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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜五章〜
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プティ・グラン

護にそう問いかけた心愛は、自分の身体を見下ろす。凹凸の少ないこの身体。スレンダーと言えば、聞こえは良いのかもしれない。しかし、これでビキニなど、大きさが露呈してしまうような水着は着にくい。護が勧めてくれたりするのなは、話は変わってくるのだけど。

「そ、そこまで、こだわりはないけどな…………」

「そうなの……? 」

「あぁ、服とか髪型もそうなんだけど、その人に合ってればそれで良いわけだし」

「護らしい答だね。で、護」

心愛は抱きついていた護の腕を離して、少しだけ護との距離を開ける。

「今日、ポニーテールにしてみたんだけど…………、どうかな? 似合ってる? 」

「おぅよ。何か、新鮮で良い感じだ」

「そう? 良かった」

心愛は、もう一度護の腕に抱きつく。

いつもツインテールだかは、その髪型を今日だけだとしても変えるというのは、少なからず抵抗があった。しかし、新しいイメージを相手に与える、というのも重要。

このメンバーの中、常に自分を意識してもらうためには、頑張らなくてはならないのだ。色々と。


「あ…………」

探し始めて数十分後。

心愛は、良い感じの水着を一つ見つけた。

「どうした? 良いのあったのか? 」

「うん」

そのビビッときた水着を、心愛は、手に取ってみる。上下が分かれている所謂セパレートタイプで、 白とピンクのボーダー柄の水着だ。

「どうかな?」

手に取った水着を、自分の身体に合わせてみる。うん、問題ない。

「良いんじゃないか? 」

……試着出来るのかな……。

もし出来るということなら、まだ少し早いような気もするが、護に見てもらいたい。

心愛は、試着室があるかどうか、周りをぐるっと見回してみる。

「試着するのか? 」

「うん……」

レジ近くまで歩いて行くと、その近くに大きめの試着室が、どーんと五個ほど設置されていた。

「着替えてくるから、少し待ってて」

「わ、分かった…………」

護を試着室の前で待たせて、心愛は中に入っていった。


「よし…………」

試着室に入った心愛は、一息ついてから、水着にへと着替え始めた。

……あ……。

ブラウスを脱いだところで、心愛は、自分が失態をおかしていたことに気付いた。

……忘れてた……。

心愛の頭の中に、さっき護に抱きついていた光景が思い出される。

忘れたということは、その服の下はもうそれということになる。いつもより近い距離で、護は感じていたということになる。

護が、それに気付いていたかどうかは分からない。

……うわ……。

心愛の中に、一気に恥ずかしさが込み上げて来た。




心愛の水着姿を散々眺めて、その後すぐに、その水着の購入に移った。後八人分の水着を、今のように、堂々と眺めることが出来るわけである。

今回は、心愛がこれだと言った物に俺も乗った感じだったが、杏先輩とかの場合は、「選んで」って、言ってくるだろう。まぁ、楽しそうだし、気にしないことにしよう。

「これで、私の番は終わりだね」

エレベーター付近まで戻ってきた心愛は、そう声を作った。

「もう良いのか……? 」

まだ時間は三十分ほど余っている。

「うん、護が大変になるから」

「ありがと」

なるほど、俺を気遣ってくれているのか。ありがたい。

「ううん。それじゃ、後でね」

心愛は、ひらひらと手を振って、そのままエレベーターに乗って降りていった。

次は、渚先輩か。さて、渚先輩が来るまでの間に、ちょっとした時間があるから、何して待ってようか。


「渚先輩ー」

足をバタバタさせて、ぼーっと待っていた渚に、心愛の元気な声が届いた。元気なのはいつものことだったが、少しだけ、嬉しそうな雰囲気が、その声だけでも伝わってきた。

「おかえり、心愛ちゃん」

渚は、時間を確認するために、腕首につけている時計を見る。

「帰ってくるの速いけど……、もう良いの? 」

「はい、十分楽しめましたから」

そう言いながら、水着が入っているであろう紙袋を見せてくれる。

「そう。じゃ、行ってくるね」

「楽しんできてください」

「うんっ」

この先に待っている楽しみに思いを馳せながら、渚は、一歩を踏み出した。


「護君、おまたせ」

心愛が戻ってから五分くらいで、渚先輩が来てくれた。

「いえいえ」

何というか、今日、皆の私服を見ていて、学校の時と一番雰囲気が違うのは、渚先輩だ。髪をおろしているってのが、一番それに影響してるのだと思う。

成美が髪をおろした時も良いと思ったが、渚先輩も似合っている。

髪が長いと、色々髪型を変えることが出来るだろうし、変えたいと思う時もあるのだろう。

「じゃ、行きましょうか」

「うん」

渚先輩の笑顔も、いつもより輝いてみえた。



渚先輩とは程よい距離を保ちながら、一緒に水着を選んでいる。手を握ろうと思えば、握ることが出来る。そんな距離だ。

心愛は、ずっと俺の腕に抱きついていた。心愛には悪いのだが、あれは、心愛だから許すことが出来たわけで、渚先輩とかにやられると、俺の理性とやらがどうなるか分からない。

