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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜四章〜
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席替えと転校生は事件の香り #3

その部屋、第一応接間に入った時、俺はその場所がとても輝いていて、部屋の中央に置かれている茶色の大きい、二人で座るのにはもったいなさ過ぎるソファに座っていて、こちらを見る転校生に視線を奪われた。

「君が護君? 」

「あなたが葵さんですね」

そこに座っている、二人の、銀髪と金髪の娘が立ち上がり、こちらに向かって歩いてくる。

「う、うん・・・・・・」

「あ、はい・・・・・・」

俺達はその二人に圧倒されていた。

ハーフというのを始めて見た、というのもあるかもしれない。銀髪と金髪の髪の綺麗さは言葉では言い表す事が出来ないし、俺達と同じ制服を着ているはずなのに、別の学校の制服に見えた。

・・・・・・可愛い。そして綺麗すぎるっ!!

俺が受けた印象を一言で表すとまさに、それだった。

薫や葵と比べるとその制服を押し上げるものは少々残念だが、そんな事が気にならなくなるほどの魅力がそこにあった。 俺はもう少しこの二人を眺めていたかったが、それさ先生の言葉によって、中断させられた。

「護君も、葵さんも見とれるのは分かりますが、自己紹介始めましょうか」

それは教室に入ってから、皆の前でするものでは? と思ったが、席が隣になることだし、始めに挨拶を交わしておこうということだと、自分の中で解釈する。

「じゃ、僕からだね」

その先生の言葉に準ずるように銀髪の娘が手を大きく挙げる。

「僕は、クララ・菜夏・リシャール。僕を呼ぶ時は、ララか菜夏でお願いするよ。君は護君だよね。僕の席の隣は護君だって聞いたよ」

「あ、うん。よろしく」

・・・・・・この娘が隣か・・・・・・。

「突然なんだけどさ、護君はスポーツとかよくする方かな? 」

「うーん。最近はしてないけど、昔はハンドボールをやってたよ」

薫の影響でハンドボールを始め、やっていたようなものだし、薫がやらなくなってしまえば、自然とやる機会は減ってしまう。

「へぇ。ハンドボールか・・・・・・」

「そういうララはやるのか? スポーツ」

「うん。僕は、バスケットボールとかサッカーをよくするよ」

「そうなんだ」

どちらかというと見た目通りといえば正しいのかもしれない。

「今、男の子みたいとか、ちょっと思ったでしょ? 」

「っ・・・・・・」

どうしてこうも女の子は考えを見抜いてくるのだろうか。不思議だ。

「図星だったみたいだね」

「悪い・・・・・・」

「良いんだよ。昔からよく間違えられてきたからね。僕は自分の事を僕って呼ぶから余計にね」

「そうかな。別に女の子でも自分の事を僕っていうのはアリだと思うんだけど」

「そう? なら良かった」

羚に出会った頃、自分の事を僕っていう女の子って良いと思わないかと言われたことがあった。その時は、羚の言っていることが分からなかったが今、分かったような気がする。

「ララ。喋り過ぎです。時間が無くなっちゃいますから」

「そうだつたね。ゴメン。じゃ、ランに譲るよ」

そのランと呼ばれた金髪の娘は、軽くお辞儀をし。

「始めまして。ブランディーヌ・篝・リシャールです」

頭を上げるのと同時に、その金髪の若干ウェーブした髪が綺麗に揺れる。

「私の事はラン、もしくは、篝と呼んでください」

「はい。分からない事があれば、私、御上葵に聞いてください」

「はい。そうさせてもらいます」

「ところで、葵さん」

「はい? 」

「葵さんは料理とかしますか? 」

「うん。しますよ。ランさんは? 」

「さん、はいらないですよ。私はよくしますよ。親がいない時などは私がよく作っています」

「ランの作る料理は本当に美味しいんだよっ! 一回護君と葵さんの二人にも食べて欲しいくらいだよ」

「へぇ。一回食べてみたいです」

「そんなに期待はしないでください。またいずれ、早い内に家に招待しますね」

「ありがとうございます。その時は護君も一緒に行きましょうね」

「お、おぅ。そうだな」



「時間も経って来ましたし、戻りましょうか」

葵のその言葉で俺は第一応接間にある時計を見上げた。 授業が終わる時間まで後、二十分程になっていた。

そんなにこの場でララとランの二人と喋っていた、という感じはしないが、自分達が思っていた以上に時間が経っていたのだろう。

「うん。そうだね。早く他のクラスの人達も見てみたいし」

ララは待ちきれないという様子で、足踏みを始めた。

「じゃ、行こうか。ララ、ラン」

「うん」 「はい」

