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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜四章〜
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勇気 #5

そんなこんなで、今に至る。

佳奈の部屋で、俺、佳奈、咲夜さん、と集まっているのだけど、さっきから二人が俺のほうをじっと見ている。

「…………。佳奈、咲夜さん……。どうかしましたか……? 」

耐えきれなかった。二人に見つめ続けられているということに。

「いや……。な、なんでもないぞ……? 」

「なんでもございませんよ? 」

何やら顔を少し赤らめながら、もじもじしている佳奈と、にやにやと不気味な笑みを浮かべている咲夜さん。恐ろしい…………。

「そ、そうですか…………」

またしても、無言になる。

時間は刻々と刻まれていって、十一時を回ってしまっていた。

佳奈は、さっきから何かを言おうとして俺の目を見て、顔を伏せるという動作を数回繰り返していて、咲夜さんは、それをずっと俺を見ていた時と同じ笑顔で見ている。

「そろそろ……、寝ませんか……? もうこんな時間ですし……」

「あ、あぁ……、そうだな。護は明日も出かけるんだったな……」

「はい……」

と言っても、俺はどこで寝ればいいのだろうか。部屋は沢山あるようだし…………。

「護様」

「な、なんでしょうか……」

ニヤニヤしていた咲夜さんが、その表情のまま、俺の名を呼んだ。嫌な予感がする…………。

「護様には、佳奈お嬢様と一緒に寝てもらいます」

「へぇ……。そうですか…………」

佳奈と一緒にねぇ………………。

ん?

「何て言いました? 今…………」

「護様には、この部屋で寝てもらうと言ったのですよ」

「……………………。マジで……? 」

どうやら、俺の聞き間違いではないらしい。

「はい。大マジですよ」

「佳奈……」

俺は助けを求めるように、佳奈のほうを見た。

「悪い……、護……」

「へ…………? 」

何故佳奈が謝るんですか…………。

「最初に提案したのは……、その…………、私なのだ……」

「ささ、護様。諦めてください」

この咲夜さんの表情を見る限り、俺がいない間に決めていたことなのだろう。本当に、いつ決めたのだか…………。

「他の部屋…………、余ってますよね……? 」

「えぇ。それはもう大量に」

「なら……」

「部屋はあるのですが、布団が無いんです。佳奈お嬢様と私。それとお父様とお母様の物しか」

「…………」

「他の人が泊まるということがあまり無いものですから……」

「そうですか……。それなら、仕方ないですね…………」

俺が折れるほか、選択肢は無かった。


……咲夜のやつ……。

護と咲夜のやりとりを見ていて、佳奈は思う。咲夜が珍しく嘘をついたと。

部屋が余っているということは、その部屋毎に合うように、ベットか不安か、どちらかの寝具がきちんと置いてある。この家で、何かしらのパーティー等を開催した後は、ホテルのように来客を泊めることが可能なほどにだ。

