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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜五章〜
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お見舞い #1

遥は、驚きで口を聞くことが出来なかった。

図書委員長なのだから、このパソコンに借りた本の記録が残るということは、無論知っている。だから、朝、この本を借りにきた時、一瞬躊躇したのだ。

だけど、借りてしまった。基本、生徒から頼まれた時しか、このパソコンは触らないから、安心だと思っていたのだ。その思いは、残念ながら間違っていたらしい。

「遥も恋してるんだね? 」

赤面してる遥に追い打ちをかけるかのように、美魅音は、言葉を遥にかける。

「い、あ…………、別に………………」

遥の口から出たのは、否定の言葉だった。

護のことは好きだ。しかし、それは、一目惚れに近いものだった。そこから、護の優しさに触れ、そう思うようになったのだ。

でも、遥は、恋をしたことが、これまでに無かった。だから、この護のことが好きという気持ちが、本当に「好き」というものなのかが、分からない。

「ふぅん……? この本を借りておいて? 」

「わ、分からないんです…………」

「分からない? 何がさ」

「今、好きだと思うこの気持ちが本当なのかどうか、それが分からないんです」

半分ヤケクソで遥は、思いの丈を美魅音にぶつけた。


「護が風邪を引いてるというのは、もう皆知ってることだと思う」

護以外の全員が集まった青春部の部室で、杏は、大声をあげる。

その杏の声に、佳奈、成美、渚、悠樹、心愛、薫、葵の七人、そして佳奈の横にいる真弓も頷く。

佳奈が続くように、言葉を作る。

「さっきも言ったが、これから皆で、護の家に行く。だけど、お見舞いだということを忘れないで欲しい」

「佳奈の言う通りだね。はしゃがないようにね。護に迷惑はかけられないし」

……本当に、大丈夫かな……。

杏のその言葉に、少し不安を覚える。

……まぁ、良いか……。

少々騒がしくなってしまうだろうが、楽しくなるのは間違いなく分かる。護に元気になってもらうのなら、これが、一番良いのかもしれない。

「それじゃ、護の家に出発!! 」

同じように大声を出した杏に、また同じように、八人は頷いた。


青春部の皆、そして真弓が家に向っている途中、護の熱は、大方下がっていた。

昼からずっと護の側にいた沙耶には、熱を測らなくてもすぐに分かった。

でも一応、念の為に。

「はい、護。体温計持ってきたよ」

「ありがとう」

護が熱を測っている間、沙耶は、部屋の窓を開けて、外を眺めることにした。ちょっとした時間潰し。

窓を開けると、少し生温く夏の始まりをちょっと感じることの出来る風が吹き、その風が、沙耶のポニーテールを静かに揺らす。

「すぅ…………はぁ…………」

そんな風が吹き止んでから、沙耶は、大きく深呼吸をした。

時間はもうすぐで五時になる。そろそろ日が暮れてくるころ合いだ。

同じ空を見ているとしても、ここから見る空の景色と、昨日、魅散の家から見た景色とは、感じるものが全くといっていいほど、違うかった。

……また行きたいな……。

と、沙耶は思う。無論、護を連れてだ。護と一緒に行った方がより楽しくなるのだ。

ふと、沙耶は、視線を目の前の空から、御崎高校の方に移動させる。

「ん…………? 」

六人七人を超える女の子が、ひとかたまりになって歩いている姿を、沙耶は、視界の端に捉えた。

それ凝視しようとしたが、護の熱を測っている体温計が、熱を測り終えたことを音で伝えてくれたので、窓を閉め、護の元に戻った。


体温計が鳴ったので脇から取り出して、確認してみる。

三十六度八分。

これが今の俺の体温だった。

「もう大丈夫だな」

姉ちゃんにも、体温計を見せて、大丈夫だということを伝える。

これで安心だ。

「すぐ下がって良かったね、護」

「あぁ、本当にそう思う」

姉ちゃんが三十八度くらいあると言っていたから、熱が下がるまでもうちょっと時間がかかると思ってた。まぁ、これで明日から学校行けるし、皆に心配をかけずに済む。

「あれ…………? 」

何かを忘れているような気がする。

「姉ちゃん、明日って何日? 」

「十一日だよ」

十一日…………。六月十一日……。

「思い出した。明日、学校休みだ」

「あぁ、記念日だっけ」

危ない危ない。金曜日に、先生がそんなことを言っていた。忘れるところだった。

ピンポーン。

一息ついたところで、家のチャイムが鳴る。誰だろうか。

「私が見てくるね。熱ないけど、寝てなさいね? 」

ここで油断してたら、また熱が振り返すかもしれないし。

「分かってる」

俺が頷いたのを確認すると、姉ちゃんは、大急ぎで階段を下っていった。

「よっと……」

まぁ、寝ていた方が良いのは確かだが、ちょっとくらい良いだろう。誰が来ているのかも気になるし、もしかしたら、薫とかが来てくれたのかもしれないし。

そう思いながら、俺はゆっくりと玄関に向かった。



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