二十三:嵐しずめるもの
「……あれ」
シロは声を落とす。
「さっきから、お天気が」
「ああ、嵐だ。
マガツキの持つ力だ。マガツキは神力の制御ができない。
この私でも全てを御すことはできなかった。
だがそれを全て抑える方法が一つある」
祟り神がシロの手を取った。
「!」
「怖がらなくていい。危害は加えない」
「でも……、ミカフツ様とライ様をひどいめにあわせました……」
「力の制御がかなわなかったからだ。私はすこし動いただけ。
意図的に痛めつけたわけではない」
祟り神は続ける。
「シロ、おまえはマガツキの一族とつながっている。
人間にしてマガツキの血筋を受け継いでいるのだ」
「な」
「外を見て見ろ。さっきまでの大嵐はすっかりなくなった。
シロ、おまえが私のそばにいるためだ。
シロの一族は神々の力を沈める力を持っている。荒れ狂う神々をしずめる力を持つから、おまえたちは供物にされやすいのだ」
どうよ、と祟り神はシロに問う。
ガトーがさりげなくシロを自分の方へ寄せる。アマネもガトーとシロにすり寄る。
シロを渡してはならない。シロを奪われるのは、四方津神の大きな損害だ。
「それで、祟り神さん」
ガトーが落ち着いた声で聞くと、祟り神がうん、とガトーに視線を向けた。
「シロを、どうするおつもりなのかな」
「どうするも何も。私はこの力の制御ができない。自由自在に操れるようになるまで、シロを我が手のもとにおく」
「んなっ」
アマネは祟り神にかみつく衝動をぐっとこらえる。
シロを奪われるのは、一番おそれていることだ。
「そういきり立つな女神様。私が力を抑えきれるようになるまでシロをそばにおくだけだ」
「具体的に……どれくらい持ち出す気だい?」
「さあ……生まれたての神だから、百年単位だろうよ」
「そんなに……!」
ガトーがシロを抱き寄せた。アマネがふるえる足で祟り神の前に立ちはだかる。
祟り神と四方津神の話を聞いていたシロは、なんとなく自分のこれからどうなるかを考えていた。
祟り神は自分を欲している。力を制御できない体では、お山に被害をもたらす。
お山から追い出せば良いかもしれない。だけどそれでは、お山でないほかの場所が同じような大嵐に見舞われるだけだ。何の解決にもなっていない。
ただし、祟り神がシロのそばにいる場合は別だ。
シロには祟り神の力をしずめるだけの力がある。
祟り神は、お山の最奥に封じられていた。ということは、よほど恐ろしい力を持っているんだろう。いつも荒っぽい四方津神の威勢がしぼんでいる。
でも四方津神は賢い。きっと打開策を見つけてくれる。
嵐を一時的に沈め、安全を保つために自分がすべきこと。
シロは、瞬時に判断した。