俺はララとランに呼びかけ、一緒に教室に向かおうとしたのだが、そんな俺達を先生が止めた。

「ちょっと、待ってください」

「はい。何ですか? 」

「まだ、何か? 」

先生の声に振り向きながら、葵と俺は聞き返した。

「護君と葵さんは先に戻っておいてもらって良いですか? まだ話しておきたい事があるんです」

「分かりました」

俺は承諾して葵と戻ろうとしたのだが。

「えぇー。嫌だよ」

ララは俺の左腕に抱きつき、行かせまいとする。

「ララ。また後でな? 」

俺がそう言うと、ララが何か良い案を思い付いた、みたいな顔を一瞬したかと思うとすぐに、ニヤッと笑った。

「それは、後でなら護君に抱きついても良いってこと? 」

言い終わるや否や、ララは抱きつく手に力を込めた。

「ララっ! そういう事では無いだろう? 」

「・・・・・・分かってる」

ララは名残惜しそうに、俺の腕から離れる。

「後でも話す事は出来るしな」

「まぁ、そうだけどね・・・・・・」

「そうですよ。葵さんとも、護君とも今日からはいつでも話せるんだから」

ランも同調してくれる。

「じゃ、護君、行きましょうか」

「そうだな」

「後でね。護君」

「また後で話しましょう。葵さん」

「おぅ」 「はい」


藤堂玲奈は隣りで楽しく喋っている星華と羚を見て思う。

・・・・・・吉田君は思い出したんだね。

玲奈と星華は中学校こそ違えど、良く話す事がある仲だ。その時に玲奈は星華から聞いていたのだ。羚とは実は幼馴染なんだと。

仲が良い玲奈としては星華がいつにもまして楽しくしている、というのは良い事なのかもしれない。

だけど。

・・・・・栞ちゃん?

ふと、今日の席替えで前の席になった栞が目に入った。

・・・・・・栞ちゃんも吉田君の事好きなのかなぁ。

栞の視線の先には星華と羚が話している姿が映っている事だろう。

もし、そうなのだとしたら。

・・・・・・吉田君も罪な男だねぇ。

玲奈はしみじみとそう思うのだった。


教室に戻って来ると、男子の視線を一斉に受けた。

その目線にはすべて羨ましい、というものや、どんな娘だったのか教えろ、というのが含まれているような気がした。

・・・・・・周りに男子がいなくてよかった。

深く深くそう思いながら席に着いた。

「ねぇ。護」

「どうした? 心愛」

その心愛の目からは、さっき受けた男子と同じ物を少しだけ、受けた。

「どんな娘だった? 」

「えと・・・・・・」

説明は難しいというか、俺が説明してしまうとララとランの綺麗さというか、そんなものが薄くなってしまうような気がする。

「俺が言うより、実際に見た方が良いと思うよ? 」

「それは、そんなに可愛かったということ? 」

「そうそう」

意図を汲み取ってくれてよかった。

「護がそういうなら、期待しておこうかな」





ララとランはクラスに馴染む事が出来た。それは、先生を含め葵もが、そうなるように頑張ったからだ。

ララとランの紹介が終わった頃には案外、時間が経っていた。だから、葵が先生に、「次の授業も使って、二人との交流を深めませんか? 」と、提案したのだった。

先生は、その葵の提案に「授業は大切ですし・・・・・・」と、難色を示していたが、ランが葵の案を強く押したのだった。

それにより先生も、「篝さんが言うなら・・・・・・」と、しぶしぶではあったがOKを出してくれたのだった。

次の授業はそんなこんなで、交流の企画が行われた。 その事について詳しく言うという事はしないが、一つだけ言っておきたいことがある。

それは、羚とランがとても仲良くなったという事だ。席が近いというだけなら、羚と仲良くなるのはララだろう。

しかし羚とランは、葵とラン程に、もしかするとそれ以上に仲良くなっているのかもしれない。

現に放課後になった今でも、羚とランは話をしている。ランと最初に話した葵が、交流会の最初に羚と話したララが嫉妬するほどに。

まぁ、その事に関しては羚にとっては良い事だし、別に良い。だけど、時間を気にしてほしかった。

今日は先生にも言われていた通り、ララとランの二人を連れて、校内を案内しなければならないからだ。

しかし、この時間的にそれはもう、難しいかもしれない。

俺は葵とララとの三人で行こうとしたのだが、それをララは頑なに断った。

どうしても、二人で行きたいということだった。

話しかけにくい雰囲気を羚とランの二人が醸し出していたので、俺達は先に教室から出る事にした。

そんな事で、部室に足を運び、明日も来れないという事を告げ、学校を出た。


「ふぅ・・・・・・」

自分の部屋に戻るや否や、俺は息をついた。

今回も家に帰るのが遅くなったわけだが、姉ちゃんに怒られる事はなかった。帰る時に少しびくびくとしていたのだが、大丈夫だった。姉ちゃんもちゃんと理解していてくれたのだろう。

