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二十七:過信、あるいは信頼

「らっ、ライの兄貴」

 苔男がすっと立ち上がる。奥の寝室に引っ込ませていたライは、もう回復したようだ。のんきにのびをしてあくびも隠さない。

「大丈夫なんすか、起きて」

「んぅ? 怪我は治ったし神力ももとに戻ったから平気だろ。っつーかこんな天気ひさびさじゃん? こんな晴れた日は喧嘩日和だなぁ? きひ、そうじゃね?」

「いや、あの、兄貴……今はちょい、」

「あん? 何でこんなしけってんの? 姉さんもガトーもミカフツも死んだような目ぇしちゃって」

 怒りがこみ上げてきた。ミカフツはライの胸ぐらをつかんで激昂する。


「シロが! 祟り神んとこいっちまったんだよ!!」

 ミカフツの怒号が屋敷全体に広がる。ミカフツの鬼の形相に萎縮することなく、ライはけろっとしていた。

「は? シロが? なんで? ミカフツの供物に飽きたとか?」

「なわけねえだろが!! あいつは俺らを守るためにここを出たんだよ!」

「へぇー、何で? 祟り神ってあのちっこい神にとりついたヤツだっけ?」


 ライはシロの出生を聞いていない。そのときはぐっすりと眠っていたからだ。

 これ以上、天然でミカフツの神経を逆なでされてはたまらない。ライを寝かせていた離れ部屋からずっと聞き耳を立てて事情を察していた苔男が、そっとライに教えた。

「ライの兄貴、シロちゃんは祟り神を鎮める力を持ってるんですって」

「すげえ、ただのまっしろなチビかと思ってたら」

「ええ、そんでね、祟り神の起こす大嵐も鎮めることができるんですよ。

 でもそのためには、シロちゃんが祟り神のそばにいなきゃならない。

 俺らは祟り神に太刀打ちできない。だからシロちゃんが祟り神のとこに行くって、そういうわけで」

「へえ、度胸あんな。今度相撲とってやろ」

「おまえなぁ……!」

 ミカフツの顔が真っ赤に染まる。

 

 シロを奪われたのは、このお山にとって、少なくともミカフツにとっては大きな損失だ。


「ライ、ちょっと黙ってておくれよ。話がこじれる。

 アタシたちは、これからシロを取り戻すにはどうすりゃいいか、考えなくちゃならないんだ」

「考える必要なくね? 祟り神をぶっとばしてお山からぽいっと追い出せば祟り神におびえることもない」

「それができてりゃこうして悩んでねえよ!」

「悩む? ミカフツおまえ、自分の力に自信がねーの?」

 ライは心底首を傾げる。


「だってさぁ、ミカフツはお山で二番目に強い力を持ってる。

 その力と、ガトーの何かその……すっげーわけわかんねえ作戦とか立てて、姉さんの、いろじかけ? 的なものと苔男のパシリと、

 お山最強の俺がいりゃ、祟り神をぶちのめすなんてわけないぞ」

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