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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜四章〜
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事件の香りはさらに強く #2

「そういえば、薫の家は護の家の隣だったよね? 」

薫の自転車の後ろに乗っている杏が聞いた。

「はい。そうですよ」

「じゃ、中学の時は、毎日一緒に学校行ってたりしてたの? 」

「はい。一緒に行くのは今でも変わりません。タイミングが合わない時もありますけど……」

「そうなの? 」

「護も…………忙しいですから……」

「それは、転校生の事とか? 」

「えぇ」

薫は、なんで知ってるんだ、と思う。あの容姿だ。有名になるのも仕方のないことなのだろうか。

「護って、いろんな人に好かれるよね」

「昔からです」

薫は少し過去の事を思い出しながら答えた。

……本当に護は……。

こっちの気持ちに気付いたかと思えばそうでもない態度をとったり、咲や他の女の子と話す事が多々あった。

その度に、薫は護に対する想いを募らせるのであった。

「護も大変、だよね……」

「本人は、そう思っていないかもしれませんが」

そうこうしている間にも、目的の場所は近づいてくる。

「先輩。もうすぐです」

「本当!? 楽しみだな」

杏のテンションは次第に上がっていく。護の家に行けるという点で。


悠樹はいつもの道を。成美はいつもとは違う道を歩く。

「悠樹はさ」

成美はそう前置きをしてから、話す。

「ん? 何? 」

「悠樹は、護の家知ってるよね」

「うん。中に入った事もある。それは成美も」

「そうだけどね」

こんな話をしているが、お互いに護の事が好きだと、言ったことはない。

同じ部室で時間を過ごしていれば、分かってしまうのかもしれない。だからといって、二人は互いに譲るつもりは全くないのだった。


遥先輩と自転車で並走しながら帰る道は、楽しく感じることが出来るものだった。

並走するのは良くないことだが、隣で楽しそうに笑っている遥先輩を見ると、そんな罪悪感も飛んでいってしまうのだ。

「遥先輩は一人暮らしをしてるって言いましたけど、お姉さんとかはいるんですか? 」

「うん。姉と妹が一人ずつね」

遥先輩がもうすでに一人暮らしをしているということなら、お姉さんはもうすでに独立している事だろう。妹さんがどうかは知らないけど。

「あっ…………」

遥先輩は何かに気づいたように、視線を前に向けた。

「どうしました? 」

「あそこ」

遥先輩が指差す先に俺も目を向けると、そこには、悠樹と成美がいた。

……悠樹は分かるけど、何で成美が……ん

「ユウ、成美」

俺が考えている間に、遥先輩は二人に声をかけていた。

俺と遥先輩。悠樹と成美の距離は少しだけ離れていたが、周りが静かすぎたためか、二人に声が届いた。

「ハル。護」 「遥…………? それに、護?」

二人は驚きを含んだ声で返してくれた。

いや、この状況、一番驚いているのは俺かもしれない。

「ユウは分かるけど、成美はどうして? 」

どうやら遥先輩も、俺と同じ事を思っていたらしい。

「ちょっとね…………」

成美はバツが悪そうに答えたる。

「私達は護のお姉さんに会いにいく」

「なぁ…………っ! ちょっと、悠樹! 何で言っちゃうのよ」

「別に言わなくてもバレる。同じ場所に行くんだから」

「それは、そうだけど……」

悠樹と成美がここにいるということは杏先輩も先にいる可能性が高い、と思った俺は二人に尋ねた。

