青春部
「ここが、青春部?」
俺達の教室がある場所が東棟だとすれば、この場所は北棟となるだろう。その棟の一室に、応接間があった。それを知らせるプレートが掛けられており、すぐに分かった。どうやら、ここが青春部の部室らしい。
「はい。そうです」
「ここって、先生たちが使ったりしないの?」
「私達が入学する前くらいは、ここを使っていたらしいのですが、別の部屋に移動したそうです」
「それで許可がおりたのか」
「そうみたいです」
心愛が話に入ってくる。
「この青春部も最近できたらしいよ」
「そうなんだ」
俺達が入学したのも最近。
心愛は扉をノックする。
「あのー、昨日も来た成宮心愛なんですけど、今日も少し見せてもらってと良いですか?」
声が返ってくる。
「良いわよ。入って」
その声に誘われるように、俺たちは三人は部屋に入った。
〇
「失礼します」
挨拶をし、顔を上げた先には三人の姿があった。
扉から直線上に伸びる位置には三年生のマーク、緑色のリボンをつけた女子がいた。たぶんあれが部長だろう。
その前には同じく緑色のリボン女子。俺から見て左前にいる黄色のリボンをつけた二年生の女子。
俺はその三人を見、一瞬たじろく。
(ちょっとまて)
女子しかいないのだろうか。別に困りはしないわけで、むしろ逆に、こういう状況に対して人並み以上に耐性があるつもりだ。中学の時もそうであった。男友達もそれなりいたが、それよりも女友達の数のほうが多かったような気がする。
「あなた達二人は一日振りだね。そこの彼は?」
部長さんは俺を指す。
「彼は私達と同じクラスの宮永護君です。昨日も言ってあるはずですが……」
「そうだったっけ?」
と部長さんは隣に言う。
その隣の人は見覚えがある。入学式の時、生徒会長として挨拶をしていた。
(生徒会長がこの部活に入ってるのか……?)
「杏はまた忘れたのか? はぁ、宮永君と言ったか。悪いな。杏にはこちらから言い聞かせておくから」
「いえ。気にしないでください」
「そうか。杏」
会長さんは部長さんに振る。
「ん? 何?」
「何? ではないだろう。私達の紹介もしないとダメだろう」
「そうか。うん、そうだね」
一先ず部長さんが立ち上がる。
「私は、この青春部の部長をしている織原杏。本当なら、私の隣にいる佳奈に頼もうとはしたんだけどねぇ……、生徒会長だからってことで断られたのよね。それで、私がね。後、私の事は気軽に杏と呼んでも良いよ」
部長さんは見た目だけで言ってしまえば、生徒会長とは違い活発な女の子、薫や心愛みたいなものだ。部長としてやっているということは、それなりの人望があったりはするのだろう。
「次は私か。と言っても知っている人の方が多いだろう。この学校の生徒会長をしている麻枝佳奈だ。実質あまり参加はできていないが、部長は私みたいなものだ。見てもらったら分かるだろうが、こういう性格だ。私に何でも押し付けてくる」
何だ。さっきは見た目とは反して真面目かと思ったのに。
「まぁ、そうと言っても幼馴染という面から見なくても、良いところはあるから私ばかりではなく、杏にも頼ってやって欲しい」
彼女が言うからには、根は真面目なのだろう。
そんな事をいわれた部長さんは「いやぁ、照れるじゃないか」とか言いながら顔を赤らめている。
「次は悠樹だぞ」
会長さんは、斜め前に座っている子に言う。
悠樹と呼ばれた子は。
「高坂悠樹」
だけ言って、すぐに先ほどまでしていた手芸に戻ってしまった。
「悠樹、それは簡単すぎる。もっと何かいう事があるだろう。趣味とか」
「趣味は、読書」
会話が止まる。
この空気に耐えられなかった俺は質問した。
「今は……、何を編んでいるんですか?」
「内緒」
またしても沈黙が訪れる。
今度は、部長がその沈黙を割った。
「ま、まぁ。悠樹はいつもこうだからー。後二人いるんだけど今日は来てないから、次来た時にでも紹介するね」
それを合図にしてか、チャイムが鳴る。
「チャイム鳴ったね。今日は紹介だけになっちゃったけど………、また明日ってことで。それじゃ解散!」