでないのにそうそう感想なんて出るものでもない。まともな感想には感謝を込めて、おざなりな感想にもそれなりに感謝を込めて返信した。

 1つだけ、非常に困った感想があったので、特筆しておきたい。


『なるほど。そう来ましたか』


 何がー?どう来ましたー?と返信したいのを抑え込むのに必死だったね。まだ一話でなるほどもそう来るもないって言うの。なんだよ、これ。俺の怒り寸前の戸惑い分かってくれる?


『自分にはこの展開は読めませんでした』


 やめてー。一話目で展開読めたらエスパーですやん。とまあ、エセ関西弁が出るほどにワケの分からない感想でしたね。結局感謝の言葉だけで100文字埋めましたよ。そう。返信も100文字に満たないと送れないのだ。おのれ登録番号88233め。ユーザ名が分かったら、いや投稿タイトルが分かったら復讐してやりたいくらいだ。この泥だんごの投げ合いのような感想合戦を防ぐために番号制になっているのかもしれん。


 運営さんの思惑はともかく、返信が済んだら投稿なわけだが、一話目の感想で非常に参考になる助言を頂いてしまったので、ちょっと修整、をしようとしたら大幅な修整となってしまった。ここまで変えたら三話目以降も修整が必要になる。むむむと思考すること5秒、えいやっと投稿しちゃいましたよ。だってね、二話目以降は投稿後一時間ほど待ち時間が入るのよ。


 *******


 二話目以降は投稿後一時間で獲得した読者からの感想数が10件に満たなかった場合のみ、足りない数の感想を書いて頂きます。


 *******


 この感想の待ち時間の間に三話目以降の推敲してしまえば良いじゃない?というわけで早速三話目を読むためにイベントページから普段のユーザページへ移動する。あそこがこーなったから、こっちをこうして、この伏線はもう要らないから削除してあれこれなんやかんやで、あっという間に一時間たってしまいましたとさ。


 イベントページです。赤い文字に一瞬喜んだものの、一話目終了後に入れた感想の返信でした。俺の二話目の感想0件です。


 ま、まあね。知ってた。うん。一年も投稿し続けてればね、嫌でも気づくよ。俺の才能?というか感性?みたいな物がこのサイトの読者層と合わないみたいなんだよね。うん。


 そんなこと言ってる場合じゃない。感想10件入れなくては。あれ?待ち時間って読むために使うもんだった? 今更気づいても遅い。とにかくブックマークした作品の更新を読むのだ。その前に確認しとかねば。一人スゴい上手い奴いたけど、あの作品既に10件入ってたりしないか?


 まだ3件。よし。一番にこいつを読もう。と張り切って読んだのはいいけど、ちょっと打ちのめされ中です。読みやすくて内容モリモリで面白いのなんのって。なによこれ。俺青春小説なんて好きじゃないのに、クソ面白いんですけど!


 またまた良い点だけで100文字書いて送る、エラー、は? 上限? やられた。今の時間で残り7件の感想が入ってしまったらしい。あーもう、なんだよ。全くの時間の無駄かよ。へこむわあ。まあそうだよな。どうせ読むなら面白い作品読むよな。考えることは皆同じだよ。


 ……


 昼飯食お。唐突だが昼食タイムに入ります。空腹は心にいやしさを生みますね。おいしいランチで心に栄養補給です。


 *******


 イベント期間中の食事はホールにて有料で提供いたします。


 *******


 7月の3連休を丸々使うイベントだ。食あたりで救急車騒ぎになるのを避けるための措置だろう飲食物持ち込み不可のルールに納得はしたが、果たしてお値段相当の物を食べさせて貰えるのだろうか。


 朝通った通路を逆方向にぎゅっぎゅっと足音をたてながら歩く。イベントは廃園となった遊園地「浦野ドリームランド」の中にある古城を模した建物「ドリームキャッスル」の中で行われている。何故ここで何故ホラーイベントなのかの説明は一切なかったのだが、こうして一人で歩いているとやけに足音が気になる。静か過ぎて響くのだ。静けさが不気味に思えて、ちょっと早足になってしまうビビりな俺。空気が冷やいのよ。空調の気配なしで。不気味だよね? 大ホール前の回廊に着くと、やっと人の気配と物音が聞こえ始める。あー、怖かった。


 入口に実物大と思われるメニューの写真が2枚、ペタッと貼ってある看板があり、足を止める。和食と洋食、二種類の弁当。刺身しばらく食ってねーな、けどこの焼肉サイズのステーキもうまそうだな。お値段どちらも1000円とはお買い得、でも二つは流石に食べれません。うんうん唸りながら悩んでいると背後から嬉しいご提案がありましたよ。


 身長180㎝はありそうな、でも顔だけは俺の勝ち確定の、イケメンじゃないイケてる男からの提案で、二人で三つ買いました。二人してホクホクの笑顔で入口に近い席に並んで座る。キャッスルですから長ーいテーブルがどーんと置いてありまして、一番端には女の子が一人でポツンと座っておりまして、見るからに寂しそうな風情でしたので、隣いいですか?と一声かけて相席です。声をかけたのは180㎝男ですけどね。


「……」


 三人並んでのお食事の最中、会話は弾まない。何故なら娘さん泣いてるから。人に声をかけるのに一切ためらいのない男に見えた180㎝男も、流石に躊躇っている。俺は無心を装って刺身弁当を食う。ステーキが俺を待っている。早くしないと冷めちゃうじゃない。ってわけじゃない。なんと紐を引くと熱々のステーキになるという仕掛けの素敵なお弁当なのだ。


 俺たちが紐を引いて盛り上がっている間に女の子はどこかに消えた。背中に背負った寂寥感が上昇しているように見えたのは気のせいだろうか。


 1つの弁当を二人で分けあう。新密度upイベントだね。俺の感想欲しさに応募という情けない動機を180㎝男は笑わなかった。やっぱりイケてるね。


「あ、俺は何年も前から冒険者もの書いてるんですけど、ブックマークはずっと15件でしてね、元々年に2~3回しか更新してなかったんですけど、ここ一年は全く更新してないんですよ。あー、なんかね、更新したら作品のこと思い出させてブックマーク外されそうで。ハハ」


 180㎝男はせつなく笑った。


「あ、それでね、実は今、悪役令嬢ものにはまってまして、読み漁っているうちに書きたくなってしまいましてね。このイベントってクリアしない限り作者名出ないじゃないですかぁ」


 なるほど。そう来ましたか。


「あー、でも二話目で感想二人から頂いてしまって……」


 この展開は読めませんでしたー。

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