「杏先輩もこの先にいたりします? 実は」

「まぁね……。薫と杏先輩が護のお姉ちゃんについて話していて、気になったから来たわけだしね……」

「そう」

悠樹が成美の言葉に同意する。

「なんでまた」

「なんでって言われても………………ねぇ? 」

口を濁らせた成美の間に、遥先輩が割って入る。

「分かるよ。私もそう思ったから来てるわけだしね」

「そういえば、ハル」

「ん? 何? ユウ」

「ハルはいつ、護と仲良く? 」

「今日だよ。図書室で会ってね」

「ハルは図書委員長だもんね」

「うん」

「そんな事より、早く行こうよ」

成美が少しだけ前を歩き、そう催促する。

「分かりました」

俺はこれから起こる事が不安であったが、そう答えるしかなかった。


「ん、ふぁ・・・・・・」

・・・・・・もう、六時か。

沙耶は自分が寝てしまっていた事に気付く。

「護の部屋・・・・・・? にゃっ!? 」

それに加え、部屋の掃除もしていなかった事も気付く。

「ヤッバい。もうすぐ帰ってくるじゃん」

沙耶は慌てて護のベッドの上から降りる。

それと同じタイミングで家のチャイムが鳴った。

・・・・・・護?

と、沙耶は思ったが、その考えをすぐに払拭した。

護なら鍵を持っているから、わざわざチャイムを鳴らすなんて事をしないからだ。

そうだとしても出ないわけにはいかない。

一段飛ばしで階段を降りつつ、沙耶は玄関を開けた。

「はーい。あ、薫。どうしたの? 」

「ども」

沙耶が見たのは、薫の姿だった。

「・・・・・・もう一人、いるよね? 」

「やっぱり、気付きましたか? 」

「うん。で、何か用かな? 護はまだだよ? 」

「はい。今日は、沙耶さんに用事が・・・・・・」

「私に? 」

「はい。杏先輩。隠れてないで来てくださいよ」

「どうも、織原杏です。宜しくです」


杏が挨拶をすると、沙耶の顔がいままでより、パッと明るくなった。

・・・・・・良かった。第一印象は悪くない。

と杏は思う。

「あなたが杏か・・・・・・」

「あたしの事知ってるんですか? 」

「ちょっとはね。護から聞いてるから」

「どんな事をです? 」

「それは、家に入ってから。こんな所で話すのもなんでしょ。薫」

「なんです? 」

「あたしはお茶とか持っていくから、護の部屋まで案内してあげて」

「分かりました」

その言葉を残すと、沙耶は家の中へと戻って行った。

「杏先輩。行きますよ」

「え、あ、うん」

薫に護の部屋まで案内してもらってる杏は思う。

「広いんだね」

「そうですけど、意外と大変なんですよ。あたしの家もこの家と似た造りになってるんですけど、無駄に部屋の数が多くて……」

「へぇ…………」

杏は考えを巡らせる。部屋が多いという事は。

……夏合宿は、ここでもいいかも……?

早すぎるが考えただけで楽しくなる案に、クスリ、と笑ってしまう。

「どうしました? 」

「いやいや、なんでもないよ」

「そうですか? なんか楽しそうな顔してましたし、何か思い付いたのかと思ったんですけど…………」

「そ、そんな事ないよ」

……鋭いな……。

「本当ですか? 」

「ほんと、ほんと。何も変なことは考えてないから」

階段を登り、二階に着いてもその広さはさほど、変わらない。

「そこの部屋が護の部屋です」

薫が、階段を上がってすぐの部屋を指す。

「お、そこか! 」

杏は、薫より先に護の部屋に入った。

……ん……?

部屋に入った途端、杏は異変に気付いた。 護の匂い以外に、もう一つの匂いが混ざっている事に。

……これは、沙耶さんの……?

ということは。

……あたし達がここに来る前、沙耶さんはこの部屋にいた……?