「うーん……………………」

さっきから、俺は水着を手に取っては戻し、手に取っては戻し、の動作を繰り返してくる。

女の子ではなく、オトコが女の子の水着を物色しているのだ。はたから見たら、どんな風に俺って映っているのだろうか。まぁ、考えないことにしておこう……。

渚先輩も立派なものをお持ちになっているから、それをより強調出来るようなものを選べると良いのかもしれない。逆に、それを抑えるという選択肢もある。

……どっちを選ぶか……。

なかなか難しい選択肢である。


……どれにしよ……。

護の横を歩きながら、渚も選ぶ。自分には、どんな感じのものが似合っているのかを。

渚は、あまり水着に対してこだわりを持たない。今持っている水着だって、去年、成美が買ってきてくれたものだ。多少の注文はしたが、自分では買っていない。

そんな渚だったが、少し気合いが入っている。何たって、護に選んでもらえるのだ。自分に一番似合う水着を。

この衝動は、護が好きという感情からくるものではない。異性に選んでもらうというのが新鮮だから。そういうのも良いと思ったからだ。

「渚先輩。これ……、どうですか? 」

護が見せてくれた水着は、下がショートパンツになっていて、上はホルターネックでリボンにはビーズの飾りがついている水着。柄は、ペイズリーだ。ペイズリー柄というのが、少し大人っぽさを引き立ててくれている。

「護君は、これが一番私に似合うと思う? 」

「え、えぇ。イメージではそうです」

少し顔を赤らめながら、護は答えてくれる。

「うん。分かった。じゃ、一回着てみるね」

「は、はい」


護が選んでくれた水着を大事にしながら、近くの試着室に入った。

「護君? 」

試着室の外で待っている護に、渚は声をかける。

「どうしました? 」

「そこで待っててね……? 」

「はい。分かりました」

護を待たせるのも悪いので、渚は、手早く着替えを始めた。

「ふぅ………………」

自分の水着姿を、試着室内部に設置されている全身鏡に映す。

手に取った時も思ったが、少しだけ大人っぽくなったような、そんな気がした。

……護君って、大人っぽい女の子の方が好きなのかな……。

後で聞いてみようと、そう思いながら、試着室のカーテンを開て、護の前に姿を見せた。



「ど、どうかな………………」

「おぉ…………」

渚先輩が試着室に入ってから、数分後。渚先輩は、俺が選んだ水着を着て俺の前に姿を見せてくれた。

何というか、思っていたよりも似合っているし、制服や私服の時より、少しその大きさが強調されている気もした。

「めっちゃ、似合ってます」

「ほ、本当…………? 」

「は、はい」

「なら、これ買っちゃうね」

「ありがとうございます」

俺がお礼を言うと、渚先輩はにっこりと微笑み、試着室にへと戻っていった。

「ふぅ…………」

いやぁ、好評だったようで。良かった。良かった。これで、水着を選ぶのは、後七回になった。案外これは、良い気分になれる。水着姿も見ることが出来るし、一石二鳥だ。


「良かった…………」

渚は、ふぅと小さく息をもらした。

護が似合うと言って渡してくれた水着を、ちゃんと、護のイメージ通りに着こなすことが出来た。

護の言葉からも、お世辞ではなく、心から褒めてくれたものだということも分かる。

……護君か……。

着替えながら、渚は、護の名前を心の中で反芻する。

渚にとって、護というのは、一番身近にいて、一番楽しく話すことが出来る男の子だ。

しかし、そう思っているのは、自分だけではないと、渚は自分に言い聞かす。青春部にいるメンバーは、護のことをそう思っているはずなのだ。だから、簡単に言ってしまうと、好きだという感情に繋がるのかもしれない。

……だけど……。

今さら、護のことを好きになったところで、どうにか出来る問題ではない。ライバルが青春部の皆ということを理解しているからだ。皆に勝ち抜いて護を手に入れるというのは、至難の技といえるだろう。

