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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜プロローグ〜
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薫の告白


 三通目の手紙の約束の時までまだ時間があったが、俺は先に屋上に向かうことにした。

「はぁ…………」

 告白をされていて溜息なんてものをついていたら、羚を筆頭に、、クラスメイトだけではなく、その他の男子達の逆鱗に触れてしまうだろう。「何を落ち込んでんだよ」と。

 最初の葵からの告白を承諾していれば、心愛の告白もきっぱりと断れていたのかもしれない。が、いくら二人)もしかすると三人)が俺の事を好きだと言ってくれても、どうしても俺とは不釣り合いだと考えてしまう。

 葵は、容姿端麗で勉強もできる。まぁスポーツは全然ダメで、ドジを踏む事が多く、クラス委員長の仕事をしている時プリントを運んでいて、よくプリントを盛大に廊下にぶちまけているのを見る。

 心愛は、勉強は葵と違って得意ではないらしいが、運動はできる。入学当初に行われた体力テストで好記録を出していたし、その時に色々あって、話し始めたといっても過言では無い。

 そんな二人とはやっぱり合わない。葵にも言ったが「友達」としてなら上手くやっていける自信はある。しかし「恋人」という枠になると、自信が持てなくなる。

 気が付くと俺はもうすでに屋上への入り口の扉の前に来ていた。時間が気になり時計を見て見ると、もう約束の時間ギリギリになっていた。

 「やべ……」

 俺は勢いよく扉を開けた。

 すると、そこには、いきなりの音でびっくりしてこちらを振り返っている薫の姿があった。



 「護……………………?」

 薫は突然の来訪者に驚いた様子で俺を見ていた。

 「薫か?こんな所で……」

 俺はさっきまでの気分を払拭し薫に話しかけた。

 「・・・・・・」

 薫は夕焼けの色が顔に映ったかように顔を赤らめこちらを見ている。

 「俺になんか用があるのか?手紙まで使ってさ」

 「はぁ……」

 「なんでそんな残念そうな顔をするんだよ?」

 「こんな時間に呼び出すってことは分かるでしょ? 何年あたしと一緒にいるのよ」

 分かってはいた。しか、しそうとは思いたく無かった。

 「ん?なんだ? 」

 俺はあえて、とぼけるという選択肢を選んだ。

 「あたしだって護の事が好きなの!! 」

 やはりそうだとは思っていた。

 薫とは一番仲が良いし、そういう気持ちで見たいた時期もある。

 しかし、時間がたつにつれそういう気持ちが薄れていったのは確かだ。家族同士でも接することも増え、もう兄妹みたいな感じになっていた。距離が近すぎるのだ。

しかし・・・・・・、薫の言葉に一つだけ違和感を覚えた。

 「ん? 薫。お前今、あたしだって、って言ったか? 」

 「うん。葵と心愛にも告白されたんでしょ。分かってるよ」

 俺はその時、とてもへんな顔をしていたのだろう。薫が少し笑った。

 敢えて知っているのなら隠す必要もないと思いそう言った。

 「まぁ、そうだけど……。二人と友達だったのか」

 「いやそういうわけではないんだけどね」

 「なら、なんで知ってるんだ? 」

 と言うと薫はちょっと言いにくそうにし

 「手紙があったよね」

 そう言われ俺は今朝の三通の手紙を思い出す。

 「そうだな」

 「葵と心愛が、下駄箱に手紙を入れる所を見たんだよ」

 「うん。それで? 」

 「それで?って本当に護って鈍感だよね」

 心外だな。さすがに葵と心愛の気持ちには気付かなかったけどさ。

 「そんな事無いとは思うんだけどな」

 「そういうところだよ。はぁ……。護さ、あたしの気持ちにだって気づいていなかったでしょ? 」

 そう言いつつ、薫に詰め寄られる。薫は一部の男子の中ではとても人気が高いようで、俺としてはなんか少し鼻が高かったりするわけだが、まぁ幼馴染としての贔屓がなくても十分に可愛いわけで。

 「薫! ち、近いって!」

 「そんな事はどうでも良いの!そこのところどうなのよ? 」

 薫に嘘をついてもバレるので、

 「気付いてなかったよ。だって薫とは毎日会うしさ、学校でも帰ってからもさ」

 「護ってウソつかないよね。こういう時は気を利かせるときでしょ? 」

 「だって薫に嘘ついてもすぐバレるのだろ? 」

 「護、ウソつくとき左手を開いたり握ったりするんだもん。だからだよ」

 そう言われ自分の左手を見てみる。そういった癖は自分では分からないものなんだろう。そういう事にしておいて、次からは気をつけよう。

 「そうなのか……」

 「そうだよ。そういうところも込めてあたしは護の事が好きなんだけどね」

 さりげなく恥ずかしい事を言うやつである。薫のほうに目をやると顔を赤くしている。お前も恥ずかしがってるんじゃないか。俺も少し照れてしまい、

 「護! 何照れてるの? 」

 「仕方ないだろう? そう言う薫も顔赤くなってるだろ」

 「恥ずかしいんだから。仕方ないことなんだよ」

 同じような言い訳をした俺達の間に、笑いが生まれた。

 「まぁここら辺にしておこうよ。もう完全下校時刻が近づいて来てるしね」

 「そうだな。じゃ、一緒に帰ろうか」

 「うん」

 と言い俺たちはお互いの家へと帰ったのだった。

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