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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜五章〜
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風邪 #1

朝。

もうそろそろ五時になろうとする時刻、魅散は、ゆっくりと目を覚ました。案の定、他の三人は、まだぐっすりと寝ている。でも、時間だ。起こさなければならない。

「んっっ…………、ふぁぅ…………」

魅散は立ち上がると、背伸びをした。

それから、また座り込んで、護に声をかける。

「護くーん。朝だよー」

まずは、声をかけてみるだけにしてみる。

「………っ」

護は、ちょっと反応をしてくれるが、起きる気配は無い。

「ふふ………」

だから、魅散は、護の耳元に口を近づけて、囁いた。

「護君。起きないと〜、襲っちゃうよ? 」

そう言いながら、魅散は、護の耳たぶを、はむっと甘噛みしてみた。しかし、それでも護は起きない。

……おっかしいなぁ……。

これで起きてくれると思っていたので、魅散の予想は外れた。

「本当に………、襲っちゃうよ? 護君」

魅散は、自分の唇を護のそれに近づけて、声を出した。

それでも、護は起きようとはしない。その護の頬は、心持ち赤いようなそんな気がする。

そう思った魅散は、キスをしてしまおうかとも思っていたが、そんな気持ちを払拭して、護のおでこに自分のおでこを当ててみる。

「うーん…………」

自分のより、少しだけ熱いような気がする。でも、それほど気にしなくてもいいレベルのものかもしれない。

「大丈夫かな…………」

もし風邪だとするなら。

「キスしたら、治る…………? 」

おでこから離れ、護の唇に視線を注ぐ。

「魅散…………」

「ひゃぁっ…………!?

唐突に声をかけられ、魅散は、護からバッと離れる。

「起きてるならそう言ってよ…………」

魅散は、ホッと胸を撫で下ろす。

「キスしたいなら、しても良いわよ? 」

自分が何をしようとしていたのか、沙耶にはバレている。

「いいわ。するなら、起きてる時にするよ……」

「そうしときなさい。で、護、熱あるの? 」

「微熱程度だと思うよ? そんなに熱いわけではないから」

「そう? 」

沙耶も身体を起こして、また寝ている雪菜を起こさないようにして、護の元にやってくる。

そして、自分と同じようにおでこを触り。

「まぁ、これくらいなら大丈夫」

「そうよね」

沙耶のその言葉に、魅散は頷いた。

「話変わるんだけどさ……」

護を起こすのは沙耶に任せるとして、魅散は立ち上がり、キッチンの方へと移動する。

「ん? 何? 」

「電車で帰る? それとも私が送ろうか? 」

「電車で帰るよ。泊めってもらったわけだし、これ以上、迷惑かけられないよ」

「別に気を使わなくて良いのよ? 私と沙耶の仲なんだからさ」

「時間もかかるし、大丈夫よ」

「本当に? 」

「えぇ」


目をあけると、すぐ近くに魅散さんの顔があった。

……………………。

何か、前にもこんなことがあったことがある。やめてほしい。びっくりするし、この距離の近さは、色々とまずい。

「魅散さん…………」

「何かな……? 」

魅散さんが喋ると、魅散さんの息が直接俺に触れる。

「何してるんですか……? 」

「護君を見てるの」

まぁ、それは分かってるんですけど、俺が聞きたかったのは、それじゃない。

「そうじゃなくて、何で俺の上に乗ってるんですか……? 」

「護君を見るためだよ」

「………………」

それだけなのに、俺の上に乗る必要はあるのだろうか。何かそれを考えると、少し頭が痛くなってくる。ていうか、本当に、頭が痛いような気もする。風邪でもひいたかな。

まぁ、大丈夫だろう。そんな気にするほどのものではないと思う。

「起きれないんですけど……」

「ん? あぁ、そうだね」

名残り惜しそうな感じで、魅散さんは、俺の上から離れてくれる。ようやく、俺は、起き上がることが出来た。

横に目をやると、雪ちゃんはまだ寝ていた。姉ちゃんは、もう起きている。部屋にはいないようだけど。また魅散さんの部屋にでも行ってるのだろうか。

「沙耶がここに戻ってきたらすぐ出るって言ってたけど、護君もそれで良いよね? 」

部屋につけられている時計に目をやると、五時を少し過ぎたところだった。

「はい」

この時間なら、家に戻ると七時半くらいだろう。八時半には学校に着いておかないとマズイから、ギリギリな感じだ。

俺も、そろそろ準備しないといけないな……。


それからすぐ姉ちゃんが戻ってきたので、俺は急いで準備をした。

「本当に、ありがとうございました」

帰る間際、ちゃんと魅散さんにお礼を言った。危ない危ない。言い忘れるところだった。

「また来てね」

「えぇ」

時間が取れるなら、また来たい。思い出に触れることも出来るわけだし。

「ありがとね、魅散」

「うん。あ、沙耶」

魅散さんは、何かを思い出したような顔をして、姉ちゃんに耳打ちをした。何の話だろうか、少し気になる。

「ん、分かってる。それじゃ、また」

「ばいばーい」

ちなみに、雪ちゃんは起きてこなかった。本当なら、直接お礼を言いたかったのだが、とても気持ち良さそうに寝てたし、起こすのは、忍びなかった。後で、お礼のメールを送っておこう。

「護、急ぐよ」

「分かった」

魅散さんと別れてすぐ、俺と姉ちゃんは、もうダッシュで鳥宮駅に向かった。現時刻は、五時十五分。後十五分で駅に着かないと、電車を一本逃すことになってしまう。

そうなると、家に着く時間が二十分ほど遅れてしまう。そうすると、大変だ。すぐ制服に着替えて、すぐに家を出なくてはならない。

十五分で駅まで、無理ゲーだ……。


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