「あれ…………? 」

水着のショートパンツから着てきたスカートに着替え、上の部分を外そうとしたところで問題が起こった。

護が選んでくれた水着はホルターネックの形になっていて、首の後ろ側でヒモを結ぶ形になる。

考え事をしながらほどこうとしたためか、間違えて逆に縛ってしまったようだ。

「……………………んっ……」

外れない。ほどけない。

首の後ろの部分だから、目で見てほどけるわけではない。手の感覚だけでほどかないといけないのだ。

……無理っ……。

「渚先輩……? どうかしたんですか? 」

「い、いや……。何でもないよ」

「そうですか……? 」

「う、うん」

明らかに、護の言葉に答える自分の声は、上擦っていた。確実に、護は不信がっていることだろう。

……でも……。

「ほどいて? 」なんてことは頼めない。男の子に、護に、そんなことを頼む勇気は無かった。



「………………」

渚先輩が試着室に戻ってから、五分くらいが経ったのだろうか。いや、もっと経っているかもしれない。

しかし、渚は、まだ試着室の中にいる。着替えなんてものは、すぐ終わるものだと思っていたが、そうでもないのだろうか。それとも、何かあったのだろうか。

「お、お待たせ…………」

ようやく、渚先輩が出てきてくれた。何やら、とても疲れきった顔をしている。何かあったとしか思えない。

さっき声をかけた時、返ってきた声が少し慌てているようにも感じたし。

「何かあったんですか? 」

「水着のヒモが外れなくて…………」

「そ、そうだったんですか…………」

俺が選んだ水着は、首の後ろでヒモをむすぶタイプのものだったはずだ。

後ろは見えないから、間違えてきつく結んでしまったりしたのだろう。まぁ、自分でほどけたようで良かった。

この場にいるのは、俺と渚先輩だけだから、もしほどけなかったりしていたなら、俺にそのお鉢が回ってくることになったのだろう。

色んな事に耐性がついている俺だとしても、さすがにそれは出来ない。

「じゃ、買いに行きますか」

「うん」

渚先輩が隣に並んでくれたのを確認してから、俺はレジに向かって歩き出した。


「じゃ、また後で」

「はい」

水着を買い終わると、渚先輩の表情はさっきより穏やかなものになった。

心愛の時と同じように、渚先輩とも、エレベータの所で別れた。

心愛にかかった時間は三十分ほど。渚先輩にかかった時間も、それとほぼ同じくらいだろう。約一時間くらいで、二人消化したということになる。

このままのペースで選んでいければ、思っていたより、案外早く終わるかもしれない。

「次は…………、薫か」

心愛や渚先輩の時よりかは、楽に選ぶことが出来ると思う。

ずっと前から薫のことは知ってるわけだし、気兼ねなく何でも話せる相手だ。薫の水着姿だって、何回も見たことがある。まぁ、少し新鮮味にかけるってのは、あれなんだけど。

いつもは着ないような感じの水着を選んでやろうか。

薫の趣味も色々と分かってるし、似合うやつも簡単に選べると思う。まぁ、そうだとしても、大変なのは変わらないかもしれないけれど……。





自分の番が終わったことを薫に伝えるために、渚は、早足でエレベーターを駆け下りる。

別に、急ぐ必要はないのかもしれない。

でも、この楽しさを、護に水着を選んでもらえて感想までもらえるこの楽しさを、早く薫にも体験してほしかった。

「か、薫ちゃん……。おまたせ……」

「渚先輩……。何で、そんなに急いでる風なんですか…………」

薫は、驚き気味に、渚に言葉を返す。

「別に……、深い理由はないよ……」

喋り終わった渚は、ふぅ、と息を整える。

「そうですか。時間良いんですか? 」

「どういうこと……? 」

「まだ……、三十分も経ってませんよ? 」

時間なんてものは関係ない。楽しむことが出来れば、それだけで良いのだ。それだけで十分なのだ。

「良いの。楽しめたから」

「分かりました。それじゃ、行ってきます」

「うん、楽しんできて」

「はい」


薫が護のところに向かったのを確認してから、渚は、三階、成美や杏達が待つ場所まで移動した。

……どこにいるのかな……。

四階が広かったので、必然的に三階も同じく広いということになる。

どこかで鉢合う場所を決めておけば良かったと、渚は少しだけ後悔する。

「渚ーっ! こっちこっち」

しばらく探し回っていると、背後の方から、杏の声が聞こえた。

はぁ、と安堵の息をもらしながら、その声のした方に振り返る。

「おかえり」

「はい。あれ……、成美とかは…………」

杏と一緒にいたのは、佳奈、真弓、悠樹の三人だけだった。他の、心愛、葵、成美は、ここにはいなかった。

「別行動にしてるんだ」

杏だけではなく、佳奈が答えてくれる。

「なるほど…………」

「で、帰ってくるのが早いけど……、もう良いの? 」

薫と同じような質問を、真弓も振ってきた。だから、同じ答を真弓にも返す。

「はい。楽しめましたから」

「なるほどね」

何か、詮索してるような表情を、真弓は浮かべながら微笑む。

「次は、私の番」

悠樹は、小さくボソッと声を作った。

「そうだね。もう、一階で待ってる? 」

携帯を開きながら、杏は、悠樹に問いかける。

「うん。そうします」

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[一言] 別の男がその場に居たら絶対爆発しろてなりますよね
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