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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜五章〜
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ノーマル

「お待たせ。護」

「おぅ」

いつも通りの薫の言葉に、護はいつも通りに声を返してくれる。

そんな、いつも通り(、、、、、)が、薫は好きだった。

「こうやって二人になるのも、久しぶりかもね」

「そうかもな」

だから、久しぶりに二人きりになることが出来て、薫は、少し顔をほころばせる。

ここ数日は、そういう時間も減ってきていた。

それも仕方のないことかもしれないと、薫は自分に言い聞かせる。

中学の時より、護のことが好きだという女の子は、倍以上に増えている。

だから、自然と、二人きりになる時間は減っていく。

……順番だもんね……。

今日も、順番で、護に水着を選んでもらうということになっている。

それ以外でも、護と一緒にいれる時間というものは、限られているのだ。隣の家に住んでいるわけたから、会おうと思えばいつでも会える。

でも、さっきも言ったが順番なのだ。誰かと護が二人きりになれば、今度は、他の誰かが護と二人きりになる。

「ねぇ? 護」

「ん? どうした? 」

「私、護のこと好きだからね」

何度目か分からない告白を、薫は、さりげない感じでした。

改めて、自分のことを意識してもらうために。自分としても、より強く、護のことを強く思うために。

「お、おぅ………。急に言うな……。びっくりするだろ」

護は、自分から視線を恥ずかしそうに外す。

「ゴメンゴメン」

「ほら、行くぞ。水着買うんだろ」

「うん、護。手繋いで」

普通に、薫は、護に向かって左手を差し出す。

「分かった」

優しく包み込んでくれる護の手。これもまた、久しぶりに感じる感触だ。

薫は、護の指に自分の指を絡めるように手を握る。いわゆる、巷では、恋人繋ぎと呼ばれるもの。

薫の願いはただ一つ。

護の彼女になること。ただそれだけだ。

そのために、何が出来るのか。これまで考えてきたつもりだ。どんなことよりもこのことだけは、絶対に、何としても、叶えたい願いだから。


……恥ずかしいな……。

また、薫に告白されたというのもあるが、今みたいに、手を繋ぐのも何か久しぶりな気がするからだ。

しかも、恋人つなぎをしているからか、余計に薫を近くに感じることが出来る。こんなことを思うのも、久しぶりな気がする。

昔からずっと一緒に過ごしてきたかはか、こういう感覚は、あまり感じてこなかったものだ。

だから、いっそう恥ずかしいと思うのかもしれない。

……護のこと好きだからね……。

さっきの薫の言葉が、頭の中で自然と繰り返される。

返事出来ないのが、もどかしく感じられる。

……切り替え切り替え……。

今は、水着を選ぶことに集中しよう。薫を喜ばせることが先決だ。


心愛、渚先輩に続いて薫の水着を選ぶわけだから、すぐに選べると思っていた。

しかし。

「うーん……」

薫の趣味やら何やらを知り尽くしているが故になのだろうか。悩んでしまう。

夏休みに入れば、今日いるこのメンバーでプールに行くことになるだろう。杏先輩のことだ。絶対に、そう言うはずだ。

そうなれば、全員の水着を、被らないように選んだ方が良いだろう。

それが、案外大変だったりする。薫のことだけでなく、まだ選んでいない悠樹達のことを考えつつ、薫の水着を選ばないといけない。

「そんなに顔顰めてどうしたの? 」

「いや……、案外選ぶの大変だなぁって……」

「まぁ、そうだよね」

薫も、周りを見回して探してくれる。

あ、ちなみに手は繋いだまま。そうだから、水着を選ぶことより、薫自身に気がいってしまう。

やっぱり、ビキニとかが良いだろうか。ワンピースとかも似合う気がするが、ワンピースなら悠樹の方が似合うはずだ。

さっき、ちょっと良いのを見つけたが、渚先輩のやつと被ってしまう。うーん……。難しい……。

「護の好きに選んで」

「お、おぅ」

そうだ。俺が選んで良いのだ。俺の好きなように、皆をコーディネート出来るのだ。

「これか…………」

シンプルになりがちな黒のチェック柄のビキニ。下はミニスカートになっていて、腰周りがより細く見える。

ここで黒色を選ぶのは、ちょっと考えた。

やはり何と言うか、黒となれば杏先輩の方が似合う気がするのだ。杏先輩の大胆さを、より引き立ててくれたりするはず。

だけど、それと似たようなものを、薫に求めたいのかもしれない。

「黒…………? 」

「嫌か…………」

「ううん。そうじゃなくて……、こういうのは、杏先輩の方が合うと思んだけど…………」

「俺もそう思ったんだけど……、薫に似合うと思ったから」

「護って、大人っぽい方が好きなの? 」

「いや、そういうわけではないけど……」

何で、そんなふうに思ったんだ……。

「そう? 」

「あぁ」

「まぁ、護が選んでくれたわけだしね。試着した方が良い? 」

「おぅ。頼むわ」

「分かった」

ここで、薫は俺の手を離した。二十分くらいずっと繋いでいたし、何か名残惜しい。薫も、ちょっと物寂しい顔をしている。

「じゃ、着替えてくる」

「うん」

この階だけに、試着室ってどれくらいあるのだろうか。心愛と渚先輩の水着を選んだ時も、すぐ近くにあったし。

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