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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜サイドストーリー〜
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またまた泊まり #1

「…………はい? 」

ん? 今、魅散さん何て言った? 泊まる? 今日? ここに?

「お姉ちゃんっ!? 」

ほら、雪ちゃんだって、魅散さんの唐突すぎる言葉に驚いている。

「だからね? 今日泊まらない? 久し振りに来たわけなんだしさ」

「私は泊まりたいなー」

姉ちゃんはこちらを振り返り、俺を見ながらそう言う。

泊まって良いと言ってくれるなら泊まりたいが、今日日曜日だし、明日からまた学校が始まる。

「学校ありますし……」

「それなら問題無いよ。私が朝早くに送ってあげるから」

「でも…………」

負担がかかるのは、魅散さんだ。無理をさせるわけにはいかないし。

「気にしなくて良いよ? 」

「じゃ……、お願いします……」

「うん」

何だろうか。俺って、押しに弱いのかな。断る要素もないし、別に良かったのかもしれない。

まぁ、色々と変な予感しかしないんだけど……。

「まーくん……」

「ん……? 」

俺は、雪ちゃんの方を向く。

「何か………、ゴメンね……」

雪ちゃんは、申し訳なさそうに言う。

「良いよ。何か昔に戻ったみたいだし」


その護の言葉を受けて、雪菜は、ちょっと昔のことを思い出してみる。

まだ小学生の頃、護と沙耶は、泊まりにくることがあった。

別に、それが目的ではない。いつの間にか成り行きで、いつもこういう感じになっていたのだ。

……まーくん……。

その頃は、自分が一番護と近い距離にいた同世代の女の子だったかもしれないと思うと、少しだけ思うものがある。昔から、気持ちに気づいておけばな、と。

気持ちを使えられていたか、そうでないかは別として。

……あ……。

護が昔みたいに泊まっていってくれるのは、嬉しい。だけど。

……まーくんは、どこで寝るの?

基本、雪菜は、この部屋に魅散と一緒に布団で寝ている。

昔は、ここに同じように布団を並べて護と沙耶とも寝た。

しかし、雪菜と護が高校生となった今、もうそれは出来ない。一緒に寝たいという思いがあっても、護は何もしないと信じていてもだ。


……成功成功……。

魅散は、心の中でやったと思う。

昔のように、ここで皆と夜を過ごせるのだ。これほど楽しくて、面白いことはあまりない。

「魅散……、魅散」

「ん? 何? 」

「いつまで皿洗ってるのよ。もう終わったわよ? 」

沙耶は、もうすでに洗い終わっていて、まだ洗えていなかったのは、今から自分が持っているやつだけだった。

「ゴメンゴメン」

そう言って、水道を止め、魅散は皿の水を切り食器棚にへと持っていく。

「楽しそうにしてるわね。魅散」

「そうかな? 」

「うん、してる」

そう言われてみれば、自分でもそんな気がする。

こうやって、護、雪菜、沙耶、魅散の四人で過ごすのが久し振りだから。

……何しようかしら……。

魅散は密かに、何かを企んでいる表情を浮かべるのだった。


俺と姉ちゃんが泊まるということになってから、俺以外の三人の表情が、何故か、よくなっているようなそんな雰囲気がした。

それが何かを考えている内に、どんどんと物事は進んで行き、時間も経っていく。

……九時か……。

いつになったら寝る準備をするのかそれは分からないが、そろそろ眠たくなって来た。

「トイレ借りますねー」

目の前で、ぐだぁ、としている魅散さんに声をかけて、俺は部屋から出る。魅散さんは、肩が出ているブラウスを着ていて、そんな感じで机にもたれかかっていると、その圧倒的な存在感を持っているぷにっとしていて柔らかいものが、こちらの目を刺激するのだ。

