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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜サイドストーリー〜
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またまた泊まり #2

魅散さんの手を借りて、そのまま立ち上がろうとしたのだが、俺の手を握った魅散さんは、そのまま手を引いて、自分の方に俺を抱き寄せた。

「…………わっ……」

今度は、正面から抱きつかれた。魅散さんの柔らかいものが、俺にこれでもかっというほどに押し付けられる。

何だろうか。抱きつかれるのは恥ずかしいし、心臓もバクバクいっていて、それは魅散さんにも、伝わってるだろう。

でも、何か、慣れてしまった。姉ちゃんにも昔からよく抱きつかれていたし、今日みたいにここに泊まった時は、魅散さんに抱きつかれることが常となっていたからだ。

これって、慣れてしまったも良いものなのだろうか……? 分からん。


「護君……? 」

おもむろに、魅散は、護を抱き寄せた。びっくりさせてやろう、という思いを込めて。

しかし、護が驚いたのは、最初に魅散がてを引いたという動作にで、抱きつかれていることには、何も思っていないような気がする。心臓の鼓動は聞こえているが。

「何ですか……? 」

自分に抱きつかれているというのに、護の反応は、至って普通。魅散の身近にいる男の子で、こういう反応を示すのは、護だけ。

他の仲の良い男の子は、少なからず驚いた表情を浮かべ、少し抵抗を見せる。

……でも、むかしは護君もそうだったっけ……。

「抱きつかれることに、慣れてる……? 」

一つの疑問を持って、魅散は、護に聞いた。

「そうかもしれません……」

何故か、護はどんよりした顔で言う。

「そっか……。沙耶に抱きつかれてるもんね」

「そうです…………。多分、それで慣れたのかもしれません……」

「なるほどねぇ」

魅散は、さらに、護を力強く抱きしめる。

「魅散さん…………? 」

「ん? 」

「何かあったりしたんですか? 」

護は、心配そうに聞いてくる。

「別に何もないけど………、どうして? 」

「姉ちゃんがそうなんですよ」

「へぇ。そうなんだ……」

魅散から見た沙耶は、いつも元気で周りを引っ張って行ってくれるイメージがあって、親友になって長い時間が経つが、沙耶が落ち込んでいる姿をみたことはそんなにない。せいぜい、片手で数えられる程度だ。

だから、魅散は納得する。護に抱きつくことによって、そういう気分を払拭していたのだと、分かったから。

「で、そろそろ布団取りに行きませんか…………」

護の表情を見る限り、言葉を聞いている限り、自分を保っているように思える。しかし、さっきと同じように、それよりも、心臓の鼓動は、速くなってきている。

「そうだねぇ……」

そう言いながらも、魅散は、護を離そうとはしない。まだ、こうしていたいから。護に抱きつくと、気持ちが落ち着く。

沙耶が抱きつく理由が分かったような、そんな気がした。


あれから何分くらい抱きつかれていただろうか。ようやく、魅散さんの抱擁から解放された。むやみに、離れてくださいなんてこともいえないし、為されるがままにしていた。別に、損することは無いわけだし。

あ、でも、雪ちゃんにもうちょっと見られそうだったし、危なかった。

魅散さんが俺から離れてからすぐ、この部屋の扉が開いて雪ちゃんが戻ってきたのだ。後少しでも遅かったら、俺と魅散さんが抱き合っていた姿を見られていたことだろう。

もし見られていたら、どうなっていたのだろうか……。考えるだけで、恐ろしい……。

で、雪ちゃんも戻ってきたことだし、三人で魅散さんの部屋に、布団を取りにいくことにした。

姉ちゃんは、さっきからずっと魅散さんの部屋にいるそうだし、皆が自分の分だけ布団を持てば、それで済む。誰かが二つ運んだりしなくても良くなった。


雪菜は、魅散と護の後ろを歩く。本当なら、護の横を歩きたい。だけど、残念なことに、三人が横に並びながら歩けるほど、家の廊下の巾は広く無い。

…………むぅ…………。

雪菜は、一つの違和感を感じ取っていた。

護から魅散の匂いが、魅散から護の匂いがする。これが、雪菜が感じた違和感だ。

自分がお風呂に入っていた間、魅散と護は、隣同士で座っていたのだろうと思う。別に、それについては何も言わない。

だけど、ただそれだけのことで、ここまで互いの匂いが移るものなかなぁと、勘ぐってしまう。

もっと何か、別のことをしていた、そんな気がする。

……あ……。

雪菜は、護の姉の沙耶が言っていたことを思い出す。「護に抱きつくと、気分が良くなるんだよね」と、そう言っていた。

その点については、雪菜も同感だ。ずっとこのままでいたいと、そう思える。

……もしかして、お姉ちゃんもそう思ってる……?

そう思っているとするなら、魅散は、自分が部屋に戻ってくるまでの間、護と抱き合っていたということになる。

もしそうなら、ここまでに互いに移っている匂いのことも、分かる。

……まーくんったら……。

その抱きつくという行動に理由があるなら、それで自分が納得出来る理由なら、護は、これを断ったりはしない。それが、どんなお願いであってもだ。護は、心の底から優しいから。

だから、魅散が、そうした理由も分かる。立場が逆であったなら、自分もそうしていただろうと、思うからだ。いや、絶対にしていたと思う。

「雪菜」

「え、わ……、何……? 」

唐突に、魅散から声がかかる。

来るとは思っていなかったら、一瞬、言葉に詰まってしまう。

「この柱、覚えてるよね」

そう言って、魅散は、自分の部屋に向かう通路の曲がり角に出ている大きな柱を、指差した。

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