事件の後の憩いの場はデートのようで #4
「段々と、暑くなってきたものだな」
「そうですね」
佳奈の言葉に俺は頷く。
今日は六月九日。春の過ごしやすい暖かさはとうに過ぎて行き、夏の訪れを、少しずつ感じる事が出来る。
「護は、どの季節が一番好きだ? 」
「秋ですかね・・・・・・」
「秋か・・・・・・。理由は? 」
「紅葉とかそういうのんびりとできるものが好きなんですよ。他にも、食べ物も美味しいですし、読書の秋とも言いますから」
「なるほど・・・・・・」
「そういう佳奈は、どうなんですか? 」
「私か? 私は夏が好きだな」
「夏ですか? 俺はあんまりですね・・・・・・」
「まぁ、暑いのは私もそんなに好きではないが、泳ぐのが好きなんだ」
「そうだったんですね」
「何だ? 護は泳げないのか? 」
「いえ。そういうわけではないですけど。得意ではないです」
「なら、夏になったら私が教えてやる。護が得意になれるように。これは約束だ」
佳奈は右手の小指を俺に向けて来る。
「お願いします」
俺は左手の小指を出し、佳奈に応える。
「うん。楽しみにしているぞ? 」
佳奈は、ニッコリと微笑む。この佳奈の笑みは、今日一番なような気がした。
「お楽しみのところ悪いけどさ、アイス出来てるよ? 」
そんな俺達の間に、割って入ってくる声があった。店員の声だ。
「すいません」
俺達は謝りをいれ、それぞれ、俺は抹茶、佳奈はマロンのアイスを受け取る。
「それじゃ、お楽しみに」
店員は、意味深の笑みを浮かべ、そのまま店に戻って行った。
「あの店員さんには、俺たちの事どう映ってたんでしょうね? 」
俺は抹茶のアイスを一口食べてから、佳奈に問いかけてみた。
「あの店員さんには、俺達の事どう映ってたんでしょうね? 」
護は、唐突に聞いてきた。
・・・・・・護、君はどういう意図を持ってこの問いをしたんだ?
そう思いながらも佳奈は、自分が思っている事を口にする。
「彼氏彼女の関係に見られていたら、それは喜ばしいことだな」
「そ、そうですね。俺もそう見られていたら嬉しいです」
・・・・・・ストレートに言われると恥ずかしいものだな・・・・・・。
「佳奈は・・・・・・、どうしてそう思ってくれたんですか・・・・・・? 」
「側にいて、これほど落ち着ける人はいないから。こんな理由ではダメか? 」
・・・・・・これはある意味、告白しているようなものなのか?
「ありがとうございます」
護のその答えを受け、佳奈は自分が注文したマロンのアイスを食べてみる。
「護のそれは・・・・・・、抹茶味だったか? 」
「えぇ、そうですけど・・・・・・? 」
「一口・・・・・・、貰ってもいいか? 実はそっちも食べてみたかったんだ」