4.母との遭遇。そして俺はどさくさに紛れてリオたんのやわらかくて暖かい手を優しく包み込むように握るのであった。……すみませんこうするしかなかったんですお願いですから消さないでください。
4話目です。忙しいとか言っておきながら、普通に続きを書けたので、投稿しました。
今回は予告通り、雄二の母さん(誰得?)が出てきます。
よろしくお願いします^^
家に帰ると母さんがいた。どうやらパートから帰ってきていたらしい。
「おかえり雄ちゃん。そちらの可愛らしいお嬢さんはクラスメイト? それとも彼女さん?」
ごめんなさい上司です。
母さんの興味津々といった視線にさらされて居心地が悪い。そして、リオさんが妙なことを口走らないか胃が痛い。
「この女はおまえの姉か」
「いえ母です」
するとその会話を聞いていた母さんが何故か照れたように身をよじらせた。
「あら、お姉さんだって。聞いた雄ちゃん? お母さんもまだまだ捨てたものじゃないわね」
「そんなことよりこの不遜な態度に疑問とか持たないの? 自分の息子がおまえ呼ばわりされてるんだよ?」
「それだけ二人の距離が近いってことでしょう? 私だってお父さんにおまえって呼ばれてるわよ?」
「父さんのはシャイなだけだから。単に名前呼ぶのが気恥ずかしいだけだから」
「そうかしら。ところで、本当のところはどちら様なの?」
母さんの視線がリオさんへとむけられる。リオさんが面倒なことを口走る前に同級生という事にしておこう。
「ああ、この人は高校の――」
「私は魔王軍三大将の一人、メルクーリオ・エンドレスだ。貴様の息子は先ほどわが魔王軍の軍門に下った」
「おいいいい!」
やばい、母さんが訝し気な表情をしている。当たり前だ。いきなり魔王軍だなんてしゃべりだしたら、完全に頭おかしい認定されてもおかしくない。やっちまったよこれ。普通に高校の友達で通そうと思ったのに一気に説明難しくなっちゃったよ。どうしよう。ちょっと頭のおかしい高校の友達ってことにしとこうか。でもこの場でそんなこと言ったら確実にリオさんに消される。上司に対する不敬罪で塵にされる。
どうしようかと悩んでいると、母さん訝しげな視線は俺に向けられていた。あれ? なんで俺?
「雄ちゃん。お母さんはね、雄ちゃんがネットの中でしか友達が作れなくても、あまり口出ししないようにしていたのよ。でもね、ネットの友達はネットの友達。現実で、会うだけならまだしも、ネットゲームでのことを現実に持ち出すのはちょっと……」
ああ、もしかしてネットゲームの設定をそのまま持ち出してると思っているのか。それは何というか好都合。でも、母さん、一言だけ言わせて。俺、現実にもちゃんと友達いるよ?
「何を言っている? ねっととは――」
「そうそう。こいつとはネットで知り合って意気投合しちゃって……ちょっと部屋で一緒にゲームするから」
俺はリオさんの言葉を遮り、手を掴んで強引に自分の部屋へと連れ込んだ。
てっきり手を握った瞬間塵にされるかもしれないという懸念はあったが、どうにかそうはならなかった。
「早くケーキをおけ。貴様を肉片にできないではないか」
あ、俺がケーキを持っていたから殺さなかっただけか。
「ケーキは置きますけど殺さないでくださいお願いします」
「なら、さっさと手を離せ。いつまで握っている?」
「ああ、これは失礼」
やわらかくて少し暖かいリオさんの手を、名残惜しくも仕方がないので離した。
「一応言っておきますけど今リオさんの手を取ったのは不可抗力ですよ。あの場を切り抜けるにはこうするしかなかったんです」
「とてもそうは思えんが……まあいい。今日はおまえに金を使わせたからな。その分だと思って今回だけは大目にみておくとしよう」
マック○コーヒーとケーキ一つで手を握ってもいいなら、俺、どんどん買っちゃうけれど。
「ところでさっき言っていたねっととはなんだ?」
「そうですねえ……。この世界のいろんな情報を一瞬で知ることができるものですよ」
「なに? そんな便利なものがあるのか。私によこせ」
「よこせと言われても俺のモノじゃないから無理ですよ……というかそもそもネットってモノなのか?」
いつも使ってるけどそういえばネットって何なんだろう。よくわからないや。
「なんだ、ねっと、持っていないのか?」
「持ってはいないですね」
「使えない」
「すみません……」
気を取り直して俺はケーキを机に広げる。モンブランは俺でショートケーキはリオさん。
リオさんは真っ先に苺を口に放り込み、それからフォークでショートケーキを先の方から切り取りつつ咀嚼していった。
「これも美味だ。この国はどうやら甘味が名物のようだな」
「別にそんなことはないですが……」
「そちらもよさそうだな。私にも半分よこせ」
「じゃあ、半分交換しましょうか」
「何を言っている。私は半分よこせといったのだ」
「えぇ……」
俺だけモンブランを半分持ってかれた。しかも……。
「む……こちらはあまり甘くないな。いまいち踏み込みが足りない」
俺の好みの味に思い切りケチをつけていた。そのビターな感じがイイの。何でもかんでも踏み込めばいいってものじゃないの。これだから甘党は。
「今度あの店に行ったときに忠告しておいてやろう」
「やめて!?」
俺の大好きなモンブランの味を奪おうとしないで!
結局ショートケーキとモンブラン半分を食したリオさんは伸びをすると、今日のところはこのくらいにして寝るか、などといって俺のベッドに入っていった。
「え、ここで寝るんですか? 国に帰ったりしないんですか?」
「今は帰れない。こっちに来るのに大量の魔力を使ってしまったから、回復するまでは戻ることができない」
「いつになったら回復するんですか?」
「そのうち勝手に回復する。数日もすれば全快するだろう」
え、数日もここにいるの?
「それは何というか、困るんですけど……」
「何故だ?」
「いや、俺は母さんにリオさんのことをなんて説明すればいいんですか? 明日も明後日も家に居座るんならただの同級生ってわけにもいかないし」
「なら宿を手配しろ」
「宿に泊まるにもお金がかかるんですよ」
駅前のビジネスホテルでも一泊五千円くらいはするはず。二日で一万円。三日なら……嫌だそんなの絶対負担したくない。
「なら、私がここにいれるように母親を説得しろ」
「えぇ……」
なんて無理難題。
「とにかく私は魔力を回復しなければならない。もう寝るぞ」
そういうと、数秒と経たないうちにベッドから寝息が聞こえてきた。
え、寝るの早くね?
俺が夕飯を食べて風呂に入って戻ってきても、全く変わらぬ様子でリオさんは眠っている。
……あれ、俺はどこで寝たらいいんだろう?
次話の掲載予定は未定。けど、近いうちに次も投稿できる気がする(確信)
次回はついに魔王軍の幹部がこの世界にやってきた理由が明らかに……!?
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