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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜四章〜
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席替えと転校生は事件の香り #2

 葵は今来たところの心愛と薫の元へ行ってしまった。おそらく、転校生が来ることと、席替えをする事を教えにいったのだろう。


 (言っていいのかなぁ……)


 もう羚には言ってしまったが、先生はもしかすると、俺と葵の間だけで留めておいてほしかったのかもしれない。


 まぁ、良いか。


 心愛と薫に知られたところで、その二人は周りに言いふらすような事はしないだろう。そういうところには気が回るはずだ。


 「宮永っち」

 「しーちゃんか。どうした?」


  しーちゃんが辺りを見渡して、小さい声で話し始める。


  「さっき羚君が私達を含め他のクラスメイトにも今日は転校生が来るぞって言ってたんだけど……………………本当?」


 羚のやつめ。なに言いふらしてるんだ。


 「あぁ…………」

 「もう皆結構知ってるようだけど…………良いのかな」

 「どうだろう。先生は皆を驚かせたいという思いはあるだろうからなぁ」

 「そうだよね」

 「そもそもは俺達が悪いんだけどな……」


 いや、そんなこともないのかな……。


 「どういうこと?」


 と、しーちゃんは首をかしげる。


 「俺と葵とで、倉庫室から机を運んでたんだけど、机を持って教室に戻ってきたら、羚がいたんだ」

 「うんうん。それで?」

 「で、羚も先生に呼ばれたって言ってたから、知っているんだなと思ってたら全然知らなくて、そこに葵が転校生は女の子だと言ってしまったのが、引き金だったかな」

  「そうなんだ。羚君は女の子には目がないよね」

 「それはそうだな」

 「まぁ、それも羚君の良いところだと私は思うけどね」

 「そういうものか……?」

 「うん。そういうものだよ」


 うーん。女心というものは分からない部分が多すぎる。まぁ、羚にそういう部分が無ければなぁ、なんて思う。



 いつも通りに、担任の山田先生はホームルーム開始のチャイムが鳴るすこし前に教室に入ってくる。前に先生に聞いたのだがそれは、遅刻する生徒を急かす為だとか。


 「みなさーん。席についてくださいね。今日は皆さんに話があります。もう知ってるかもしれませんが……」


 先生はそう切り出した。


 その口振りはもう皆が席替えをすることと、転校生が来ることを知ってると思っての言葉だ。誰かが先生に確認しに行ったりしたのだろうか。


 「今日、転校生が来ます。フランスからというのも知ってますね」

 「知ってまーす!!」


 男子の声が重なる。勿論、俺は言っていないが


 「はい。それで、その娘達は、一限目の私の授業の時に紹介します」

 「先生。席替えはいつするんですか?」


 そう聞いたのは羚だ。


 羚の席は俺の斜め後ろなので表情までは分からないが、声から席替えが楽しみだというのが伝わってくる。


 「それも、一限目にします。あの娘達を紹介する前に、席替えをするので、楽しみにしていてください。あ、クラス委員長の護君と葵さんの隣に転校生を座らせるから、そこのところ、覚えていてね」


  その先生の言葉で、クラスの数少ない男子の視線が全て俺を捉えた…………気がした。


  後ろから殺気にも似た何かを感じる。

 

 「それじゃ、今日のホームルームはこれで終わりにします」

 

  その言葉をさかいにして、皆が一斉に話始める。


 「さてと………………」

 

 一旦、教室から出よう。


 俺に向けられる殺気の強さが段々と上がってきている。怖い怖い。なんでこう皆はそうなんだ。女の子に飢え過ぎだ。


 教室から出ようとした俺を羚が止める。


 「おい、護。どこ行くんだ」

 「ちょっとな…………」


  だれが行き先なんていうものか。何かをされるか分かったもんじゃない。


 「待て。ついていく」

 「何でだ……」

 「良いじゃんか。気にするな」

 「はぁ…………。分かった」



 「お前も大変だな」


 教室から出るとすぐに羚が口を開いた。他の男子が追いかけて来ないのがせめてもの救いだ。


 「どういうことだ」

 「だって、護は、安田さんや御上さん、成宮とも仲が良いだろう?」

 「お、おぅ…………」

 「それなのに、フランスからの転校生の隣に座れるなんて特権もプラスされれば、他の奴らは羨ましがるさ」


 あの視線はただ羨ましいとだけで片付けていいものかは、些か不安ではある。絶対に、何かほかのものがある。


 「そういうお前はどうなんだ?」

 「俺だって羨ましいとは思うぞ? それに青春部にも入っている」

 「まぁ、そうだけど」


 前にも言ったような気もするが、羚云はく、杏先輩や佳奈先輩を筆頭に青春部のメンバーは可愛いと評判なそうだ。それについては俺も首を縦に振らざるを得ない。

 

