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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜三章〜
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姉ちゃんが帰って来た!?

  ピピピピピピピピ。


  「ふぁ…………」


  携帯のアラームで目が覚める。


  どうやら、成美とメールをしていた間に寝てしまったようだ。


  メールの内容は今日、もう昨日になるのか、の遅刻の事である。


  成美もクラスメイトにいろいろ聞かれたらしいが、一番聞かれたのはその遅刻の事ではなく、髪型の事を良く聞かれたらしい。


  今までハーフツインだったのにいきなり髪をおろして来たのだから、それを驚くのは当たり前だろう。


  「ん…………?」


  何やら下が騒がしい。


  母さんが騒ぐなんて事は滅多にないのだが、例の黒いあれでも出たのだろうか。


  「母さん。どうかしたー?」


  俺は早く着替え、下へと降りた。


  リビングに入る扉に手をかけようとすると、後ろから何者かに抱きつかれた。


  「まーもーるー!!」


  はぁ……。この家でこんな事をするのは一人しかいないわけで。


  「姉ちゃん。抱きつくのはやめてくれって言っただろう?」

  「そんなこと言っても、久しぶりなんだから良いじゃん」


  こうして背後から抱きつき、俺をがっちりとホールドしてるのは、宮永沙耶、俺の姉である。髪をもっと伸ばし、もうちょっと髪の茶色気が増せば、杏先輩とかなり似ている部分がある。


  二十歳になってから一人暮らしを始めて、それからは三年間くらい会ってなかった。


  俺としても久しぶりに会って嬉しいのだが、抱きつくのはやめて欲しい。いくら自分の姉だといっても俺も一介の男なんだから。


  「まぁ、今日だけは許すけど…………、どうしたの?」


  抱きつかれながら話すっていうのも不思議な光景だろう。それは成美と頭を撫で合いながら話していた時も母さんにはそう見えていたのだろうが。


  「一人暮らしに飽きちゃってね。戻って来たの」

  「そんな理由で!?」

  「うん。家もマンションだったし、そんな荷物も無かったし」


  姉ちゃんは、階段の横に置かれているダンボールを指しながら言う。


  さっき少しうるさかったのはそういうことだったのか。


  「で、護は御崎高校に入ったんだよね」

  「うん。そうだけど…………」

  「ってことは、私の後輩ってことにもなるんだね」


  姉ちゃんはそういうとその俺の腰に回している手に力を込めた。


  「ね、姉ちゃん! 痛いから」

  「久しぶりなんだから、我慢しなさい」

  「はぁ……………………」


  中学の頃からこういうことは多々あったのだが、ここは力強くやられることは無かった。


  何回も言っているが、久しぶりなのが関係してるのだろうか。


  ん、まぁ、姉ちゃんに関しては仕方ない気がするが。


  「薫も一緒だよね?」

  「そうだよ」

  「やっぱりね。じゃ、ちょっと話して来るね」


  そう言うと姉ちゃんは光の早さの如く、走って行ってしまった。


  「はぁ…………」


  腰が痛い。


  「護、朝ご飯早めに食べちゃいなさい。食パンとジャムしかないけど」

  「了解……」


  席に座るなり俺は、すぐに母さんに声をかけた。


  「母さんは、姉ちゃんが帰ってくるの知ってたの?」

  「いや。知らなかったよ。母さんも知ったのは沙耶が帰ってくる数秒前だから」

  「数秒前!?」

  「うん。今から家に戻るからっ!って言いつつ家の扉を開けてたからね」

  「………………姉ちゃんらしいな」

 「子供の時から、あーだからね。沙耶は」

 「そうだよな……」


 ふと、昔の事を思い出してみる。


 姉ちゃんによく振り回されたという記憶のなかで、一番古いのは小学三年の頃だったと思う。


 姉ちゃんが友達を家に連れて来た時は何故か俺も一緒の部屋にいさせられたし、まだその頃は部屋が一緒だったのもあり、中学に上がる頃まで、夜寝る時はよく抱き枕代わりに抱かれていたりしていた記憶がある。


 「そう言えば……」


 母さんはこう前置きして聞いてきた。


 「中学の頃だったかなぁ、沙耶と違う部屋にしようとしていた時のこと覚えてる?」

 「あー、覚えてるよ」


 あの時は本当に大変だった。


 俺が中学一年の時だったから、姉ちゃんは十九歳。


 俺は別に姉ちゃんと一緒の部屋でも良いと思っていたのだが、母さんはそれを良しとはしなかったのだ。まぁ、それが普通の事なのだけれど。


 姉ちゃんはずっと反対していたのだけど、母さんは無理矢理にも部屋を分けたのだったが、それは全くもって意味がなく、部屋を分けたその日、姉ちゃんが夜寝る時に俺のベッドに入ってきた時はびっくりした。


 しかしそれは母さんにバレることはなく、姉ちゃんが二十歳になり、家を出るまで続いたのだった。


 「たっだいまー!!」


 早いな。さっき出ていったばっかりだったはずだが……まぁ、今更そんな事では驚きはしないのだが。


 「おかえり」


 そう声をかけようとしたら、姉ちゃんの姿と一緒に薫の姿も目に入った。


 薫はまだパジャマ姿のままだった。恐らく無理矢理に連れてこられたのだろう。


 「お、おはよう」

 「おぅ…………」


 薫がパジャマを着ている姿を見るのは久しぶりだったりするなぁ。


 何て事を思ってると、そんな俺の視線を感じたらしく。


 「あ、あまり見ないでよ。恥ずかしいから…………」

 「あ、わ、悪い……」


 そんな俺達を横目に姉ちゃんはずっとニヤニヤしていた。


 「はぁ、で、沙耶さん」

 「ん? 何?」

 「いつ帰って来たんですか?」

 「今だよ」

 「い、今ですか?」

 「うん」


 薫は俺の方に目を向けてきて、「本当?」と聞いているようだ。


 俺はその視線にうん、と頷いた。


 「はぁ…………」

 「どうしたの、薫ちゃん。ため息なんてついて」

 「いえ。何でもないです」

 「そう?」


 何ともまぁ、朝から薫の珍しいパジャマ姿が見れたのはラッキーな気がするが。


 「姉ちゃん。何で薫を連れて来たの?」

 「理由はないよ。何となく」

 「何となくって……」


 俺と薫はそんな姉ちゃんに杏先輩の姿を重ねつつ、ため息をつくのだった。

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