目線を外そうとしても、魅散さんも何故かずっと俺を見ていたし、外そうにも外せなかった。だから、俺は部屋を出たのだ。

姉ちゃんと雪ちゃんはこの部屋にいなかったし。姉ちゃんは、何でか知らないが魅散さんの部屋に行っていて、雪ちゃんは、お風呂に入っている。

ちなみに、トイレは、この廊下を真っ直ぐ歩いて左に曲がった先の突き当たりにある。脱衣所もそこにあるのだが、カーテンとか仕切りがあるし、大丈夫だろう。

そう思って、扉に手をかけようとすると。

「おっと……」

ズボンのポケットに入れていた携帯が震えた。

誰からだろうか。

出るのが遅くなってもいけないので、俺は、なるべく早く携帯を取り出し、相手を確認することもせずに、携帯を耳に当てた。

「もしもし? 」

「あ、護? 私だ」

「佳奈先輩っ!? 大丈夫なんですか? 」

何とびっくり。佳奈先輩からだった。

「あぁ、もう平気だ」

「良かった」

声を聞く限り、本当に大丈夫そうだ。はぁ、良かった。

「迷惑かけたな…………」

「そんな、迷惑だなんて思ってませんよ」

「ありがとう。そう言ってくれて」

佳奈先輩は、優しくそう言ってくれる。

「いえ」

「そういえば……」

何かを思い出したように、佳奈先輩は、声を作った。

「どうかしましたか? 」

「敬語……、外すんじゃないのか? 」

「う…………」

すっかりと忘れていた。耳掃除をしていた時だっけか。そんな約束をしたはずだ。

その時も一回普通に喋ってしまって、そう言われたような気がする。

佳奈先輩が寝込んでいる時は、ずっと敬語で喋っていたし、佳奈先輩も、本当に、今思い出したって感じだ。

「敬語を外しては欲しいが、強要はしない。護が好きな時に外してくれたら良い。先輩と呼ばれるのも良いものだしな」

「はぁ…………」

「まぁ、用はそれだけだ。護に伝えたくてな。元気になったと」

佳奈せ………、佳奈は、言葉を続ける。

「時間とらせたな。悪い」

「いえ、気にしないでください」

これで、ある意味時間潰すことが出来たし、良かった。

「そうか。護も風邪ひくなよ? 」

「大丈夫です。俺は元気ですから」

「もし、護が風邪ひいたら、私が看病してやるからな」

おぉ、何かそれはとても良いような、至福のひと時を過ごせそうな、そんな気がする。

「そうなった時は、お願いします」

「ふふ。じゃ、また明日な」

「はい」




「…………あ」

お風呂から出て、身体を拭き終わった後、雪菜は、気付いた。自分が、着替えを持って来ていないということに。

「はぁ…………」

忘れてしまったものは、仕方ない。

だから、雪菜は、近くにあったバスタオルを身体に巻き付けて、脱衣所のカーテンを開けて、外に出るために、ドアノブに手をかけようとした。その時。

「あ…………。まーくん」

この扉の向こうに、護がいるようなそんな気がした。

「あ、もしもし? 」

そう思った瞬間、護の声が聞こえてくる。

雪菜は慌てて、出したその手をさっと引っ込める。

……どうしよう……。

この扉の前で電話をしているということは、恐らくトイレをしようとここに来たのだろう。

電話が終わり次第、護はこちらに来るだろうし、トイレには隠れることが出来ない。

だからといって、ずっとここにいるわけにもいかない。護に、バスタオル一枚の姿を見られるわけにはいかない。

そんな姿を見られてしまったら、自分がどうにかなってしまいそうだから。

……まーくん……。

雪菜は願う。どうかこの場所から離れて欲しいと。

雪菜はそう思いながら、洗面台の前に自身の身体を移動させる。

……ふぅ……。

洗面台の前に立った雪菜は、おもむろに、自分の身体を隠していたバスタオルを取った。

雪菜のその身体が、鑑に映し出される。

そっと、自分の身体を見下ろす。

「はぁ…………」

そして、ため息をつく。

魅散みたいに、沙耶みたいに、スタイルが良ければ、恥ずかしいけど見られても構わない。だけど、こんな凹凸の小さい身体では、恥ずかしさが先に出てしまう。

「はぁ………………」

雪菜は、もう一回ため息をついた。どうして、姉妹の間でこんなにも差があるのだろうと思いながら。


部屋に戻ると、俺が部屋から出た時と同じように、魅散さんがいるだけだった。どうやら、姉ちゃんは、まだ戻ってきてないらしい。

「戻りました」

そう魅散さんに声をかけてから、さっきと同じように座った。

おや? 魅散さんから声が返ってこない。

魅散さんに視線を送ってみると、目を閉じていて、気持ち良さそうに寝ていた。

まぁ、眠たいのは分かる。

俺だって、昨日色々あって寝れていないし、よく一日持ったなぁ、と自分ながら思っている。

出来ることなら、すぐ布団を出してきて寝たいものだが、そうはいかないんだろうな、と思う。

「魅散さーん。起きてー」

俺は立ち上がって、魅散さんはゆさゆさと揺さぶった。

今寝てしまったら、後から寝れなくなるかもしれないし、そうなってしまったら、魅散さんに振り回されるのは、間違いなく俺だ。また寝れなくなってしまう。

それだけは、どうしても避けたい。二日も寝ないとなれば、色々支障が出てきそうだし……。


「……っ」

護が扉の向こうにいることを思い出し、雪菜は、慌ててバスタオルをもう一回身体に巻く。

「…………あれ? 」

護の声が聞こえなくなっている。

扉に近づいてみても、それは変わらない。

そぉっと扉を開けて、外を確認する。

「いない………」

さっきはいたはずの護が、今はいなかった。

「…………? 」

いない、ということは、トイレをしにきたのではなかったのいうことなのだろうか。それとも、自分がもうお風呂から上がっているということを察知して、扉を開けないでいてくれたのだろうか。

どっちなのかは、護本人に聞いてみないとわからない。でも、後者だったら良いなと、雪菜は思う。そっちの方が、護の優しさを感じることが出来るからだ。

「今のうちに…………」

護以外でも、この格好を見られると恥ずかしいので、雪菜は、早足で自分の部屋に向かった。


魅散は、護が部屋に戻ってきたことに気付いた。だから、寝たふりをした。特に理由は無いのだけれど。

「魅散さん。起きてー」

やはり、護は起こしてくる。自分の身体が、護によって揺さぶられているのを感じる。

「起きてるよー……」

あたかも、今目を覚ましたかのように、魅散は、護に返事をした。

「目瞑ってたら、寝てしまいますよ…………」

「だねー」

わざとらしく目をこすり、魅散は、身体を起こす。

「あ、そうだ。護君」

「どうしました? 」

「護君も、ここで私達と一緒に寝るんだからね? 」

「……………………え? 」

思っていた通りの反応を、護がしてくれたことに対して、魅散は。

……護君は昔から変わってないなぁ……。

と、思う。

「この家の間取り、護君知ってるよね」

「えぇ、まぁ…………」

「なら、寝る場所はここしかないでしょ? 」

キッチンとここの和室。後は、魅散の部屋と雪菜の部屋。その他の部屋は物置などとなっていて、使える部屋はない。

「それに、昔はここで皆で寝てたわけだし……、ね? 」

「今は、俺高校生ですよ? 」

「大丈夫。護君の事、信じてるからさ〜」

「まぁ……、その……、ありがとうございます」

護は、俯き加減でそう言う。

「じゃ、布団取りにいくからさ、ついてきてくれない? 」

魅散は先に立ち上がり、座っている護に手を差し伸ばした。

「えぇ。分かりました」

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