……また咲夜には感謝しないとな……。

護がこの家の事を知らないから、咲夜は護を騙すことが出来たのだ。

その結果、佳奈はこの部屋で護と一緒に寝ることが出来る。

護は悠樹達を家に泊めたことがあると言っていたが、高校生の男女二人が一緒に寝るということに対しては、抵抗を示すかもしれない。いくら護が、押しに弱いとしても。

「佳奈お嬢様、佳奈お嬢様」

咲夜が耳打ちをしてくる。何か護に聞かれたら困ることでもあるのだろうか。

「ん? どうした? 」

「佳奈お嬢様のベットは広いですから、護様と一緒に寝てくださいね? 」

「……は? 」

「布団等は無い、という設定にしたものですから……」

「仕方ない……と……? 」

「はい。そういうことです」

咲夜はあっけらかんと言う。

護と一緒に寝たいということは、佳奈も強く思っていたことだ。だが、一緒のベットで寝るとなれば、話は別だ。

「本当に、そうしないと駄目なのか…………? 」

「佳奈お嬢様が嫌と仰るのなら、私が護様と一緒に寝ますよ? 護様といると楽しいですし」

「分かった…………。私一人じゃたぶん気持ちが持てないから、出来ることなら、咲夜もいてくれ。ベット三人でも寝れるだろうし…………」

「私は構いませんが……。恐らくそれ、護様を余計に苦しめることになるかもしれませんよ……? 」

「そこは護に我慢してもらうしかないだろう……」

「大変ですね。護様は…………」

咲夜はしみじみとそんな事を言う。

「大丈夫だろう。部活では毎回女子に囲まれているようなものだし……」

「なら……、大丈夫かもですね……」


「それじゃ、私はお風呂入ってきますね」

「あぁ……」

「すぐに戻ってきますので」

どうやら話が終わったらしい。何やら俺に聞かれたらまずい事でもあったのだろうか。

咲夜さんは、すたすたと部屋から出ていく。

「ま、護…………」

「どうしました? 」

「もう……、寝るか……? 」

「うーん……。咲夜さんを待ちましょうか」

「そうか……、うん。そうだな……」

「思ったんですけど……」

この部屋で寝ることを、しぶしぶと承諾した俺だったが、一つの疑問を覚えそれを佳奈に投げかけた。

「ん……? 」

「俺、この部屋で寝るんですよね? 」

「あぁ、そうだな」

「でも……、布団余って無いんですよね……? 」

「うん」

ということは…………。

「俺と佳奈は、一緒のベットで寝るってことですよね………………? 」

「まぁ、そうなるな」

佳奈の対面に座っているこの状況で、佳奈の向こう側に置かれているベットに目をやる。

……まぁ、大きいし……。

俺のベットで、悠樹と成美に挟まれて寝ていた時より、安心出来るのかもしれない。俺のベットはシングルベッドだったし、色々と大変だった。

「仕方ないんですね……」


護は少し諦めた顔付きで、息をもらした。

「なぁ、護」

「ん? 」

佳奈は護の隣に移動し、護の耳元であることを囁いた。

この部屋には二人しかいないのだから、わざわざそんな事をする必要は無かったのかもしれないが……。

「え…………? 」

護はこちらの予想通り、驚きの表情を浮かべた。護はそれ以外にも別の表情を浮かべていたが、それが何なのか佳奈は分からなかった。

「駄目か…………? 」

「駄目だというわけではないんですけど……。そんな事をしてもらうのは……」

「私がしたいと言ってるんだ。こんな機会はもう無いと思うぞ? 」

「それはそうですけど……」

「なら、私がした後、護も私にしてくれ。それでおあいこだ」

「分かりました…………」

護はようやく折れてくれた。

……ふぅ、良かった……。

「じゃ、護」

佳奈は正座し、自分の膝をポンポンとする。

「膝枕……ですか……? 」

「あぁ。そうしないとできないからな……」

「そ、そうですね……。それじゃ、失礼します」

「あぁ」

護の頭が、佳奈の膝の上に乗る。

「はぁ……」

佳奈の手は自然と護の髪の毛にいく。護の頭を撫でるためだ。

……そういえば、護に頭を撫でられると気持ち良いと成美が言っていたな……。

佳奈はふと、そんなことを思い出した。

なら、後でやってもらおうと、佳奈は心に決める。

「佳奈……? 」

……はぁ、落ち着く……。

「佳奈……!! 」

「はぁっ! ど、どうした……? 」

「頭撫でてもらうのは嬉しいんですけど……」

「あ、悪い……。じゃ、やるぞ……? 」

「はい」


数秒後、先に声を洩らしたのは佳奈だった。

「護……。気持ち良いか……? 」

「はい。もう少し……、強くしてもらっても良いですよ……? 」

「そ、そうか……? 」

「えぇ」

佳奈は、少しだけ使っている手に力を込める。

「こ、これで良いのか……? 」

「そ、そうです……」

護は気持ち良いのか、その表情はいつもより柔和なものになっている。

佳奈は、そんな護の表情につられる。

……こんなことが出来るとはな……。

出会った当初は、こんなことを出来る仲になるとは思っていなかった。護も恐らくそう思ってくれていることだろう。

「佳奈……? 」

「どうした? もしかして……、痛かったか……? 」

「いえ……。そうじゃないです……」

「じゃ……、どうしたんだ……? 」

「敬語……、外して良いですか……? 」

「別に構わないが……、急にどうしたんだ……? 」

「佳奈も言っていたじゃないですか。出来ればそっちの方が良いって……」

「そうだったな……」

植物園にいた時、それに似たようなことを言ったなぁ、と思い出す。

「なら、良いですよね? 」

「あぁ」

「ありがとう」

護がニッコリと微笑む。

……っっ……。

その唐突な護の笑顔に、佳奈の心はぐらっと動かされる。

「じゃ、次は護がやってくれ……」

「おう」


入れ替わるように、今度は俺が佳奈を膝枕する。

……何かすごい感覚……。

今までに感じたことの無い快感を持って、俺の膝に衝撃が与えられる。

「髪……、触りますね……」

「あぁ。構わないが、敬語に戻ってるぞ……? 」

「あ……。ゴメン……」

気を抜くと、いつも使い慣れている言葉使いに戻ってしまう。

「護の身体のほうに、顔…….、向けても良いか? 」

「うん……」

佳奈はもぞもぞと、俺の膝の上で動く。

佳奈は一度俺の目を見てから、俺の身体の方を向いた。

ちなみちに俺は今の佳奈と逆の方向を向いていた。だって色々と恥ずかしいし…。

「それじゃ……、やるよ……? 」

「うんっ」

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