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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜四章〜
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事件は終わりに向う?

「姉ちゃん。朝だぞ」

扉の外から呼んでみるが、やっぱり反応は無い。

「入るからな……」

聞こえては無い上に、姉弟間なわけだし遠慮はいらないのかもしれないが、一応だ。いくら姉ちゃんといえども、女の子だし。

部屋に入りベットの方に目を向けると、姉ちゃんは気持ち良さそうに寝ているように見えたが、疲れているようにも見えた。

昨晩、遅くまで起きていたりしていたのだろうか。

「姉ちゃん、起きろー」

「護」

姉ちゃんからそう、声が返ってきた。

「起きていたなら返事をして……」

くれ、までの言葉が、俺の口から発せられる事はなかった。

姉ちゃんが言い終わるよりも早く、俺も自分の胸にへと抱き寄せたからだ。

「護っ!! 」

「どうしたんだよ? 姉ちゃん」

姉ちゃんは俺を抱き寄せたまま、何も言わない。

「姉ちゃん……? 」

姉ちゃんのその俺を抱き寄せる腕は、少し、震えているような気がした。

「もう起きないとダメなのは分かってる。だけど……、しばらくはこうさせて」

「姉ちゃん……」

俺は姉ちゃんの言葉を聞き、力を抜き、姉ちゃんに身を任せた。

姉ちゃんの俺を抱き寄せる力が一段と増す。

「………………っっ!! 」

この状況を誰かに見られると非常にまずい。そして、俺の命も危ない。

ん? 何でかって? それは……。説明しなくても分かって欲しい。

「……」

姉ちゃんの体を手で叩き、ギブアップを示すが、それに姉ちゃんは反応してくれない。

あぁ……。そろそろ気が飛びそうだ……。


姉ちゃんも、俺の意識が飛んだ事に気づかなかったようで、姉ちゃんがそれに気づいたのは、俺たちの戻りが遅いからと見にきてくれた遥が、姉ちゃん起こしてくれたからだった。

遥には、後でお礼を言っておこう。

「沙耶さんも、なにやってたんですか…………」

「ゴメンゴメン。護を抱き寄せてる間に寝ちゃったようでさ」

「そうですか。護君も大丈夫? 」

「あ、はい。若干、頭がクラクラしますけど」

「そう。少しは大丈夫そうだね。なら、早めに戻ろうか。沙耶さんも、戻りますよ」

「そうですね」

「はーい」

リビングにへと向かう足を少し早める。

一度降りた時には完成しかかっていたから、もしかしたら完成していて、俺達を待っていてくれてるかもしれない。

リビングに入ると、悠樹や成美が完成した朝ご飯を机に並べていたところだった。

「護。遅い」

悠樹から、鋭い言葉が飛ぶ。

「すいません」

反論は何もない。

この家は四人暮らしのため、ご飯を食べる時の机も四人用だし、椅子も四つしかない。

だから六人いる今、どうするのかと心配していたが、心配はなかったらしい。

四人用の机と同じ大きさの机がもう一つ置かれていて、椅子も二つ増えていた。

自分の家だが、一体どこにこんな物が仕舞ってあったのだろうか。不思議である。


……平和だ……。

俺、母さん、姉ちゃん、悠樹、成美、遥の六人で食べているその光景が、そう思えた。

朝起きてきた時もそう思ったが、この家に皆がいるということが、日常だと思えてしまう。

と、思える部分、青春部のメンバーが好きなのかもしれない。

こんな光景が毎日続くのなら、それは大変なのかもしれないが、きっき毎日楽しい日々を過ごせるに違いない。

だとしても、そんな事は言えない。

悠樹と遥の家は近いが、成美の家は遠いし、杏先輩の家は知らない。一度は渚先輩や、葵も家に呼びたいものだ。

「護、早く食べて。洗わないと駄目だから」

こんなことを考えていると、隣に座っている悠樹から、声が飛ぶ。

どうやら、俺以外の皆は、大体食べ終わっていた。ボーッとし過ぎていたらしい。

「わ、分かりましたっ」


……早かったかなぁ……。

黒石駅に着いてそう思う。

朝食を食べてから、遥と約束したのだ。

俺は最初から一緒に黒石駅まで行きませんか? と言ったのだが、遥は、先に黒石駅で待っていて欲しいという意見を頑なに変えはしなかった。

恐らく、なにかしらの準備があったりするのかもしれない。

「止めに行こ」

自転車でここまで来たから、駐輪場に止めておく必要があるのだ。

「いっぱいあるな……」

所狭しと並べられている自転車の数を見て思う。

休日ではあるわけだし、こうなっているのは予測できたが、ここまで多いとは思っていなかった。

「早くしないと」

早く自転車を置いて、集合場所に戻った方が良いだろう。もう遥も着いているかもしれないし。


集合場所に戻ると、遥が丁度こちらに向かって来ているところだった。

「あ、護君っ! 」

「遥……? 」

「うん。びっくりした? 」

「えぇ…………」

遥の姿を見て、驚いてしまったのは無理もない。

会ったのが昨日なのもあるし、私服を見たのは初めてだ、というのもあるが、理由はそれだけではない。

「そういった服も似合ってますよ」

「うん。ありがとね」

遥はいつもと違って眼鏡をしていなかった。たぶん、コンタクトレンズをしているのだろう。

遥の一つの特徴でもある髪色と同じ色である黄色のリボンはつけてある。

俺が驚いたのは遥の服装だ。

とても短い黒いシフォンスカートに、太ももまでのニーハイソックス。そして、肩出しのシフォンブラウスが、今日の遥の服装だった。

……足元に目が……。

それが駄目だと分かっていても、視線は足元に自然といってしまう。うん。仕方ないという事にしておこう。

俺は取り繕うように、声を出した。

「い、行きましょうか。時間ですし」

「うん。そうだね」

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