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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜一章〜
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心愛の欠席

 葵、心愛、薫からの告白から一夜明け、俺は学校へ行く道で悩んでいた。まぁ、悩んだところでどうにかなるものではないんだけど。


 「おーい? 護?どーしたの? 心ここに非ずみたいな感じだけど……」


 久しぶりに一緒に登校している薫が、話しかけてくる。


 実際のところ、昨日の件があったため、誘う事は無かった。しかし、玄関を出ると、そこには薫がいてなし崩し的にこうなったのだった。


 「もしかして、昨日の告白の事を考えてるの? 」


 薫は、少し顔を紅潮させながら聞いてくる。おい、薫よ。そんな顔を俺に見せないでくれ。こっちも少し恥ずかしくなってしまうじゃないか。


 「それはそうだろ。早く返事はした方が良いとは思うし……」

 「あたしはそんなに急がないからゆっくり考えてくれても良いよ」

 「薫は返事はいつでもできるし、すぐ近くにいる存在だからな」

 「うんっ」


 問題は心愛、そして葵だ。好意を寄せてくれているのは分かる。だが俺は、返事の日を延ばすことしかできなかった。真剣に答えてやることができなかったのだ。知り合って、まだ一ヶ月ほどしか経っていない。告白を断るにしても受けるにしても、決め手になるものが少なすぎる。


 逆に、薫は気の置けない親友である。だからと言って返事を先延ばしにする理由にはならないけど、待ってくれるという安心感がある。


 「護。今、葵と心愛のこと考えてるでしょ」

 「まぁ、それは間違いではないが……。なんで分かったんだ? 」

 「私達何年一緒にいると思ってんの。あんたの心情の変化なんてすぐ分かるわよ。顔にすぐ出るんだから」

 「そうか。なんかこんな事を相談するのもおかしいとは思うんだけどさ」


 俺は切り出す。


 「二人にはちゃんと返事してやれなかったんだよ……」

 「大丈夫だよ。二人のことだから、いつまでも待ってる、とか言ったんでしょ。なら心配ないと思うよ?」

 「そうか……。なら良いんだけどさ」


 俺はそう薫には答えたものの、納得出来ていなかった。帰り際での葵の反応は大丈夫だった。しかし、心愛は少し落ち込んでいたようにも見えたからだ。



 「おっす。護。安田さん」


 教室に入ると一番に羚が話しかけて来た。


 「羚か。お前が二日連続で俺らより早く来るなんてどうした?今日は雨が降るんじゃないか? 」


 と言いつつ、俺は羚の先にいた葵を確認した。こちらに笑顔を返してくれる。俺も笑顔を返す。


 「俺だってたまには早く来たりはするんだよ」


 そう言いつつ、今度は心愛を探すために教室を見渡した。しかしまだいなかった。鞄はまだ無い。まぁ、まだ時間はあるから来ないということはないかと思う。


 俺と羚が話していた間に、自分の机の上に鞄を置いて来た薫がこちらに戻って来て。


「大丈夫だよ。まだ時間あるから」


 そう言ってくる。なんか薫には俺の考えている事が筒抜けだな、と思う。


 「悪いな。心配させて」

 「いいよ。これくらいの心配はさせて」


 と俺たちの会話の中に羚が割って入ってきた。


「なんの話しをしてるんだ?俺にも教えてくれよ」


 薫が止める。


 「うーん。教えたくは無いかな?吉田君にも教えたくない事とかあるでしょ? 」

 「まぁ……。ない事は無いけど……」

 「そういうことだから」


 羚は、上手く薫には丸め込まれていた。


 そんな他愛もない話をしている間にも、刻々と時間が迫ってきていた。しかし、心愛はまだ来ていなかった。

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