「おっと・・・・・・」

制服を脱ごうとすると、そのポケットにいれていた携帯が振動した。

早めに携帯を取り出し。

「もしもし、羚か? 」

「おぅ。そうだ」

テンション高いな。まだあの時のテンションのまま引きずっているのか。

「やっぱり、なんか楽しそうだな」

「まぁな、ランとは仲良くなれたし」

ランに呼び名が変わっている。最初の頃は篝さんと呼んでいたのに。

「それは、良い事だけどさ・・・・・・、今日は案内するはずだったんだが」

「それに関しては、本当に悪い。でも、声くらいかけてくれよ」

「かけてたさ。だけど、気づかなかったのはお前達二人だぞ? 」

「そ、そうだったのか・・・・・・」

本当に二人の世界に入っていたらしい。

「で、明日は今日みたいに話し込む事だけはしないでくれよ? 」

「あぁ・・・・・・。頑張ってはみるさ・・・・・・」

「頼むから、頑張ってくれよ? じゃ、また明日」

「おぅ。そうだな」



羚との電話を終えると、それを聞いていたかのように姉ちゃんにが、部屋にはいって来た。

「まーもーるー」

ドン、と姉ちゃんが俺の背中にもたれかかって来る。

以前はそんな事はなかったのだか・・・・・・。

だから、姉ちゃんのこの行動が何を示しているのかが分からなかった。

俺は、背中に押し寄せて来る感触をどうにかして払拭しながら、姉ちゃんに。

「どうしたんだ? 」

「いや・・・・・・。なんにもないよー・・・・・・」

そう言いつつも姉ちゃんは、俺の背中から、離れようとはしない。

・・・・・・うーん・・・・・・。今までに無い事をされると、地味に不安になるのだが。

「絶対。なにかあっただろ? 」

「うー・・・・・・。護は土日予定があるんでしょ・・・・・・? 」

「そうだけど・・・・・・」

「私だって、日曜日は護と一緒にいたかったんだよー」

「そんな事いったって、同じ家なんだからいつでも会えるじゃん」

「そうじゃないよ。買い物がしたいの。護と」

「俺と? 」

なんだ。最近、買い物に誘われる事が多いような気がする。

「そう。まぁ、今週は諦めるけどさ・・・・・・」

そう言いつつも、姉ちゃんはまだ、離れない。

時間、そして場所によっては、しーちゃん達との買い物が終わってからでも、行けるかもしれない。

「姉ちゃん。場所は? 」

「鳥宮駅の近くだけど・・・・・・」

「鳥宮駅か・・・・・・」

うんうん。鳥宮駅か・・・・・・。それなら・・・・・・。

「鳥宮駅なら、俺も行くんだけど? 」

「本当にっ!? 」

そう言うと、姉ちゃんの顔が一瞬にして笑顔に満ちような気がした。姉ちゃんと羚を一緒にするのは、どうかとは思うが、そのどちらも、声のトーンで分かりやすい。

「お、おぅ・・・・・・」

「なら、護の用事が終わったら、駅の所で待っていてもらっていいかな? 」

「了解。何時に終わるかは分からないぞ? 」

「いいよ。遅くなったら、別にそこでご飯を食べたらいいわけだし」

いや、それはどうかと思うのだが・・・・・・。

「大丈夫だよ。その日、母さんは帰って来るのが遅いらしいから」

「へぇ・・・・・・。そうなのか」

「あ、いっその事あっちで食べちゃおうか? 」

「まぁ、それもいいかもだけど・・・・・・。金はどうするだ? 」

「う・・・・・・。私今、あまりお金無いよ」

「俺も無いよ? 土日でかなり使うだろうし・・・・・・」

「じゃ、家にあるやつで作るしかないか・・・・・・」

「まぁ、そういう事だろうな。そん時は俺が作るけど・・・・・・」

「私、料理出来ないからね」

俺も、さほど出来るというわけではないが、姉ちゃんが作るというなら、俺が作った方がマシなのだ。姉ちゃんには悪いけど・・・・・・。

「俺だって、出来るわけではないけど・・・・・・。頑張って作ってはみるけどね」

「ん、それも楽しみにしてるよ」

姉ちゃんはそれを言うと、姉ちゃんは元気そうに階段を降りていった。

姉ちゃんの機嫌が良すぎる時に、あまり良い思い出がないといえば、無いのかもしれないが、部屋に入ってきた時みたいに、どんよりとされるよりかはまだ良い。

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