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十五:小さな体に大きな神力

「……ねむ」

 のんきにあくびをしつつ、その子供はそうぼやいた。

 シロと同じように全身真っ白な子供は、恐ろしげな祠に尻を乗せていても何の罪も感じていないようだ。

 

 それをしっかりとみたライは、明らかに落胆していた。ミカフツに並ぶ強敵が待ち受けているかと思いきや、そこにいたのはシロと同じほどの子供でしかなかったのだから。

 幻滅された方はあいかわらず眠そうだ。何度かあくびをしてようやくライの方へ視線を投げる。


「……んぁ?」

 白い髪に白い肌、白い羽衣と着物に、まるっとした黒緑の目は際だつ。眠気眼をこすり、今にも祠から落ちて眠ってしまうのではないかと思えるほど、動作がゆったりしていた。

「だれぇ?」

 舌っ足らずな子供の声がする。何から何まですべてが幼い。こんな幼さの塊のために、今まで崖から落ちて水たまりに足を取られ、果ては木の枝に手足を刺したと思うとどこまでもライの心は沈んだ。

「なんだぁ」

 盛大なため息がライから漏れた。

「今までの苦労はなんだったんだぁ……」

「んー?」

 子供はふわふわした表情でライを見つめている。

「だれ?」

「ああ、オレ? このお山の四大ボスのひとりだよ。

 おら、そこは危ないから降りろー。祟られるぞ」

「たたり?」

「そう。そこにはおっかないモンが閉じこめてあるから、うかつに近づくとあぶねーぞって」

「へぇ」

 ライにしては珍しく律儀に説明をする。普段であればがっかり直後にさっさと帰ってミカフツにちょっかいをかけていたに違いない。


 それをしなかったのは、子供がシロに似ていたのもあるだろう。シロ同様に全身真っ白なのもあるし、あどけなさがシロの雰囲気とかぶる。


「ほら、いいからそこ、」

 ライはあきれつつ、子供に手を伸ばす。子供の脇に手を突っ込んで持ち上げようとする。


 突如。


「!」

 ライの手に電撃が走った。思わず子供からばっと手を離す。


(今のは)

 手に感じたそれは、文字通りの雷ではない。

 神々の一柱であれば、その者にはかならず神力というものを持っている。

 神によってその強さは異なるが、強ければ強いほど、他者には「それ」がわかるという。

 ミカフツをはじめとする四方津神も強い神力を持っている。が、彼らは全員自分の神力を制御できる。


 体からあふれ出た神力を、この子供は押さえていない。抑え方を知らないほど幼いんだろう。

 だが強いのは確実である。ライはそれがわかるだけで充分だ。


 さっきまでの落胆はあっという間にどこかへ消えた。

 驚愕していたライの表情が、いつもの奇妙な笑いに変わった。

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