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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜三章〜
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そしてまた日常の始まり #4

  「ふぅ…………」


  自分の部屋に入るやいなや、俺はベッドの上に鞄を置きその横に倒れこんだ。


  「………………」


  これは俺の推測であるものの、文化祭の時期に合わせて花を植えようと言ったのは相談してきた佳奈先輩ではなく、杏先輩だろう。


  佳奈先輩は「杏は私より花の事には興味がない」と言っていたが、杏先輩が生徒会長である佳奈先輩にそういう話を持ち出したのは、そういう風に文化祭を彩った方が良いと思ったからだろう。


  杏先輩はそう考える人だ。


  「それにしても…………」


  佳奈先輩に相談されるなんて思ってもみなかった。


  その話が出た時、部室の中には佳奈先輩と杏先輩の二人だったということはないだろう。


  恐らく、悠樹や成美、渚先輩もいたはずだろう。


  それでも相談する相手に俺を選んでくれたということは嬉しい事だ。


  まず、先生に話をつけようとしていたところで、俺とのあの一連の事があっただけなのかもしれないが。


  「土曜日か…………」


  今日は月曜日だし土曜日までの時間は長い。


  俺としては明日でも明後日でも良かったのだが、佳奈先輩も何か用事で忙しいのだろう。生徒会長の忙しさはどんなものかは分からないのだけれど。


  「よっと」


  まぁ、いくら土曜日まで時間があるといっても、早めに調べておくべきだろう。


  だが一つ、面倒くさいことがある。


  それは俺の部屋にパソコンが無いということだ。調べようとするとリビングに降りなければならない。


  佳奈先輩の為だと思えば少し楽に思えるのだろうか。


  そんなことを思いつつ部屋のドアに手をかけると、俺を呼び戻すかのように携帯が鳴り響いた。


  「もしもし、護君?」

  「凛ちゃんか。こんな時間にどうした?」


  これはこれは。凛ちゃんから電話がかかってくるなんて珍しい。


  「ゴメンね。ちょっと聞きたい事があって…………」

  「良いよ。気にしないで。それで聞きたい事って?」

  「うん。護君は日曜日って…………暇かな?」

  「日曜日? うん。大丈夫だよ」

  「はぁ……。良かった………………」


  凛ちゃんが安堵している様子が、こここからでも手に取るように伝わってくる。


  「それでね、日曜日。楓と一緒に買い物に行くの。その買い物に付き合って欲しいんだけど…………良いかな?」

  「良いよ。俺が行っても良いの?」

  「う、うん。服とか見たいんだけど、男子の意見も聞きたいから」

  「なるほど。詳しい時間とか決まってる?」

  「ううん。それはまだ。決まったらすぐに言うよ」

  「了解」

  「あ、あと、もう一つお願いがあるんだけど…………」

  「ん? 何?」

  「もし良かったら、れ、羚君も呼んでもらって良いかな?」

  「うん。了解。その方が丁度いいかもね」

  「うん。二対二だしね」

  「じゃ、明日に朝に言うから」

  「う、うん。ありがと。じゃ、また明日ね」

  「うん。また明日」



 「さてと…………」


 羚にも予定があるかもしれないし、今日中に連絡をしておいた方が良いだろう。羚の喜ぶ姿が目に浮かぶ。


 「もしもし?」

 「お? 護か? どうした?」

 「日曜日って暇か?」

 「あぁ……。悪い。今さっき予定が入っちまったよ」

 「そうか………………」


 あぁ、残念。


 「それにしてもお前から誘ってくるなんて珍しいな」

 「凛ちゃんから、誘われたんだよ。それで、羚もどうかって、凛ちゃんが」

 「倉永さんが?」

 「おぅ。なんでも楓ちゃんと二人で買い物に行くらしいんだけど、それに付き合って欲しいと」

 「お前もか? 俺は一之瀬に誘われたんだ。用件はお前と一緒だな」

 「そうなのか? そう言う事なら、いっその事俺とお前、しーちゃんと楓ちゃんと凛ちゃんの五人で良いかもな」

 「あぁ。俺はそっちの方が嬉しいし」

 「じゃ、俺はもう一回凛ちゃんに電話かけるから、羚はしーちゃんに伝えてもらって良いか?」

 「おう。了解だ」

 「じゃ、また後で」


 まさかの予定ありだ。


 まぁ、凛ちゃんと楓ちゃんとしーちゃんは仲が良いし、三人一緒にいるのも良いだろう。


 現に俺が見かける時はいつも三人でいるし。


 一度閉じた携帯をもう一度開き、凛ちゃんへと電話をかける。


 「護君。どうでした?」

 「羚はしーちゃんに買い物を付き合ってくれって言われたみたいだね」

 「そ、そうですか………………」

 「で、いっその事、五人で一緒に行くってのはどうかな?」

 「……栞が羚君を誘った………………?」

 「ん? 何か言った?」

 「あ、いえいえ。私もその方が良かな。じゃ、私の方から楓と栞には伝えとくよ」

 「うん。分かった。じゃ、明日ね」

 「おぅ」


 まぁ、一応これで今週の土日は予定が埋まった事になる。青春部に関係しない形で休日の予定が埋まったのは始めてだろうか。


 羚に早めに伝えようとも思ったが、あっちもしーちゃんと話しているはずだし、時間をおいた方が良いかもしれない。


 時間潰しの為に携帯に登録されている数を確認した。


 御崎高校とフォルダ分けされているところを開く。


 「こう見ると…………」


 高校に入ってから交換した人の数は 十一人。男子が羚だけ、後は女の子である。


 あ、杏先輩の連絡先が無いや。後で聞いておこう。


 これは中学の時からなのだが、男子とあまり番号の交換をする事がない。だからと言って別に喋らないというわけではないのだけれど……。


 「そろそろか…………」


 一日に電話を四回。それも同じ人に二回ずつするなんて事は……まぁ、あまりない事か。


 「もしもし。羚、しーちゃんはどう言ってた?」

 「一之瀬も五人の方が良いって。まぁ、あの三人はいつも一緒にいるしな」

 「そうだな」


 羚の目にもそう映っていたらしい。


 「しーちゃん。お前は一之瀬の事をそう呼ぶんだな」

 「そうだけど、それはあの時からだしな。その時お前もいただろう」

 「まぁな。だけど、なんていうか、呼び捨てを通り越していきなり、あだ名で呼ぶのもどうかと思ってさ…………」

 「でも、そう呼んで欲しそうにしてたしな。羚も明日からそう呼んでみたらどうだ?」

 「無理だろ。俺にはハードルが高すぎるわ」

 「そうか?」

 「そうだ。ちょっと今から、出なきゃいけないから、切るわ」

 「お、おぅ」

 「また明日」



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