プロローグ
あなたは今何を思って生きていますか?
夢 希望 楽しみ 大切な家族 大好きなあの人
たくさんでてきますか?
今の俺には
なんも出てこない
夢も希望も楽しみも大切な家族も大好きなあの人も
なにも
なにも
なーんにもでてこない。
夢?
そんなもの朽ち果てた
希望?
とっくのとうに裏切られた
楽しみ?
全て奪われた
大切な家族?
たまたま入ってきた強盗にみんな殺された
大好きなあの人?
交通事故にあって亡くなった
俺は今なにもない。
死んでしまおうか
死んだらまたやり直せるだろうか
夢を追いかけていられるだろうか
希望を持ち続けられるだろうか
楽しみを奪われないですむだろうか
大切な家族と一緒にテーブルを囲めるだろうか
大好きなあの人が幸せでいられるだろうか
僕は全てを失わずにいられるだろうか…
死んでやろう
神様が何を言おうと死んでやろう
僕は死ぬ
高校生活を終えずに
会社で働くこともなく
結婚することもなく
子供が産まれることもなく
家族で遊ぶこともなく
子供が自立するのを見ることもなく
死んでやろう
大切な家族のように
大好きだったあの人のように
トラックが前を走る
しかし俺は飛び込まない
なぜなら、轢いてしまっただけでトラックの運転手は職を無くしてしまう
なにもない俺が関係ない人までなにもなくしてしまうのはおかしい
だから俺は一人で死ぬ
誰にも迷惑をかけずに
俺は裏切られた希望にもう一度だけ
〝生まれ変わったら、なにかをもっていられますように〟
そう願い天井からぶら下がった輪っかを作られたロープに手を伸ばす。