「わぁ……。広いんだね」

最初に感嘆の声をあげたのは、遥先輩だった。

俺は、いつもの場所に自転車を止めながら。

「広いのはそうですけど、部屋数が多いですからね。意外と大変です」

俺は苦笑しながら答える。

この事は恐らく、薫も思っていることだろう。俺の家と薫の家の造りはそんなに変わらないし。

「じゃ、入りますか」

「そうだね! 」

「早く入ろ」

「うん」

遥先輩、成美、悠樹の返答を受け、玄関の扉を開けようと手を伸ばすと、それと同じタイミングで先に扉が開いた。お姉ちゃんだ。

「あ、護、おかえり」

「あ、ただいま。薫と杏先輩いるよな……? 」

「うん。いるよ。上がってもらってる」

「分かった」

「で、後ろにいる娘達は? 」

「……………………」

出来るとこなら、説明なしにここを通り過ぎたかったのだが、そう上手くはいかないらしい。

「んと、左から順に、黛遥先輩。高坂悠樹先輩。北山成美先輩」

「どうもです」

「こんばんは」

「こんばんはです」

「ん、よろしくね。遥、悠樹、成美」

「「「はい」」」

三人の声が重なる。

「じゃ、護に案内してもらってね。あたしは後で行くから」

「手伝うけど? 」

「良いよ。先に部屋に行ってなさい。薫と杏を待たせてるんだから」

「そうだよ、護」

先に玄関に入った成美が声をかけて来る。

「そうですね。悠樹も遥先輩も入ってください」

「ん」

「了解」



……あ……。

遥先輩達を連れ二階に続く階段を登っている途中、まだ母さんの姿を見ていないことに気が付いた。リビングに行っていないから見てないといえばそうなのだが、もしいるのなら、「ただいま」と言ってくるはずだ。

だとすると。

……まだ、帰ってきてないのか……。

「はぁ………………」

なんて事を思うと、溜息がもれてくる。

扉に手をかけようとすると、遥先輩の後ろにいた悠樹が隣に来て。

「護? 無理にきたのが悪かった? 」

「いえ、そんなことないです。母さんの姿を見ないから、もしかしたら、って思っただけです」

「なら、良かった」

「はい。話はここまでにして、入ろうよ。早く」

成美に急かされつつ、部屋に入る。


「護。おかえり。先に入らせてもらってるよ」

薫よりも先に、杏先輩が返事をしてくれる。

うんうん。まぁ、それはいいです。だけど。

「どうして、人の机の引き出しを開けてるんですか!? 」

引き出しの中にはそんな人に見られて困るものは入ってないのだけれど、なんか恥ずかしいものだ。

「仕方ないなぁ…………」

俺が止めに入ると、杏先輩は簡単に引き下がってくれた。

いつもならもうちょっと抵抗してくるのだけれど、うーん・・・・・・。若干、調子が狂ってしまう。

「杏先輩。なんで、先に行っちゃうんですか? 」

「なんでって、言われてもねぇ・・・・・・」

俺はそんな杏先輩に詰め寄る成美と悠樹を横目で見ながら、薫の横に座った。遥先輩も俺に倣って座る。

「ゴメンね。護」

「ん? 」

「いや、先輩を止めようとしたんだけどね……」

引き出しを開けようとしていた杏先輩を止めようとしたが無理だった、ということなのだろう。

「良いよ。気にするな」

「ん、ありがと」

薫は、遥先輩の方を向くと、

「で……黛先輩ですよね」

「お! 私の事知ってるの? 」

「はい。副会長……ですよね。一度、生徒会室にも行きましたし、佳奈先輩から話も聞いた事あります」

「うんうん。良かった。護君は知らないって言うからさ…………。まぁ、まだ入学したばかりだし仕方ないけどね」

「そうですよね…………」

「……」

なんですか。その人を少し責めるような目は

「遥ちゃんだよね。副会長の」

杏先輩はそんな俺に目もくれず、遥先輩に声をかける。

「はい。お久しぶりですかね」

「そうだね。で、遥ちゃんはいつ護と仲良くなったの? 」

みんな、そこが気になるのね。

「えと……今日ですよ」

「今日? 」

「はい。図書室で話す事がありまして」

「遥ちゃんが図書室にいるのは分かるけど、なんで、護が? 」

「佳奈先輩絡みですよ」

「あぁ……。なるほど」




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