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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜五章〜
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青春部の皆とそして真弓と #4

護を視界の中にいれつつ、悠樹は、杏を見上げる。

何がしたいか。急にそんなことを言われても、思いつかない。でも、悠樹は考える。ここで何か良い案を言えば、それが今日やることになるかもしれないのだ。

「したいこと…………」

「うん、そう」

悠樹にとって、護と一緒にいれるだけで十分。だから、護のしたいことが、悠樹のしたいこととなる。

「護は…………、あるの? したいこと」

「俺ですか…………!? 」

突然振ったから、驚きながら自分を見てくる。

悠樹は、何となく、じっと護の目を見つめた。護も自分と目を合わせてくれる。

「俺は特にないですね」

「そう………………」

少しがっかり。

「でも、杏先輩が言ってたんですけど、水着買いに行くとか、どうかなって…………」

護は、終始顔を赤らめながらそう言う。言い終わった護は、杏にへと目線を送る。それに倣うように、悠樹も杏の方を向く。

「水着…………? 」

「もう夏だし、それに向けて買っておくのもアリでしょ? 」

夏。後数週間もすれば、本格的に始まるものだ。

夏休みになったら、青春部で、また色々とすることになるのだろう。

皆とプールに行くこともたくさんあるかもしれない。そこには、当然護もいるわけだ。前日とかになって、護の好みに合いそうな水着を買いにいくより、今日ここで護に選んでもらった方が得策。

……杏先輩も……同じこと考えてる……。

そう思った悠樹は。

「うん、私も賛成する」

杏の言葉に頷いた。

「ありがと」

……水着……。

悠樹達が通っている御崎高校にプールというものは存在しない。だから、悠樹は、ここの高校を選んだようなものなのだ。

中学の時から泳げず、今でもそれは変わっていない。妹の時雨と氷雨と暮らしているので、練習する時間なども無かった。

それ故、今、悠樹が持っている水着は、中学の時に使っていたスクール水着だけだ。

そんな何年も前のものは着れないだろうし、いかんせん、そんな格好で護の前、皆の前に出るわけにはいかない。

「護は…………、泳げる? 」

「人並みですけどね。悠樹はどうなんです? 」

「泳げない…………」

「そうだったんですか? てっきり泳げるかと…………」

「そんなイメージする…………? 」

「えぇ…………」

「護泳げるのなら、教えて…………? 」




悠樹は、俺を上目遣いで見ながらそう聞いてくる。

「別に良いですよ…………」

人に泳ぎを教えたことは無いが、問題無いだろう。悠樹が運動が苦手だとイメージは無いし、ちょっと手を引いて教えてあげたら、すぐに泳げるようになると思う。

まぁ、泳げると思っていたイメージが壊されたわけだから、どうなるかはその時になってみないと分からないと思うけど……。

「これなら、他の皆も頷くかもねー。護の特別レッスン付きだし」

杏先輩は、何やらニヤニヤした顔でこっちを見てくる。今日水着を買いに行くという案が、そろそろ現実味を帯びてきている。まぁ、別に良いんだけど。

「教えるのは、泳げない人だけですよ? 」

「皆泳げないって言ったらどうする? 」

「それは無いですよ。少なくとも薫は泳げますし」

ハンドボールでは薫に勝てなかったから、せめて泳ぎだけでも勝とうとしてたし、薫は泳げる。やっぱり、そんなに得意じゃないみたいだけど。

「私が泳げないとしたら? 」

「………………え? 」

さすがにそれは無いだろう。杏先輩には、佳奈という幼馴染がいるわけだし、泳げないということは無いと思う。もし泳げないのなら、佳奈が杏先輩に教えているはずだ。

「嘘だよ。ばっちり泳げるもんね」

良かった。本当に泳げないなんて言われたら、どうしようかと考えるところだったし。

「ちなみに、佳奈も泳げるからね。佳奈は凄いよー? 」

何でも出来そうなイメージがあるからなぁ。

「なら、楽しみにしてます。皆でプールに行くのを」

「そうだね」

「私も楽しみ」

三人だけで話が進んでいってしまっているが、大丈夫だろう。他の皆も乗ってくれるはずだ。

「そろそろ皆来るね」

俺達が立って待っているその先にある大きな時計は、もうすぐ九時になるということを、俺達に知らせてくれていた。

「そうですね」

杏先輩の言葉に頷いて、改札の方を見てみる。丁度、電車が着いたみたいだ。さっき時刻表を見ていたのだが、この九時前の時間には、佳奈と杏先輩が住んでる方面からの電車と、成美や渚先輩、心愛や薫が住んでる方面からの電車が、丁度同じ時間にこの駅に着くようになっていた。

もしかすると、皆が一緒にここに来るという可能性もある。

「護君、おはようございます」

俺の背後から、声がかかった。

「おぅ」

慌てて振り返り、葵に挨拶をする。

「杏先輩も悠樹先輩も、おはようございます」

「おはよー」

「おはよう」

葵の家がこの辺りだってことを忘れていた。

「心愛達も今来たみたいですね」

その声にもう一度振り返ると、俺が通った改札から成美達が。向こうのホームから繋がっているであろう階段から佳奈が、こちらに向かっているところだった。あれ? 真弓がいない。

「真弓がまだだね」

「そうみたいですね」

「真弓が遊ぼうって言ったのに」

「すぐに来るでしょう。次電車来るのは、十分後くらいですし」

まぁ、誰にだって遅れることくらいあるだろう。でも、真弓だから、一番最初に来てると思ってたんだけど。


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