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湖の魔導騎士と現代魔法の旋律  作者: ふふふ
Lancelot days take a rest
2/10

My family My memory

ーーーー目を開ける。

あの日から三日という時が経った。

それでもあの世界の5年間…こちらの世界とは比べものにもならないほどの濃厚な5年間が俺を異世界依存へと導く。


ここ数日は春休みということを利用して街を歩き回り地理を思い出しながら、懐かしさに浸っている。



…ウソだ

俺はまだ諦めきれないのだ

もうあの世界には戻れないと何者かが告げているのがわかる。

理屈などではなく、命がそう叫んでいる気がしてならない。

…それでも…何かせずには居られない。



…でなければ俺が俺で居られなくなる気がするから…


明々後日からは学校だ。

そうすれば時間が制限され戻る方法を探す時間も術もなくなる。


俺は今頃鳴りだしたクマさん時計を乱暴に止めるとリビングに降りて行った。


二回の自分の部屋から降りてくると、飛鳥…つまりは俺の妹がトーストを咥えているところだった。


「おはよ、兄貴」

「おう」


何気ない兄妹の挨拶。

未だにこの感覚に俺は慣れていない。

意識が覚醒した時…つまり、俺がこの世界に帰還した時、胸の痛みと共に帰宅路で膝をつく形で目が覚めた。

その時、後ろに居たのがコイツ…飛鳥が心配そうに立っていた

激しく心配され、病院を勧められたが俺はそれを断り家に帰った。

それ以来俺を気にかける…いや、気にかけ過ぎているらしい


俺としては5年会っていなくて、ましてやもう会うことはないとまでも思っていたのだ


気まずい事この上ない…


「兄貴はまたフラフラするの?」

彼女はニュースから目を離さず俺に問う

俺は冷蔵庫の中から烏龍茶を出しつつ答える

「フラフラじゃねぇよ。まぁ、外には出るけどな」

「ふーん」


彼女は気にしていないような顔で言う。

その方がありがたい


「部活か?」

「うん、東中と練習試合」

「そっか」


飛鳥は俺の母校…仲原西中学校柔道部主将なのだ。

今までの俺では小学校高学年の時に負けた以来なのでまったく手も足もでないと思う。


…今までの俺ならば…だが


俺は目もくれず上に戻ろうとすると彼女の口が開く。


「あ、10時になったら美咲姉さんのこと起こしてあげて?」

「あぁ」

今度こそ俺は自分の部屋に戻った。




部屋の扉を閉めると机から出した札を扉に貼り付ける。


ーーーー人払いの魔術

これは魔導と呼ぶほどのものではなく、ただ人の認識を撹乱させるだけのものに過ぎない。


四方に貼られた魔導封印の札を確認してから部屋の真ん中に立ち、首元にぶら下がる銀のペンダント…自分がランスロットだった時に用いていた剣[アロンダイト]が封印されているそのペンダントを握り、ありったけの魔力を注ぎ込む。


本来の魔具であれば暴発し、破損するほどの魔力を[アロンダイト]に注ぎ込む。


残りは発動の鍵となる詠唱を行えば剣が実体化するが、いまは不必要極まりないのでしない。


俺がしたいのは本来は無駄になるはずの魔力を危機に備え、蓄えておくということがしたいだけなのだ


そのために人払いをし、魔導封印の術式を用いて、魔導の残滓さえも外にださないようにする。


…一応用心のためではあるが…


金のペンダント…彼女が俺に託した形見

これも封印を解けば剣になる…

危機が迫った時のために金のペンダントを握り同じく魔力を込める。



時間としては1時間程度だっただろうか


魔力を半分ほど注いだ俺は汗だくの体を引きずって風呂場まで行き、シャワーを浴びる。


まだ、春が始まったばかりで普段は寒くシャワーなど言語道断だが、あちらの世界ではリオがどんな日も毎日水浴びをしていたせいで、俺も寒くても入るクセがついてしまった。


…また思い出しちまった

まだ異世界依存は抜けないらしい


シャワーを出ると、リビングには電源の付いていないTVを虚ろな目で見つめる俺の姉…美咲がソファーに体育座りをしていた。


「起きたのか」

「うん…紅茶淹れて」

「おう」


俺は濡れた髪をかきあげながらやかんに水を入れる。


キッチンからリビングに戻るとTVがついていた


どうやら美咲が付けたらしい


「あ、貴志斗」

「どうした?」

「先週行ったとおり明日はアリサちゃんがお隣に帰ってくるんだから、明けとくのと、空港まで私の車で迎えに行くから付き合いなさいよ」

「あぁ…」

そういえばそんなことがあったかもしれない

なにせ俺からすれば5年以上前のことなのだし…

アリサ・詩音・スチュアート

10歳までうちの隣に住んでいて俺の幼馴染

結婚の約束までしたが今ではもう時効だろう昔はそんな容姿端麗でハーフな女の子が幼馴染で一番仲が良かった事に出処不明の自信と誇りがあったが、今となっては誠に情けない話である…


昔は四人で遊んだなぁ…


ふと蘇る記憶

異世界以外のことを懐かしいと思えたのは帰ってきてからは初めてかもしれない


騎士としての時間があったせいか、人の記憶を思い返す時にどうしても機械的になってしまう…


パーティーがあれば、一日に100人近くを覚えなければならないのだから仕方ないだろう


…ほら、また異世界依存だ


いい加減に直さなければと思いつつ、姉の顔を見ると「サボる口実考えてるんじゃないわよ」という意思がだだ漏れの表情が見える…


俺の過去回想はサボりの思案と取られたらしい


なんとも酷い話である。


…まぁ、サボらせてもらうが…


今の俺ではボロを出しかねないのと、何より時間がないというのが理由


決して面倒なわけではない多分きっとメイビー


そんなこんなでカップに紅茶を注ぎ美咲に渡す


無言で受け取りチビチビ啜り始める姉

懐かしさと共に俺の紅茶を美味しいと飲んでくれたリオを思い出す。


不思議と嫌な気分では無かった。


「貴志斗…あんた紅茶淹れるの急に上手くなったわね…」

驚く姉に言ってやる


「たまたまだよ」


俺は今度こそ上の階に上がり着替える

金のペンダントは綺麗な箱に仕舞い机の引き出しに入れておく


銀のペンダントは自らの首にかける。

十字架に騎士の兜が載ったペンダント


金のペンダントは王冠が載っている。



再度、下まで降りて玄関に手を掛けると美咲に声を掛けられる。

「また出かけるの?彼女?」

「違うよ」

「それならなんで?」

「用事があるんだよ」

「ふーん…まぁ、いいや帰りに牛乳とパン買ってきて」

「わかった」

今度こそ俺は家を出た。



ーーーーさて今日はどこを歩こうか

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