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三十四:暴れ雷

 ライの攻撃は激しさを増していく。

 晴れ空に雷鳴をとどろかせ雹を降らし、最奥の祠をどんどんちらかして

いく。

 

 ライの繰り出す雷や雹がすべて祟り神に当たるとは限らない。でたらめに放ってそのうち一つでも当たればもうけもの、という乱暴な戦法だった。


 祟り神はライの攻撃全てをいなし、受け止め、まともに食らわない。ライの調子に乗せられず、あくまで弾いている。

 攻勢はライの方にあったが、実際は祟り神に遊ばれているようでもある。


 それでもライは明るい表情で自由に暴れ回る。

 

 その攻撃は、祟り神だけに向けられているわけではない。

 適当に撃っているだけだから仲間の方へも放り込まれてくる。


「何だい何だい、昔より精度が下がってないかい、これ?」

 ガトーは不平を漏らしながら、雹の嵐をその身でうけとめる。図体のでかさを活かして、シロの盾になっているのだ。

「半分くらいはこっちにきてないかね」

「アタシもそう思う」

「もともとそういう奴だろ。今日はひさびさに制限なしで戦えるから張り切りすぎておかしくなってんだ」

「あの、だいじょうぶ、でしょうか……」

「だいじょうぶ。シロにはかすり傷一つつけさせないからね。このおじいちゃんにまかせなさい」

「わ、わたしじゃなく、ライ様……、あんなに神力を使われて、疲労はされないのでしょうか……」

 アマネの腕の中でシロがもぞもぞ動く。

「ああ、ライの神力は並だけどね、雷と雹に好かれているから、神力を消費しないのさ。炎とか氷とかを繰り出すときは神力を使うんだけど、こと雷と雹は神力がいらないんだよ。だからああして無尽蔵に撃ってもけろっとしているのさ。……いて、いてて」

 ガトーは額にごつごつ当たってくる雹をつまんで放り投げた。

「とはいえ、ライの暴走だけでは現状維持ってとこかねぇ。ミカフツが祟り神の力を吸うまでにどうしたもんか」

 アマネは頭を悩ませる。結局行き当たりばったりの作戦だった。作戦などなきにひとしい。


 ライが万一倒れたら、真っ向から戦えるのはミカフツだけ。

 祟り神は自分にこちらがわの攻撃を近寄らせない。隙をつかれてミカフツもつぶされれば、神力を吸収するてだてが絶たれる。


 こちらがわの危惧などライは意にも介さず。

 適当に自分勝手に、祟り神に執着している。


「吸い取る、とは……?」

 シロがおずおずとたずねてきたので、ミカフツが簡潔に答える。神の力を体内に吸い取ることで祟り神を吸収することを。

「ミカフツ様は、そんなことまでできるのですか」

「大したことじゃない」


 轟音が祠いったいをつんざいた。シロが小さく悲鳴を上げて身をすくませる。

 ライの興奮が最高に達したらしい。祟り神も反撃に打って出ていた。

 ライの落雷と雹をかわしながら、刃となった風を吹かせた。

 お、とライが声を漏らす。肌のあちこちに浅い切り傷が生まれていた。

 肌をなでた風は、刃だったんだろう。

「やっと本気になってくれたか」

「しつこいから少し相手してやるだけよ」

「じゃあもっとしつこくしてやる!」


「いて、いて」

 ガトーは体のあちこちをぱっぱとはたく。雹でもささったかと思ったら違った。祟り神の風の刃がこちらにも届いている。そう悟ると表情が引き締まった。

「ミカフツ」

「あん?」

「祟り神も攻勢に出たよ。シロが傷つかないようアマネの支援しな」

「おうよ」


 祟り神の顔にかげりがでているのをミカフツは気づいた。

 ライの執心にうんざりしかけている。面倒が頂点に達したら、ライを振り払ってこちらへ来るだろう。


 ライの雷と雹にくわわって、祟り神の風までこちらにおそいかかってくる。

 祟り神は封印から目覚めたばかりで力をうまく操れない。それが突破口でもあるが、同時に、流れ弾がこちらへ来るということでもある。


 シロだけは死守する。自分の供物くらい守ってやる。

「どうする、ミカフツ? ライの援護するかい?」

「いや、迂闊に近づいたら巻き込まれる。どうにかして祟り神を叩きのめさないと……」

「膨大な神力を扱うのにまだ慣れてない。使いすぎて疲労するのをねらいなさい」

「そうしたいが、ライがそれに気づくのか……?」

「むりだろうねえ。ライの頭はからっぽだから」


(祟り神がライに攻撃をしつづけていれば、反撃で費やす神力を扱いきれずに祟り神の疲労をねらうことはできる。が……)

 それまでにライの体力が残っているかどうかだ。ライの体力はそこそこあるが無限ではない。

 もし万一、祟り神の技を被弾したら、傷ついた体の再生のために膨大な神力を消費することになる。そうなるとライは戦いをいったんやめなければならない。

 そうなると、次に祟り神を殴りに行かなければならないのはミカフツだ。

 ならば、とミカフツは決めた。


「おいガトー、アマネ。シロを頼む」

「ちょっと、どうするんだい」

「ライと共闘する」

「な、そんなことしたら、アンタも巻き添えだよ? ライの雹はいたいんだから」

「あのひょろいヤツの雹なんざ痛くもねーよ」

 ざっとミカフツは一歩前にでる。


「おぉ、新手か」

 祟り神は背後に忍び寄る陰にすぐ気づいた。

「あっ!? ミカフツ、てめー独り占めさせてくれるんじゃなかったのかよ!」

「うっせーな予定変更だ。

 ライ、競争しようや、そこにいる祟り神を先にぶちのめした方が勝ち、ってことでどうだ」

「いいなそれ! ミカフツ頭いい!!」

 ライの不満はすぐにかききえた。自分の強さを見せびらかせれば何でもいいのだ、この男は。


 ライの攻撃をさらに激しくさせ、ミカフツという新たな戦力を祟り神に落とし込む。祟り神は二体同時に相手をしなければならない。そしてシロを傷つけることはできないから力の制御に細心の注意を払わなければならない。


「オレが先にとどめさしてやる! おいしいとこどりなんてさせっかよ!!」


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