お祭り気分 #12
皆に伝えるタイミングが早ければ早いほど、悠樹は楽になれる。護も楽になれる。
(でも…………)
どのタイミングで、どういう雰囲気の時に、どう言うべきなのか、悠樹にはよく分からない。
そもそも、人を好きになったことが無かった。この感情を知らなかった。そして自分には一生縁がないものだと思っていた。家族以外の人を容易に信じることが嫌いだから。
でも、青春部という居場所が出来て、護が入ってきて、悠樹の見方が変わった。世界が明るくなった。護のおかげで、気付くことが出来た。
悠樹は護が、青春部が好きだ。
護と出会って出会ってまだ半年ほどだが、護が良いと思うところがあって、護に救われて、そして、今がある。皆にわざわざ確認したわけではないが、葵もそうだろう。薫だって、心愛だって。他の皆もそう。
だから、青春部が居場所になり得る。互いの想いを知っていても、そこに執着心が生まれる。
悠樹はそう思う。
「お待たせしました~。ミックスジュースお二つどうぞ~」
護と葵が注文した品が届く。
「一緒のに、したの?」
「葵がそうしたいって言うから」
「……そう」
「作る側からすれば、その方が楽ですしね」
「言われてみればそうだな」
(建前……?)
「私達はこのクラスの代表でもありますし、他の人が楽しめればそれで十分です」
「葵は真面目だな。休憩中なんだから、ゆっくりしたらいいと思うけど」
「自分がフリーな時はそうします。護君も、その時は」
「はいはい」
文化祭の楽しさ、とはなんだろうか。
二人の話を聞きながら、悠樹は考えを巡らせる。
個人的には、心の許した数人とその空間を共有することだと思う。大人数でガチャガチャワイワイするのが嫌いだから。
でも、大多数はそうではない。一つの目標に向かって、皆で協力し、そこに楽しさを見出す。そういう気持ちも分かる。
協調性がないといえばそうなる。心を開けないだけではあるが。
「悠樹はこの後どうするんですか?」
「特には。部室に戻るつもり」
「え? 部室に……?」
「うん。麻依ちゃんから連絡くるまでやることないから」
一人で行きたいところがあるらしい。
「それならよかった……」
「なんで……?」
「いやいや、せっかくこういう時なのに、って思ったから」
「…………ん」
自分だけでどこかに行こうという気はない。
たまには自分らしくないことをと思ってここに来てはいるが、それは勿論、護がいるから。護達のクラスだから。そうでなければここに来ていない。
「面白いところがあったら教えてくださいな」
「ん、分かった」