 「でも、先生に手伝えと言われたってことは、俺にも今日来る転校生とお近付きになれるということだよな」

 「あー。そういうことだな」

 「良かった。良かった」


 授業開始五分前のチャイムが鳴る。


 「そろそろ戻るか」

 「おぅ! どんな転校生なのかも気になるが、席替えも楽しみだな。誰の近くになれるか今から考えるだけで・・・・・・」

 「そこまでにしとけ。周りを男子に囲まれたりでもしたら、余計に悲しくなるぞ」

 「うっ………………。それもそうだな」



 授業開始のチャイムが鳴ると先生は小さな、片手で持てるほどの箱を持って教室に入ってきた。


 「さて、じゃ、まず席替えから始めますね。栞さんから順番に引いてもらいますからね」

 「私からだね〜」


 しーちゃんがテッテッテと教卓の前まで移動する。


 「番号はまだ見ないでくださいよ。全員が終わってからです」

 「はーい。分かりました」


 数分後、ようやく全員がクジを引き終わった。


 「これで終わりですね。それじゃ、見ても良いですよ」


 俺の引いた紙に書かれていた番号は十一番だ。


 一列に六人が座っており、計六列の三十六人のクラス。転校生が来るから廊下側の二列に一つずつ机が増え、三十八人のクラスだ。


 十一番だから、左から二列目の後ろから二番目の席だ。


 「それじゃ、移動を開始してください」


 先生のその言葉を合図に、皆がぞろぞろと立ち上がる。


 移動をし終えた結果はこうだ。俺の周辺だけを教えよう。


 薫が二番。その後ろに葵。よってその隣の九番が二人来る転校生のうちの一人。そして羚は俺の左後ろの六番。俺の前の十番が心愛。で、心愛の横の十六番が凛ちゃんでその後ろがしーちゃん。よって俺の左横の五番に転校生が来る。 俺の後ろ、羚の横が西原星華さん。俺の右後ろの十八番が 藤堂玲奈さん。楓ちゃんは二十番と少し離れる形となった。


 「先生はあの娘達を迎えに行ってきますから、新しく隣になった人とか、近くになった人とおしゃべりをしていてください」


 それと、と先生は付け足すように言う。


 「葵さんと護君は私と一緒に来てください」

 「分かりました」 「了解です」


 俺達はそれぞれ先生に言葉を返した。


 「護はあたし達より一足先に見れるんだね」


 席が前になった心愛がこちらを振り返る。


 「そういう事になるな」

 「楽しみ?」

 「まぁ、それもそうだな」

 「護君。行きますよ」


 葵が声をかけてくれる。


 「そ、そうだな」


 もう少し心愛と話がしたかったが、仕方ない。まぁ、この距離ならいつでも話せるとは思うけど。


 「行って来る」

 「うん。いってらっしゃい」



 「じゃ、私は先に入りますから、私の合図で入ってください」


 先生に着いていき、到着した先は第一応接間だ。


 俺達が授業を受ける教室を東棟だとした場合、この第一応接間のある場所は西棟にあたる。西棟は職員室等があるわけだ。


 西棟に行くには二つのルートがある。


 東棟と西棟の間にある中庭を渡たっていくルート。東棟の四階まで上がり、西棟の四階に繋がる廊下を通るルートだ。


 一年生の教室は東棟三階にあるため、四階の廊下を使うのが一番早い。俺達が向かった先の第一応接間は西棟の三階にあることだし。


 「葵さん。護君。どうぞ」

 「行きましょうか」

 「おぅ。そうだな」


 俺達はその先に足を出した。どんな娘だろうと楽しみにしながら。



 「よっしゃ」


 羚は周りにいる誰にも気付かれないようにガッツポーズえおする。


 改めてここから見える景色を見渡してみる。


 護が右前にいるから、二人来る転校生の内の一人が羚の前に座るわけだ。


 隣は西原星華という女の子。


 (ん? 星華?)


 今の場所に引っ越してくる前、隣の家の娘が星華、という名前だった。だけど、苗字は違うかったはずだ。


 話しかけてみようか。


 「西原さん。ちょっと良い……?」



 「よしっ…………」


 西原星華は左隣に座っている男の子を横目で見ながら呟く。


 初期の頃の席も遠かったというわけでもないが、羚は護と喋っていたり、その他の男子と喋っている事が多かったため、話しかける事が躊躇われた。


 (護君か。)


 護は羚ほど女の子に対してがっついてはこない。


 ただそれは、羚が女の子に対して見境がなさ過ぎるだけなのかもしれない。


 (昔からなんだよね)


 小学校の頃は星華と羚の家は近かった。いわゆる、幼馴染というものだ。

 

 (気付いてくれないのかなぁ。)


 その頃とは苗字が変わっているから気付かないとしても仕方ないのかもしれない。


 「西原さん。ちょっと良い……?」

 「ん? 何?」

 「い、いや……」


 (素っ気なさ過ぎたかな……)


 「西原さんってさ、昔は風見駅の近くに住んでいなかった?」

 「うん。そうだよ?」


 羚はなにやら、昔の記憶と合致したような気を浮かべ。


 「間違っていたら謝るけど、昔は高梨って苗字だったよな?」

 「うんっ!!」


 (やったっ! 思い出してくれた!!)

 

 「やっぱりか。良かった」

 「私は前から気付いてたんだよ?」

 「だって、苗字変わってるじゃん」

 「そうだけどさ……。分かって欲しかったよ」

 「あぁ」

 「まぁ、これからはさ」

 「そうだな。昔みたいに仲良く出来ればな」



 「ふぅ……」


 栞は体を後ろに向け、羚の方に視線を向けた。


 (今度は近くなれた)


 護とは隣になる事が出来たし、以前より羚とも話しやすくなる事は間違いなしだ。


 (でも)


 一つだけ気になる事がある。それは、羚の隣に座っている星華だ。


 二人が楽しく話しているのを見てしまうと。


 (混ざりたくなっちゃうなぁ…………。)


 でも、前から喋っていたというわけではない。


 ということは。


 (何か理由があるのかな)

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