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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜三章〜
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そしてまた日常の始まり #2

  「護」


  俺の背後、廊下から俺を呼ぶ母さんの声が聞こえた。


  「何?」


  俺は成美の頭をまだ撫でつつ、そのままの状態で母さんに言葉を返した。


  「護も、成美ちゃんもお楽しみのところ悪いんだけど、時間大丈夫?」

  「ん? 時間?」


  俺と成美は同じようにキッチンの右側のリビングの壁に掛けてある時計に目をやり。


  「あ………………っ!」

  「何で言ってくれなかったのさ」


  そう俺が言うと母さんは、はぁ、とため息をつきつつ。


  「何でって、そんなところでピンク色のムードを作られたら、ねぇ?」

  「それは…………、すいません」

  「良いのよ。成美ちゃんは謝らなくても」


  時計をもう一度見る。


  時計の針は七時五十五分を指している。起きたのは六時四十五分頃だったし、それからは時間の事を気にしていなかった。


 ホットサンドが完成したのが七時頃だとしても、約一時間ほど、俺たちはお互いの頭を撫でていたということになる。


  自分達はそんに時間が経っているとは思っていないのだから、恐ろしいものだ。


  「どうする? 早く行かないと遅刻するけど………………」

  「そうですね……」


  こう話している間にも、時間は刻々と過ぎて行っている。


  「まぁ、なるべく急いで行きましょう」

  「うん。食べてからね」

  「……はい」


 ○


  俺は成美が作ってくれたホットサンドを早く食べ、しかし感謝の気持ちを持って、美味しくいただいた。


  「こっから、学校までどれくらい?」


  俺は自分の左手首につけている腕時計を確認する。


  只今の時刻は八時五分。


  「歩けば三十分、自転車で十五分、走れば二十五分です」

  「自転車で行けばギリギリなのか…………」

  「そうですけど、二人乗りは校則で禁止されてますよ」

  「途中までならバレないって」

  「駄目です」

  「はぁ…………。分かったよ」

  「じゃ、行きましょうか。まぁ、もう遅刻は決まったようなもんですが…………」

  「そうだね」


  朝のホームルームが始まるのは八時二十分。もうどうしても間に合わない。まぁ、一回くらい遅刻してみても良いのかもしれない。こんな事あんまりしないだろうし。


  歩きながら俺は、自分の左側を歩いている成美に話しかけた。


  「成美の家は、どの辺りにあるんですか?」

  「んーとね。ここから一番近い駅は黒石駅だよね」

  「はい」


  最近なら心愛の家に行く時にその駅を使った覚えがある。


  で、その駅から御崎駅から逆の方向に二つ進めば心愛の家の最寄り駅に着く事が出来る。


  「ならそこから八つ先の幹池駅からすぐそこのマンションだね」

  「それなら、この黒石駅まで来るのに五十分はかかるじゃないですか!?」

  「うん。そうだよ」

  「そんなにあっさり……。 何時に起きたんです?」

  「四時半だね」

  「な………………っ」


  四時半ということは、俺が寝始めた頃の時間帯だ。


  「わざわざ、ありがとうございます」

  「良いよ。眠たかったけど、護を見たら眠気なんて飛んでいったよ」

  「そうですか……」

  「ま、別にその事は置いといて、ちょっと急ごうか」

  「あ、はい」


  俺は成美に対する感謝の気持ちを高めつつ、二人で一緒に学校までの道程を駆けていった。


  だか、間に合わなかったの無論、言うまでもない。


 ○


 「はぁ…………」


 朝の一騒動があってから、まぁ、何時間経ったかは知らないが、気が付けば放課後になっていた。


 とにかく疲れた。まだ高校に入学してからそんなに経っていない。


 しかし、俺が遅刻したのが珍しかったらしく、何で遅刻したのかを俺が教室に入ってから授業が始まるまでの間、聞かれ続けた。


 それは授業と授業の間の休み時間にもとどまることを知らず大変だった。


 一番大変だったのは昼休み、担任の山田先生に職員室に呼ばれたことだ。


 先生も俺が遅刻したのが珍しかったらしく理由を聞かれた。


 二年の北山先輩と……、なんてことを言えるはずもなく、信じてくれそうな事を適当に並べつつ、俺は山田先生の質問の嵐を切り抜けた。


 「ま、帰るか」


 教室に残ってるのは俺だけという状況。


 まぁ、何でそんなことになっているかという事を話すと長くなるので、言いはしない。


 椅子から立ち上がり開けたままにしてある扉から出ようと思うと、そこから、三人の女子が入って来た。


 その内の一人は俺の方を見ると。


 「ん? 宮永っちじゃないか」


 そう言いつつ、俺の方へとタッタッタと走ってくるのは、二本のアホ毛が特徴の一之瀬栞である。


 「そう言うのは、しーちゃんじゃないか」


 一之瀬栞ことしーちゃん。まぁ、この呼び方をするのは俺だけなのかもしれない。そしてそのしーちゃんは俺の事を宮永っちと呼ぶ。俺の事をそう呼ぶのは勿論しーちゃんだけである。


 しーちゃんは他の人の事を変わった呼び方で呼ぶ事が多い…………ことは無かった。


 俺がしーちゃんと始めて話したのは、入学式の次の日だった。


 確か羚と話すようになったのもそれくらいだっただろうか。


 その日から教室の掃除が始まり、その担当にしーちゃんと羚と俺が選ばれたのだった。


 掃除が終わった頃にはしーちゃんの方から話しかけてくれ、羚がかなり喜んでいたのを覚えている。


 「ごめんさない。護君」

 「ゴメンね。護」


 勢いよく走って来たしーちゃんを追いかてくるのは、倉永凛と白瀬楓。どちらもしーちゃんの友達である。


 しーちゃんと話すようになった次の日、この二人を紹介されたのだった。


 「良いよ。凛ちゃんも楓ちゃんも気にしなくて」

 「それにしても、護君」

 「ん? 何?」

 「今日どうして遅刻したの? 」


 凛ちゃんは人があんまり触れて欲しくないことを。


 「それは、私も知りたいことだね」

 「私も知りたいな。羚と違って護が遅刻するなんて珍しいし」


 ほら見てみろ。しーちゃんと楓ちゃんが乗ってくるじゃないか。


 というか楓ちゃんも羚ほどではないが、案外遅刻が多い。


 楓ちゃんは羚の名前を出した。ここで気付くかもしれないが、楓ちゃんは基本的に下の名前で呼ぶ事が多い。


 まぁ、羚の場合は中学三年の時にクラスが一緒だったということが関係しているのかもしれない。


 凛ちゃんも下の名前で呼ぶ事が多い。それは何故かと聞くと交友を深めるためだとか。


 「まぁ、色々あってね…………」


 仲の良いこの三人といえど言う事は出来ない。


 「宮永っち。その色々を私は聞きたいのさ」

 「栞。あんまり人のプライバシーに踏みこまないの」

 「そうだけど…………。楓も知りたいでしょ?」

 「まぁね。でも護は答えたくないようだし」

 「それは、私達には言えないことがあったという事なのかな?」

 「そう言う事にしておいてくれ…………」



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